世界貿易機関(WTO・本部ジュネーブ)の新事務局長に15日、ナイジェリアの元財務相ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏が選出される予定だ。約半年間の後継者不在がようやく解消する。アフリカ出身で女性の事務局長は史上初。背負う任務は容易ではない。
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前任のブラジル出身・ロベルト・アゼベド氏は昨年5月、任期満了前に退任を発表。8月初めに正式に退いた。後継者選びにこれだけ時間がかかったのは、WTOが加盟国間のコンセンサスを取り付けるのに難航し、米トランプ前大統領政権の強硬な態度も影響した。8人いた候補者は2人に絞られたが、トランプ政権は韓国産業通商資源省の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長の支持に回った。だが、兪明希氏はその後立候補を辞退。バイデン新政権がンゴジ氏の支持を表明し、ようやく道筋が定まった。
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WTO次期事務局長は誰に?グローバルな課題へのスイスの視点
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WTOに勤務経験のある貿易の専門家ピーター・ウンパーゴン氏は、新しいリーダーが決まったことに安堵したといい、初の女性・アフリカ出身者であることも興味深いと語った。その一方で、WTO内の決定は加盟国が行うものであり、事務局長が下すものではないことを忘れてはならない、とした。事務局長の役割は主に組織内の信頼回復、外向けには忘れられがちな優れた仕事をPRすること、そして加盟国間の「準備が整った段階で」仲介役を務めることだ。
ンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏はどんな人物?
このため、新事務局長は強力な外交スキル、個人スキルが求められる。ンゴジ氏にはそれが備わっているのだろうか?
同氏は国際開発の専門家で、現在66歳。ナイジェリアと米国の市民権を持つ。ハーバード大経済学部を卒業した後、米国で長年働き、2019年に米国の市民権を取得した。母国ナイジェリアでは財務相・外務相を歴任。世界銀行の専務理事も務めた。現在は、開発途上国のワクチン接種を推進する国際団体「GAVIワクチンアライアンス」の理事長を務める。同団体は、新型コロナウイルス感染症ワクチンへの公平な分配を目指す「COVAX資金プール」を共同で主導している。
WTOのウェブサイトに掲載された同氏の略歴には「改革者」「腐敗防止運動家」「熟練の交渉人」などの言葉が並ぶ。 「合意形成に優れ、正直な仲介人でもある。政府や他の利害関係者の信頼と自信を享受している」ともつづられている。
女性、アフリカ出身であることは、同氏の強みとなるのか?ウンパーゴン氏は「わからない」と話す。「アフリカ人であることが役立つ場合もあれば、そうでない場合もある。彼女のかじ取り次第だ」
WTOの試練
トランプ政権によってWTOの紛争解決メカニズムが阻まれ、さらには米国と中国の間の貿易摩擦や改革を求める声など、WTOは多くの課題に直面している。組織のルールは古く、更新の必要がある。
バイデン政権がンゴジ氏を支持したことは、火種が残るほかの問題にも、より穏健なスタンスを取るサインだと考えていいのだろうか。ウンパーゴン氏は「そう判断するにはまだ早い」と話す。 「彼女の立候補支持は賢明な外交判断だ。米国が多国間主義に戻ってきたことを示している。しかし、彼女はWTO貿易システムにおける米国の権利と義務、あるいは紛争解決、中国との問題、交渉に関する懸念に影響を与えることはできない。それを解決できるのは加盟国間だけだ」
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