スイス各地で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が増加している。国内では大規模イベントが相次いで中止され、政府はさらなる感染防止対策を国民に呼び掛けている。
このコンテンツが公開されたのは、
※この記事は3月3日時点のものです。今後、この記事は更新されません。最新情報はこちらへ
スイス国内の現在の感染者は40人を超えた。2月25日に最初の感染者が確認されてから、感染ルートはいずれも国外だったが、スイス連邦政府は2日、初の国内感染が確認されたと発表した。
連邦内務省保健局は29日、感染拡大が進む隣国イタリアとの国境は現時点では閉鎖しないと述べた。学校も通常通り開校する。
保健局は2日、あいさつの際の握手を避け、使用したティッシュは密閉型のごみ箱に捨てるよう国民に呼びかけた。同局はすでに、飛沫が飛び散らないくしゃみ・せきの仕方、手洗いの敢行などを呼び掛けている。
世界保健機関(WHO)は28日、新型コロナウイルスの感染拡大リスクに関し、世界全体の評価を「非常に高い」に引き上げた。スイス連邦政府は同日、1千人以上の大規模イベントを中止する措置を発表した。
さらに厳しい対応を取る州も出ており、ベルン州は過去2週間で感染が確認された地域の参加者がいないと証明できなければ1000人未満のイベントも開催しない方針を決めた。クール州は一部例外付きで、50人以上のイベントを禁止する。
フランス語圏のスイス公共放送(RTS)は、ジュネーブ空港に到着した感染リスクの高い地域からの入国者を検疫する方針について、関係機関が協議していると報じた。
イベントの変更・中止
大規模イベントが相次いで中止になっている。例年60万人が訪れるジュネーブモーターショーは5~15日に予定されていたが、開催を見送った。
2日開催する連邦議会の春期議会も特別措置を講じた。連邦議事堂は一般来場者の立ち入りを禁止し、記者の出入りも制限する。今月予定されていた世界反ドーピング機関(WADA)の年次会合もキャンセルされた。
ジュネーブにある国連人権理事会のエリザベス・ティヒー・フィスルベルガー議長は2日、会期中に予定されている3日以降の関連イベントはすべて中止すると発表した。1千人に影響が出るとみられる。700人が出席する人権理事会は20日まで行われる。国連欧州本部の一般向け見学ツアーはすべてキャンセルされた。
スポーツイベントにも影響が出ている。スイスのサッカーリーグは23日まで試合を開催しない方針を決めた。無観客試合を行う案も出たが、クラブ側がこれを拒否した。
国内では現時点で1850人超が新型コロナウイルスの検査を受けた。
1日、ベルン州の技術系専門学校の2クラスが国内で初めて、2週間の隔離措置を受けた。このうち21歳の学生に陽性反応が出た。
ヨハンナ・シュピリ原作の物語「ハイジ」にも登場する、スイス東部の温泉保養地バートラガーツの高級ホテルでは、従業員5人が自宅待機措置を受けた。5人と接触した宿泊客にその後感染が認められたためという。
スイスインターナショナルエアラインズ外部リンクは中国、イラン、イタリアなどへのフライトを運休、またはサービスを一部制限している。
イタリア 2036人(52人死亡)
フランス 191人(3人死亡)
ドイツ 165人
オーストリア 18人
経済への影響
スイス連邦経済省経済管轄局(SECO)のエリック・シャイデッガー外部リンク氏は、大規模イベント中止でビジネスや関連業界への影響は避けられないとし、スイスの経済成長見通しの下方修正が必要になるかもしれないと述べた。SECOはこうした事態への対策マニュアル外部リンクを公開している。
ギ―・パルムラン経済省は近く「緊急サミット」を開き、新型ウイルスによる産業・社会サービス事業への影響を協議する。
国内の主な感染状況は以下の通り(2日までの情報)。
ティチーノ州:ティチーノ州では国内1例目の感染者が確認された。この男性(70)は28日、3日間の入院ののち、ルガーノの病院を退院した。
ジュネーブ州:スイスの通信社Keystone-SDAによると、28日夕までで、計5人の感染が確認された。全員がイタリアに渡航歴があり、医者に症状を訴えた。
感染が確認されたのは、ジュネーブの国際機関で働くイタリア人の男性(55、フランス在住)やIT業界で働く男性(28)ら。
チューリヒ州:28日、州内で2人目の感染者を確認。45歳の男性で、直近にイタリア・ミラノを訪れていた。27日に陽性判定を受けた女性(30)も1週間前にミラノを訪れていたが、2人の間に直接の関連はない。男性と接触した人たちも隔離措置を受けている。
バーゼル・シュタット準州:保育園の女性保育士が検査で陽性反応。女性と接触のあった園児全員が14日間の隔離措置を受けている。園児の具体的な人数は確認されていない。
この女性のパートナーでバーゼル・ラント準州に住む男性(23)も陽性反応が出た。
