スイス議会が新閣僚2人を選出、その舞台裏
スイス連邦議会は7日の閣僚選挙で、右派・国民党のアルベルト・レシュティ氏(ベルン州)と左派・社会民主党のエリザベット・ボーム・シュナイダー氏(ジュラ州)を新閣僚に選出した。ボーム・シュナイダー氏の選出は大方の予想を裏切る結果だった。
両院合同の議会で、ダブル選挙として行われた7日の閣僚選。レシュティ氏がすんなりと当選を決めたことは想定内だったが、2人目の新閣僚は大半のアナリストにとって意表を突かれる結果となった。
社会民主党の新閣僚候補は、ボーム・シュナイダー氏とエヴァ・ヘルツォーク氏の2人が出馬し、本命とされていたのはヘルツォーク氏の方だった。だが選挙は第3ラウンドまでもつれ込む波乱の展開に。ジュラ州出身議員が閣僚に選ばれるのも史上初めてのことだった。
>>アルベルト・レシュティ氏とエリザベット・ボーム・シュナイダー氏の略歴(仏語)
レシュティ氏は第1ラウンドですんなり当選
今年末で閣僚を退任するウエリ・マウラー氏(国民党)、シモネッタ・ソマルーガ氏(社会民主党)へのはなむけの言葉が贈られた後、国民党の閣僚候補者の投票が行われた。レシュティ氏の対抗馬はチューリヒ出身のハンス・ウエリ・フォクト氏。メディアは候補者発表時から、議会とのつながりが強いレシュティ氏が優勢とみていた。
レシュティ氏は有効投票数243票のうち131票を獲得し、1回目の投票で当選を確実にした。フォクト氏は98票だった。
レシュティ氏は当選後の演説で、州や言語の境界を越えて互いに配慮することの重要性を強調した。国民党の前党首でもある同氏は、スイスの民主主義は世界でもユニークな特性を持つと訴え、自分に寄せられた信頼を光栄に思うと語った。
レシュティ氏は「自由、民主主義、平和、守るべき価値観にコミットする」と述べ、「私たちの成果を維持できるような解決策」に力を入れると約束。自身の父、妻、家族全員、そしてキャリアを通じて支えてくれた同僚たちに感謝の意を表した。
左派は波乱の展開に
ソマルーガ氏の後任選びはもつれた。女性候補の2人はともに政界のベテランで似たような政治経験を持ち、それでいて個性の全く異なる人物だったからだ。ヘルツォーク氏は、党内右派を代表するドイツ語圏の出身。左派寄りで、尚且つ唯一のフランス語圏出身のボーム・シュナイダー氏と比べ、ヘルツォーク氏の方が高い支持を得ていた。
だが、閣僚選をめぐって、一部の議員が反旗を翻した。党執行部の候補者選びのやり方に反発したのだ。ソマルーガ氏が辞任を発表した後、社会民主党の共同議長は、政府内のジェンダー平等を尊重するため、候補者は男性ではなく女性に限る、と発表した。この決定は政界の議論を二分した。チューリヒ州の上院議員ダニエル・ヨシッチ氏は公然と反対。代表選への出馬を表明した。
1回目の投票は、一部の国会議員が「差別的」と見なす党戦略に反対した格好となった。ボーム・シュナイダー氏が96票、ヘルツォーク氏が83票だったのに対して、ヨシッチ氏が58票を獲得した。この第1ラウンドの終わりに、社会民主党会派のロジャー・ノルトマン代表が所属議員を集め、公認候補、つまり女性候補者2人のうち1人を選ぶようにと要請した。
2回目の投票では、ボーム・シュナイダー氏が112票を獲得し、ヘルツォーク氏(105票)、ヨシッチ氏(28票)を抑えリード。3回目の投票でボーム・シュナイダー氏が245票の有効投票のうち123票を獲得し、ようやく過半数を確保した。ヘルツォーク氏は116票、ヨシッチ氏は6票だった。
ボーム・シュナイダー氏は、新閣僚の仕事に「情熱的に、たゆまず」取り組み、弱者のために働き続けることを約束した。同氏はまた、自身に示された信頼を光栄に思うと述べ、自治体と国、そして文化の架け橋になれることに喜びを感じ、新閣僚としての仕事を楽しみにしていると付け加えた。また家族、党、共に閣僚選を戦った候補者、そして地元の支援者に感謝していると語った。支援者の中には、連邦議事堂まで応援に駆けつけた人もいた。
連邦議会では、2人の宣誓が行われた。
内閣はこれでフランス語圏、イタリア語圏が多数を占める構成になった。男女比は変わらず、男性4人(アルベルト・レシュティ、アラン・ベルセ、ギー・パルムラン、イグナツィオ・カシス)、女性3人(エリザベット・ボーム・シュナイダー、カリン・ケラー・ズッター、ヴィオラ・アムヘルト)だ。
仏語からの翻訳・宇田薫
JTI基準に準拠
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。