2月25日にスイスで初の新型コロナウイルス感染者が報告されてから1カ月。新型コロナウイルス対策の最前線にいない者にとって、感染者数の増え方を把握するのも骨が折れる状況だ。
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感染の広がり具合を知るのに、感染者数の把握は欠かせない。だが世界では検査も報告も手法がばらばらで、死者数でさえ正確な数字を追うのは困難だ。
以下、2020年3月26日時点で入手可能な信頼できる地域・国・国際データを整理した。
ベルンの研究者ダニエル・プロブスト氏が州公表データを集計外部リンクしたところ、3月26日までにスイスで確認された陽性反応は1万1千件を超えた。最も感染者数が多いのはヴォー州で、2千人を超える。最も少ないのは人口1万6105人のアッペンツェル・インナーローデン準州で、10人未満だ。
一方、人口10万人当たりの感染者数はイタリアと国境を接するティチーノ州が最も多く、ジュネーブ州とヴォー州が続く。
ただし、プロブスト氏の集計データは連邦保健庁が毎日公表する各州集計値よりわずかに多いことには注意が必要だ。
26日までに160人以上が亡くなった。地域ごとに見るとやはり南部に集中している。ティチーノ州は絶対数も人口比でも最も多い。ヴォー州とジュネーブ州がその次だ。スイス中央部では死者が出ていない州も複数ある。
高齢者、特に男性は感染者が最も多くなっている。死者も高齢者の間で多く、スイス連邦内務省保健庁によるとこれまでの患者の平均年齢は85歳。大半は基礎疾患があった。
一方、イタリアでCOVID-19により亡くなった3200人の平均年齢は78.5歳で、8割が男性だった(3月20日公表値外部リンクより)
上のグラフは24日に発表された世論調査の結果だ。若い人ほど政府はもっと厳しい措置を取るよう求め、上の世代ほどこれまでの措置で十分だと考えていることが分かる。
同じ調査で、地域別にみるとフランス語圏の方が厳しい措置を指示していることも分かった。ドイツ語圏より感染者数が多いことが背景にありそうだ。
上のグラフからは、人口当たりではスイスがイタリアについで感染が増えていることが分かる。だが州の公表値をそのまま使った別のデータでは、スイスが最も多くなっている。
ただこうした国際比較をみるときには注意が必要だ。各国、検査をする方針も陽性の公表方法もばらばらだからだ。検査が多ければ陽性者数は増えるが、それが全体像を正確に示しているとは限らない。
ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、3月25日までに世界の感染者数は延べ40万人になった。2万人近くが死亡。世界人口の約3分の1が現在ロックダウン(都市封鎖)の下で生活している。
人口100万人当たりの死者数でみると、最も深刻なのはイタリアだ。その要因について、メディアでさまざまに分析され、高齢化が進んでいることや医療体制の水準が挙げられている。コロナの感染が欧州の中でも早かったため、イタリアの状況は他の国に1~2週間先行しているとも言われる。
3月24日、アラン・ベルセ内務相はテスト実施件数に関してスイスは世界トップクラスだと述べた。複数の州が検査体制を急拡大させた結果だ。車に乗ったまま検査を行ういわゆる「ドライブスルー方式」を導入した州もある。
だが州ごとの違いや病院ごとのデータを集めるのは難しく、正確な状況把握はやはり容易ではない。スイスの検査体制はノルウェーに次ぐ水準とする調査もある。上のグラフはケンブリッジ大学が3月20日時点で集計したデータに基づいている。
10人の死者が出てから後の伸び方は、スイスはイタリアと似た惨劇を辿り、3~4日ごとに倍増している。ただここ最近は多少緩和の兆しもみられる。当局は3月16日に発令した「ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)」ルールが効果を発揮すると期待している。
多くの国が混乱するなか、他にもパンデミック(世界的大流行)の影響はさまざまなグラフや地図に表れている。株価は暴落し、インターネット利用者は急増し、上のグラフが示すように空の交通量は激減している。チューリヒ空港の利用率は2カ月前の1割に落ち込んでいる。
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(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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