アールガウ州:27日午後、男性(26)の感染が確認され、州立病院で隔離されている。男性は1週間ほど前にイタリアのヴェローナに出張・滞在していた。州によると男性と接触した人たちも隔離されている。男性の状態は良好。
1日、シュプライテンバッハの幼稚園教諭(31)の感染を確認。イタリア北部から訪問者が来た後に陽性反応が出た。児童44人と教諭8人、さらに教諭と接触した70人が隔離措置を受けるという。
グラウビュンデン州:27日、2人が陽性反応。いずれもイタリア人の子供で、休暇でグラウビュンデン州に来ていた。州によると、症状が出て入院しているが状態は良好。
29日、さらに4人の感染者が出た。いずれもこのイタリア人家族と関係があるという。
ベルン州:州内初の感染者はビール(ビエンヌ)市の女性(21)。28日夕に陽性が確認され、現在は入院中。経過は良好という。女性は直近でミラノを訪れていた。
ヴァレー(ヴァリス)州:29日、州内で初めて30代男性がシオンの病院で隔離措置を受けた。男性の家族4人も自宅で隔離されているが、経過は良好という。
フリブール州:州は1日、初の感染者が出たと発表。30代の男性で、イタリア北部ロンバルディア州を訪れた際に感染した可能性が高いという。男性と接触した9人が自宅で隔離措置を受けている。
新型コロナウイルスの最新情報は、こちらの特集ページ、Facebook外部リンク、Twitter外部リンクで情報発信しています。
おすすめの記事
スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。
もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
おすすめの記事
スイスを縦断するツルが過去最多
このコンテンツが公開されたのは、
スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。
もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
おすすめの記事
「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。
もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
おすすめの記事
スイス、外来診療の新料金体系で合意 定額制を一部導入
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの医療機関団体は22日、外来患者向けの新料金体系を承認したと発表した。エリザベット・ボーム・シュナイダー内務相は積年の議論に決着がついたことを歓迎した。
もっと読む スイス、外来診療の新料金体系で合意 定額制を一部導入
おすすめの記事
スイス製武器の再輸出解禁案まとまる 主要政党の賛否まとまらず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国民議会(下院)安全保障委員会は、スイス製武器の再輸出の解禁案をまとめた。武器の輸出から5年経過を条件に、ウクライナなど紛争中の第三国への再輸出を認める内容だ。ただ主要政党の間では賛否が割れている。
もっと読む スイス製武器の再輸出解禁案まとまる 主要政党の賛否まとまらず
おすすめの記事
スイスで「ニュース離れ」さらに深刻に メディア品質年鑑
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ大学公共・社会研究センターが毎年まとめる「スイスメディア品質年鑑」2024年度版で、スイスでニュースを平均以下の量しか消費しない人の割合は46%と、過去最高を更新したことがわかった。スイスメディア全体の質は引き続き「良好」と評価された。
もっと読む スイスで「ニュース離れ」さらに深刻に メディア品質年鑑
おすすめの記事
アイスホッケーのスイス代表、国旗の白十字使用認められず
このコンテンツが公開されたのは、
アイスホッケーのスイス代表チームは、ユニフォームにスイスの国旗である白十字の紋章を付けることができなくなった。スイスアイスホッケー連盟(SIHF)が連邦行政裁判所に提出した申請が遅すぎたのが原因だ。
もっと読む アイスホッケーのスイス代表、国旗の白十字使用認められず
おすすめの記事
スイス、ロシアに追加制裁 輸出規制を強化
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は16日、ウクライナに侵攻するロシアへの追加制裁を発表した。ロシアの産業・軍事・技術に必要な製品の輸出規制が強化されるほか、政党、NGO団体、報道機関がロシア政府からの寄付を受け取ることが禁止される。
もっと読む スイス、ロシアに追加制裁 輸出規制を強化
おすすめの記事
チューリヒの一等地にパン屋開業 高級街に転機か
このコンテンツが公開されたのは、
高級ブランドが立ち並ぶチューリヒのバーンホフ通りにパン屋が開業し、大きな話題を呼んでいる。通りを象徴する百貨店の撤退や再開と合わせ、街の大きな転機になるとの指摘もある。
