1990年、スイスは初めて国連平和維持活動(PKO)に軍事監視員を派遣した。ただそれが自国の中立に相反するのではないかという議論も国内で起こった。歴史を振り返ってみよう。
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1990年、スイスは初めて国連平和維持活動に貢献した。 30年後の現在、約27人のスイス軍の軍事監視員と支援スタッフが中東(13人)、コンゴ民主共和国(2人)、南スーダン(1人)、マリ(6人)、カシミール( 3人)西サハラ(2人)でのミッションに参加している。
これらの国連ミッションに、スイス軍の兵士は非武装で参加している。非武装のPKO隊員を意味する通称「ブルーベレー(青いベレー帽)」と複数の部隊間の連絡・調整役を担うリエゾン・オフィサーの任務には、停戦協定の監視、紛争当事者の仲介役としての活動も含まれる。また軍事専門家として司令本部にも配置される。
国際レベルでの平和促進活動は、スイス軍が定めた3つの優先課題の1つで、軍事法にも盛り込まれている。ただし、武装兵を意味する通称「ブルーヘルメット」の派遣は禁止されている。
国連軍事監視員のマーク・スティブロ氏は約20年間、PKOの活動に参加し、巡回、監視、討論、報告を行っている。 6月末には、カシミール地方に1年間派遣される予定だ。
1953年以降、スイス軍の兵士は北朝鮮と韓国の国境に駐留している。これは国連平和維持活動の枠組みではない。
スイスは1980年代まで国連のミッションを財政的に支援していた(国連加盟は2002年)。1988年、連邦政府は国連平和維持活動への人員派遣も認めた。
翌年、政府は平和維持活動支援のため国連軍事監視員の派遣を決定。1990年に最初の派遣が行われ、兵士たちは国連で最も古いミッションである中東の休戦監視機構(UNTSO)での任務に就いた。
国際紛争はますます複雑性を深め、国連のミッションもそれに合わせて展開された。スイスはのちにリエゾン・オフィサー(連絡将校)と参謀将校の派遣も開始し、2007年に初めてブルンジに人員を送った。
スイス軍の将校らはそれ以降、進行中の任務6件を含む計19件の国連平和維持活動に参加してきた(下記の図を参照)。
2004年以来、スイス中部にある海外派遣部隊の養成所SWISSINT外部リンクは、軍の国際平和推進ミッションの中核を成す。SWISSINTにはトレーニングセンターがあり、将来の軍事監視員、リエゾン・オフィサーを目指す人達が5週間の訓練を受ける。
スイス軍のPKO部隊派遣は、いずれもそれに伴う国連の命令に基づく。また国連のミッションは紛争当事者間の合意があって初めて成立する。スイス側では、参加者は任意で募る。
国連平和維持活動でスイス軍の兵士が武装すべきかにという点では、意見が分かれる。1994年、国連と欧州安全保障協力機構(OSCE)のミッションで武装部隊の参加を可能にする通称「ブルーヘルメット法」の国民投票が行われたが、反対多数で否決された。
現在、スイス軍の兵士は非武装の「ブルーベレー」部隊として任務にあたる。武装兵のブルーヘルメット部隊に、スイス人はいない。
北大西洋条約機構(NATO)の任務に関しては、2001年の改正軍事法(第66条)により、武装部隊の派遣には議会の承認が必要になった。戦闘・平和執行任務への参加は禁止され、武器の携帯は自衛目的に限られる。
民兵
スイス軍は民兵主義の原則に従って組織されている。SWISSINTの広報責任者ミクロ・バウマン氏は、軍事知識を持つ民間人という存在は国連平和維持活動では利点といい、「特に地元住民と接触する際に」効果を発揮すると話す。
しかし、民兵制度の欠点は、スイス軍に女性将校がほとんどいないことだという。スイスでは、女性には兵役義務がない。しかし、平和維持活動においては、女性の存在が少なくとも男性と同じくらい重要だという。特に世界の多くの地域では「女性は同性としか言葉を交わさない」からだ。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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