物議をかもすスイスの不動産開発業者が最近、トランプ米大統領が所有する米フロリダ州パームビーチの高級会員制リゾート施設、マールアラーゴの会員になった。
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ウルス・レーダーマン氏は、都市区を開発し高所得者層向けに変身させることで知られる、チューリヒ郊外出身のたたき上げの起業家だ。同氏に対する評価は賛否両論だ。メディアがレーダーマン氏の出世をつぶさに追ってきた一方で、住宅所有者たちは、同氏の成長中の会社に不動産を売るよう圧力をかけられたとして、そのやり方を批判している。そんなレーダーマン夫妻が、「冬のホワイトハウス」とも呼ばれるマールアラーゴ外部リンクの会員となった。
数年前から友人とマールアラーゴを訪れているレーダーマン氏は、近年夫婦ともに米国で過ごす時間が増えたため、昨年、会員になることに決めたと話す。
「ビーチがついていることも私たちにとって大きな魅力だった」。また、同地の他のクラブは会員になるのが難しく、より家族向けだったと付け加えた。
トランプ大統領は就任以来、ほとんどの週末にこの別荘を訪れている。つまり、マールアラーゴの会員は新米大統領に近づくという特権を得ることになる。
しかしレーダーマン氏は、トランプ大統領の存在は入会の決断とは関係ないと話す。「そういう関心はない。私たちはスイス人であって米国人ではない」
国際的な客層
ニューヨーク・タイムズ紙の最近の報道によると、マールアラーゴの有料会員は500人近くで、新会員は昨年以来92人増えたという。トランプ大統領就任後、入会金はそれまでの倍の20万ドル(約2220万円)となった。
スイス在住の著述家で、ツーク州ウンテレゲリにあるテメノス社の清算人レティティア・リットマイスター氏も最近会員になった一人だ。なお、同社はジュネーブの金融ソフトウェア会社テメノス社とは別だ。
「マールアラーゴはとても国際的なクラブだ」と同施設のベルント・レムケ取締役は話す。「パームビーチに家を所有する、さまざまな国出身の会員がたくさんいる」
レムケ氏はまた、新会員には厳しい入会審査が行われること、建設や不動産業を営んでいて複数の不動産やホテルを所有する会員が他にも多数いることを付け加えた。
「驚かない」
公記録によると、レーダーマン夫妻はマールアラーゴの近くに位置する町ランタナに不動産を所有している。
「あそこで(レーダーマン氏が)社交したいと思ったことには驚かない」と、レーダーマン氏の故郷ツォーリコンに長年暮らす住人は話した。
村の肉屋の息子だったレーダーマン氏は、たたき上げの不動産起業家だ。数年前に、ツォーリコン市議への関心を表明し、政治に参入しようとした。その住人によると、その理由は明らかだった。「自分のビジネスを推進したかったのだ」
しかしレーダーマン氏は任に就かなかった。本人いわく、「私は率直すぎる。起業家だからね。政治家になるには如才なく立ち回れないと」ということだった。
ゼーフェルトの王
レーダーマン氏は1979年にコンサルティング会社を設立した。その後、この会社はチューリヒのゼーフェルト地区の不動産開発で成長し、同氏は「ゼーフェルトの王」とあだ名されるようになった。
「レーダーマン氏の会社はこの地区の高級化の象徴であり、原動力だ」と、ゼーフェルトの地域リーダーのウルス・フレイ氏は話す。
フレイ氏の地域組織はレーダーマン氏の会社にかねてより批判的だった。フレイ氏によると、レーダーマン氏が一種の「不動産コレクター」となり、「そのせいで経済的に余裕がなければこの地区に住み続けることができなくなった」と感じている住人も一部いるという。
しかし、地元の経済界では、レーダーマン氏は良い時期に不動産を買い、チューリヒで流行最先端のバーやレストランを擁する地域に変身させた抜け目のない不動産起業家として評価されている。
最近まで、レーダーマン氏の妻アンナ・マリア氏はこの地区の大通りに面したヴィンテージショップを所有していた。