もっと読む チューリヒの一等地にパン屋開業 高級街に転機か
おすすめの記事
世界の年金制度ランキング、スイスは12位 首位はオランダ
このコンテンツが公開されたのは、
コンサルタント会社マーサーが14日公表した世界年金制度ランキング(2024年度)で、オランダが世界一の年金制度の評価を得た。スイスは12位にランクインした。
もっと読む 世界の年金制度ランキング、スイスは12位 首位はオランダ
続きを読む
おすすめの記事
新型コロナウイルス スイスで初の感染確認
このコンテンツが公開されたのは、
連邦内務省保健局は25日、スイス南部ティチーノ州に住む70歳の男性が新型コロナウイルスに感染していることが分かったと発表した。スイスでの感染確認は初めて。
もっと読む 新型コロナウイルス スイスで初の感染確認
おすすめの記事
新型コロナウイルスはパニックになるべき存在なのか
このコンテンツが公開されたのは、
世界保健機関(WHO)が中国・武漢市での新型コロナウイルスの感染拡大で「国際緊急事態」宣言を発した。だが中国との貿易や交通を制限するべきではないと訴えている。果たして本当に大騒ぎする事態なのか?いくつか事実をみてみよう。
もっと読む 新型コロナウイルスはパニックになるべき存在なのか
おすすめの記事
越境労働者を抱えるティチーノ州の新型肺炎リスク
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部のティチーノ州から数キロメートル離れたイタリア北部で、新型コロナウイルスが猛威を振るっている。ティチーノ州で働く人の4人に1人はイタリアから毎日国境を越えてやってくる。一部住民は州政府に対し、国境を封鎖するよう求めている。
もっと読む 越境労働者を抱えるティチーノ州の新型肺炎リスク
おすすめの記事
スイス国境の伊北部で4人目の死者 新型コロナ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスと国境を接するイタリア北西部ロンバルディア州で24日、新型コロナウイルスによる国内4人目の死者が確認された。同州は国内で最も感染者が多く、スイスへの越境労働者も多い。このためスイス国内では不安が広がっている。
もっと読む スイス国境の伊北部で4人目の死者 新型コロナ
おすすめの記事
伊で新型コロナ7人死亡 スイス政府が検査体制強化へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスと国境を接するイタリア北部で新型コロナウイルスの感染が拡大している。同国内での死者は24日時点で7人に増えた。スイス連邦政府は同日、スイス南部の検問所での情報掲示や検査体制の強化など、感染防止に向けた追加措置を発表した。
もっと読む 伊で新型コロナ7人死亡 スイス政府が検査体制強化へ
おすすめの記事
在中国スイス人、スイス政府の新型肺炎対応に抗議
このコンテンツが公開されたのは、
中国に住むスイス人約50人が連名でスイス政府に書簡を送り、新型コロナウイルスの対応で置き去りにされていると訴えた。
もっと読む 在中国スイス人、スイス政府の新型肺炎対応に抗議
おすすめの記事
ダイヤモンド・プリンセス スイス人乗客も下船へ
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で、ウイルス感染が確認されなかった乗客が下船している。スイス人乗客2人も下船が認められた。
もっと読む ダイヤモンド・プリンセス スイス人乗客も下船へ
おすすめの記事
アート・バーゼル香港が中止 新型コロナウイルスで
このコンテンツが公開されたのは、
今年3月に香港で開催を予定していたアートフェア「アート・バーゼル香港」が、新型コロナウイルスの影響で中止が決まった。
もっと読む アート・バーゼル香港が中止 新型コロナウイルスで
おすすめの記事
スウォッチが時計見本市を中止 新型コロナウイルス感染拡大で
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスの感染拡大がスイスの実体経済にも影響を及ぼし始めた。スウォッチが今月末予定していた時計の見本市の中止を決めるなど、イベントの中止や生産活動の縮小が相次ぐ。
もっと読む スウォッチが時計見本市を中止 新型コロナウイルス感染拡大で
おすすめの記事
ジュネーブ国際発明展が半年延期 新型コロナで
このコンテンツが公開されたのは、
3月末に開催予定だった世界最大の発明品の国際見本市「ジュネーブ国際発明展」の主催者は17日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、開催を6カ月延期すると発表した。
もっと読む ジュネーブ国際発明展が半年延期 新型コロナで
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。