スイス連邦政府が今週決めた新型コロナウイルス対策の追加措置に対し、国内外のメディアからは「リスクが高い」など厳しめの評価が目立った。
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保健行政を管轄するアラン・ベルセ内務相は28日に発表した追加措置を「抜本的な対策」と銘打った。だがドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガー外部リンクは、各州政府や近隣諸国が決めた措置に比べると抜本的ではないと位置づけた。
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ドイツはスイスよりも感染率が低いが、11月いっぱいは全てのレストラン、バー、劇場を閉鎖する。スイス南部のヴァレー(ヴァリス)州はほとんどの娯楽・スポーツ施設を閉鎖した。(編注:30日にはジュラ州が全ての飲食店や文化・娯楽・スポーツ施設の閉鎖を決定)
フランスも全国的なロックダウン(都市封鎖)を決めており、それらに比べるとスイス連邦政府は「リスクの高い」戦略を取ったと同紙は指摘。背景には経済減退への懸念とスイスの連邦構造の複雑さがあると分析した。
同紙は再び「緊急事態」を宣言し、連邦政府が責任を負うべきだと主張。「緊急」の解決策として再度のロックダウンを含むよく練られた計画で「危機の冬」を乗り越えるべきだと論じた。
ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)外部リンクもまた、スイスの例外主義に触れた。「欧州の中でほぼ最多の感染者を記録しながら、スイス政府の取った措置は他の国に比べて明らかに緩いままだ」
だがその理由については詳しく説明せず、今回の措置がスイスにとって近隣国のようなロックダウンを回避する「最後のチャンス」だと位置づけるにとどめた。成功させるには国民一人ひとりの「自己責任」が問われると結論付けた。
「指示」ではなく「呼びかけ」
ドイツ語圏の日刊紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥングは、今回の追加措置は「人々の行動を規律する明確な指示としてよりも、人々の目を覚ますための呼びかけとして理解されるべきだ」と論じた。
結婚式やヨーデルイベントなどでクラスターが発生した例を挙げ、この数週間は基本的な衛生や社会的距離のルールがきちんと守られてこなかったことを強く批判。今必要なのは「個人的責任」、「自己規律」、「自己抑制」であり、連邦政府からの指示をぼんやりと待つのは無駄だとした。「彫刻された」対策の時期は終わり、「とにかくやるだけだ」と締めくくった。
だが「自己責任」が成り立つかどうかは、仏紙ル・モンド外部リンクに疑問視されていた。スイス人は「他の国よりも市民志向や規律が強いわけではない」とし、スイス政府はそうした考えに長く依拠しすぎていると指摘した。
春のコロナ第1波への対応では欧州で最も成功した国だったスイスが、今や「劣等生」の一つに変容した理由について、同紙もまた連邦制を挙げた。
「これまで、連邦主義の下に自ら対策を講じたのは各州政府であり、それは広範な混乱をもたらした」と同紙は書いた。「今聞かれるのは、通常よりも遅くない行動を求める声だ」。
スイス・フランス語圏の日刊紙ル・タン外部リンクは、今回の措置は「ロックダウン前の最後の猶予」となる可能性があると書いた。春には人々の移動が大きく減ったのに比べ、「近隣諸国より緩い」措置を受けてスイス人が引き続き動き回るのではと懸念を示した。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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