スイス経済相の訪日、日・スイス経済連携協定を再確認 女川町も訪問
日本を訪れていたシュナイダー・アマン経済相は11日、全日程を終了し日本を後にした。訪日中、林芳正農林水産相や甘利明経済再生相などと会談。09年に締結された日本・スイス経済連携協定(EPA)の進展を確認した。この訪問は日本・スイス国交樹立150周年の一環。最終日には、3・11で崩壊しスイスからの募金で再建された宮城県の女川地域医療センターを視察した。
アマン氏は訪日第1日目の8日、林農林水産相と会談。EPAには今後も協議を続けるべき改善点がいくつかあるが、「全体としてうまくいっている。大きな進展があった」と満足の意を示した。さらにスイス通信に対し「たとえばグラウビュンデン州名産の干し肉の日本への輸出に関し、スイスにとって良い結果を生む話し合いが行われた」と話した。
日本の経済改革
アマン氏は、中曽宏日銀副総裁とも8日に会談した。中曽氏はアマン氏に対し「デフレに対する戦い」を日銀は続けていると説明。また両氏はグローバル化した世界経済についても話し合った。
9日は、甘利経済再生相が着手する日本の経済改革について説明を受けた。甘利氏は、外国からの投資や企業誘致を推進する上での租税対策を特に挙げた。
さらに、2012年に日本の全人口の63%を占める労働人口は60年には52%になると推測される中、女性の雇用拡大を一つの政策に掲げていると話した。
外国企業の国内誘致で協力
同じく9日にアマン氏は赤羽一嘉経済産業副大臣とも会談。両氏は、スイス連邦経済省の所管団体、スイス・グローバルエンタープライズ(S-GE)が日本貿易振興機構(ジェトロ)と企業誘致で協力を行うための議定書に調印した。
こうした両国の協力に関し、日経新聞のインタビューに答えたアマン氏は「S-GEとジェトロが互いに連携して情報を持ち寄ることを期待する。その影響で互いの国の企業の事業活動も促進されるだろう。これから日本とスイスのあいだで合弁で事業をする企業が生まれることを確信している」と話している。
また、企業誘致でスイスの法人税の低さがもたらす効果を問われ、税率の低さは魅力のひとつでしかなく、安定した政治システム、教育、イノベーションを生み出す研究開発の仕組みや最新のインフラなども重要だと答えている。
さらに、脱原発を決めたスイスの電力政策については「原発を再生可能エネルギーで置き換え、かつ発電効率を上げる必要がある。スイスには水資源が豊富にあるので、原発に取って代わるだけのエネルギーはある」と述べた上で、3つの目標について言及した。「第1にエネルギーは誰もがいつでも使い放題であると保証されていること、第2にキロワット時の電気代は経済協力開発機構(OECD)加盟国のなかで3本の指に入る安さであること、第3に他国からのエネルギーに依存しないことだ」
女川地域医療センターも視察
訪日最終日の10日、アマン氏は東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県の女川町を訪れた。視察した女川地域医療センターは、スイスから集められた総額2200万フラン(約22億円)の募金で再建された。
同地域の復興と勇気に感動したアマン氏は、スイス国営放送の11日放映のニュースで「自然は人間よりも強い。しかし、この地域の人々は前を向いて立ち上がり、自然の力を受け入れ共存しようとしている。この復興の在り方は、素晴らしい模範になる」と語った。
訪日の総括に、アマン氏は、EPAを含む多分野での話し合いに一行は非常に満足したと述べ、技術大国である両国が科学・技術分野で一層協力を深めなくてはならないと訴えた。そのため、日本を去る直前に特別に時間を割き、東北大学の「金属材料研究所付属新素材共同研究開発センター」を視察している。
日本・スイス経済連携協定(EPA)
当時の安倍晋三総理大臣とミシュリン・カルミ・レ大統領との間で、2007年1月に交わされた交渉開始の合意により、同年5月に第1回交渉が東京でスタート。
08年9月大筋合意。09年2月に署名、09年9月1日発効。日本にとっては初めて欧州の国と結んだ協定。
物品貿易について、往復貿易額の99%以上を占める物品の関税を10年以内に撤廃し、原産地証明制度については、日本では初の認定輸出業者による自己証明制度を導入した。
サービス貿易、投資、知的財産などの分野でも、高いレベルの成果を発揮し、さらに、自然人の移動ではビジネスを目的に改善が行われた。企業内転勤者及びほかの重要な職務を有する日本人の滞在許可証において、スイスは人数制限を廃止した。
なお日本は、現在までに、スイスを含む13カ国と経済連携協定協定を結んでいる。しかし、欧州内ではスイスが唯一の締結相手国。
(出典 : JETROジュネーブ事務所の資料)
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