EUがスイスの証券取引所のEU株式市場への参加を1年後に終了させる方針を決めた。二国間協定の交渉過程で飛び出た突然の強攻策を、スイスのメディアはイギリスのEU離脱(ブレグジット)をにらんで放ったけん制球と分析する。
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スイスのドリス・ロイトハルト大統領は21日開いた緊急の記者会見外部リンクで、「スイスの株式市場は他の非EU加盟国と同じように、EU市場へのアクセスを認められるべき条件を整えている。EUがこれを制限するのは、スイスに対する差別だ」と憤った。同日午前の閣僚会議では、EUはスイスの経済地位を弱める意図があるとの認識で一致。来年1月末までに対策を練るよう財務省に指示したと説明した。ただ記者の質疑応答には応じずに会場を去った。
欧州委員会は20日夕、スイスの証券取引所のEU市場へのアクセス権を18年末をもって停止すると決めた。28の加盟国のうち27カ国が賛成。唯一反対したのは、EU離脱後の外交関係について交渉中のイギリスだ。
「スイスが今日EUから引き出そうとしている条件は、明日イギリスが狙っているものだ。これが欧州委の判断に強く影響を与えた」。フランス語圏の日刊紙ル・タンはこう解説する。ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーも「EUとイギリスの離脱交渉では、金融市場が重要な意味を持つとみられる。EUはイギリスより前にスイスとの交渉で妥協するわけにはいかなかった」と分析した。
欧州委はスイスとの二国間交渉が煮詰まっていることを今回の決断の口実とした。だが日刊紙NZZは「表面上はEUはブレグジット交渉と対スイス外交を切り分けているが、実際はどの二国間交渉においても対英関係を常に頭に置いている」とEUの言い分を切り捨てた。
地域紙ジュネーブ・トリビューンは、EUがスイスの証券取引所だけを別扱いとし、オーストラリアや香港、米国などとの取引は今後も続けることについて疑問をぶつけた。ブレグジットは、EUに加盟せずに恩恵を受けようとする「第三の道」を探る国に対するEUの姿勢をややこしくさせていると書いた。
(英語からの翻訳&編集・ムートゥ朋子)
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