彼の不動産会社の新規株式公開が不成功に終わった1年後、スイスライフ社が彼の所有する60件の物件のうち28件を推定1億5千万フランで買い取った。
不動産の拡大
マールアラーゴの所有者であるトランプ氏もまた、国外に不動産を所有し、賛否の分かれる人物だ。昨年の米大統領選中には、トランプ氏が購入した、一定以上の家賃の値上げが禁じられている建物の住民に、暖房や水道の供給を止めるなどの圧力をかけていたことが報じられた。
レーダーマン氏はすぐに、自分のビジネスはトランプ大統領のビジネスとは大きく異なると指摘した。
レーダーマン氏の会社は、コンドミニアムを中心とした少数の賃貸物件で国外に進出している。ボストンにオフィスがある同氏の会社Ledermann US Real Estate Corporationは、古い家屋に贅沢な設備を入れて改装する業務を行っている。
米国と英国に暮らす子どもたちがいる彼は、これらの国で何かを「建てたい」と考えているという。
レーダーマン氏は、トランプ大統領が時に冬のホワイトハウスから米国政府を運営する手法についてどう考えているのだろうか?
「今は特別な時代だ。私は政治家ではないのでなんとも言えないが、おそらくトランプ大統領は独特な政治家なのだろう」
(英語からの翻訳・西田英恵)
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トランプ米大統領に向けた皮肉混じりのパロディ動画が拡散
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「米国第一主義」を訴えるドナルド・トランプ米大統領に向けて作られた皮肉混じりのパロディ動画が、スイス公共放送(SRF)上で放送され、話題となっている。
オランダのあるテレビ番組の放送をきっかけに、現在欧州諸国では、トランプ米大統領の就任演説をパロディ化した動画が配信され、人気を呼んでいる。スイスではSRFが深夜番組で「米国が一番ならスイスは二番」と唱える動画を放送。動画ではトランプ米大統領が先月20日に行った就任演説の物言いを真似ながら、スイスの特徴を自嘲気味に紹介している。
今では欧州のさまざまな国から投稿された同様の動画を一同に紹介するサイトも存在し、それぞれの国がなぜアメリカに次ぐ第二の国であるべきかを主張。スイス版では、スイスがヨーロッパで最も魅力的な国であることを主張した後、スイスの美徳は女性参政権が1970年代まで承認されなかったことだなどと、皮肉混じりに紹介されている。
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トランプ新米大統領、民主主義に立ちはだかる利益相反問題
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億万長者で不動産王のドナルド・トランプ氏が米国大統領に就任することで、「利益相反」というテーマが新たに浮上した。これはスイスにとっても大きな意味を持つ。
民主主義が機能するには、国家権力の代表者が利益相反に当たる行為をしてはならず、職務を金銭などの個人的利害から切り離すことが重要だ。
また、利益相反が起きていないかどうかを市民がしっかり認識することも大事だ。政府は実際に利益相反に当たる行為だけでなく、(誤って)利益相反に思われるような行為を慎まなければなければならない。不動産王のドナルド・トランプ氏が米国大統領に選ばれたことで、このテーマの意義は大いに増した。
スイスにも利益相反というテーマは存在する。スイス航空のグラウンディング(飛行停止)では、責任のなすりつけや、いわゆる「縁故主義」が顕著だった。また、クリストフ・ブロッハー氏は入閣時に子どもたちに会社を贈与。この件を巡り議論が勃発した。さらに、モリッツ・ロイエンベルガー氏は連邦閣僚を辞職後、スイスの建設大手インプレメニアの役員に就任。この件で同氏は批判にさらされた。このように、スイスでも市民とメディアは利益相反というテーマに激しく、また頻繁に議論を戦わせている。
トランプ政権ではもちろん、このテーマの重要性がぐっと増す。トランプ氏は米国大統領に就任する初めての大富豪であり企業家だ。同氏に比べれば、元イタリア首相のベルルスコーニ氏が抱えていた利益相反問題はあまり大したことではない。トランプ帝国に所属する企業は515社もある。その事業は様々で、個人向けおよび商業向けの不動産、ホテル、雑誌、ワイン、アパレル用品、ステーキ、ゴルフ場関連などの事業を約24カ国で展開している。
新内閣の資産は米国民の3分の1の資産に相当
トランプ新内閣には大富豪や企業家が多く、彼らの総資産は米国民の3分の1の資産に相当する。そのため、今後、利益相反問題が出てくることは必至だろう。
すべての閣僚および連邦議会議員には、利益相反に関して特に厳しいルールが設けられている(大統領と副大統領を除く)。彼らはすべての所有資産を売却し、第三者の管財人に引き渡さなければならない(いわゆるブラインド・トラストまたは白紙委任信託)。
また、贈呈品の受け取りも禁じられている。そのため、チューリヒを訪れたある米上院議員は、食堂での食事25フラン(約2800円)は自分で払ったと主張した。ある米閣僚はスイスのアーミーナイフを贈呈されたが、私に送り返してきた。
このような厳しいルールがあっても、少なくとも利益相反に思われてしまう行為を防ぐことはできない。米石油大手エクソンモービル前会長のレックス・ティラーソン国務長官が石油企業に恩恵をもたらす取り決めをロシアと交わしたら、市民とメディアはどう反応するだろうか?または大手ファストフード企業の元CEOアンドリュー・パズダー労働長官が最低賃金の引き上げを阻止しようとしたら?
事業は家族の手に
トランプ大統領、マイク・ペンス副大統領とその顧問にはこの厳しいルールは適用されない。トランプ氏は1月11日に行った記者会見で、弁護士に支えられながら、哀れみを感じさせる演出で、利益相反を回避するためには何でもすると語った。だが同氏の息子たちが中核企業の経営をまかない、同氏が大統領退任後にまた企業と資産を引き継ぐことができる限り、利益相反問題はくすぶり続ける。
もし不動産業者に有利な税制が敷かれたり、ゴルフ場建設計画がトランプ氏の会社に有利になるように働けば、利益相反ましてや汚職への批判が出てくるだろう。また、顧問の活動も議論の対象になる。例えばトランプ氏の義理の息子、ジャレッド・クシュナー氏は中国の銀行と巨大取引を交わした翌日の1月10日、ホワイトハウスの上級顧問に任命された。実際に利益相反が生じているかは分からないが、メディアと市民は今後、この問題について厳しく目を光らせることになるだろう。
スイスはそこから何を学べるだろうか?まず言えるのは、このテーマが話題から消えることはなく、大西洋を越えてスイスのメディアや政治議論に影響を与えるということだ。次に、すべての政治家が扇動的に追い回されることがないよう、有益で実践的なアプローチについて我々は積極的に議論を交わしたほうがよい。
さらに、我々は「スイス流の仕上げ」、つまりすべてにおいてより正確に、より完璧に、より労力をかけるというスイスの美徳を、利益相反問題に適用してはならない。この問題に「完璧な」解決策はない。ある程度適切な解決策があるだけだ。
本記事で表明された見解は筆者のものであり、必ずしもスイスインフォの見解を反映するものではありません。スイス米国関係は経済重視
米国はスイスにとって経済的に重要な国の一つ。
輸出市場に関して言えば、米国はスイスの物品およびサービスの輸出先で第2位。米国の輸出市場の成長率は世界トップ(2011年から約50%の伸び率)。スイスから米国への輸出額はフランスとイタリアへの総計輸出額よりも大きい。
スイスで投資を行う国の中で、米国の投資額はトップ。こうした投資は、スイスが高度な専門知識やイノベーション力を維持するのに役立っている。
米国で投資を行う国の中で、スイスの投資額は第6位。人材、市場、イノベーション力におけるグローバル競争の中で、こうした投資はスイス企業にとって大変重要となっている。
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