社会福祉分野で雇用創出も、人材不足が課題に
スイスの高齢化に伴い、社会福祉分野で雇用の大幅な増大が見込まれると、2016年末に国が行った調査結果で明らかになった。一方で、適切な人材の確保は難しいとされている。
連邦内務省社会保険局(BSV)は2016年12月、社会福祉分野における雇用と生産性に関する調査を実施。スイスの高齢化に伴い、30年までに福祉関連で13万4千人分のフルタイムの雇用創出が見込まれると報告書で発表した(※雇用創出数は連邦政府による公式データではない)。
日曜紙ゾンタークス・ツァイトゥングが伝えたところによれば、同報告書は「今日、社会福祉分野で人材の需要が高まっており、これまで以上に雇用を生み出している」と指摘。また「同分野における雇用は今後15年以上に渡り、成長し続けるだろう」としている。
今回の報告書の作成に関わり、ルツェルン大学で社会政治学の教鞭をとるドナート・クネヒト氏は「高齢化は確かに重要な側面だが、(女性の社会進出などによる)社会および経済の構造変化も重要なポイントだ」と話す。
「定年退職者や介護を要する人の数は常に増加している。一方で、経済構造の変化によって労働市場がますます独占的になっているため、これまでと同じように就職することが難しくなってきている」(クネヒト氏)
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雇用の創出が見込まれる一方で、どのように適切な人材を確保するかは未解決のままだ。特にスイスでは14年2月に行われた国民投票で、外国人労働者数の制限を求めた「大量移民反対イニシアチブ」が可決されたことからも、人材確保は今後さらに困難になると考えられている。
各州・自治体の担当当局によれば、今日スイスの社会福祉分野で働く外国人の割合は12%で、スイス全体の平均25%より下回るという。そのため、医療分野などに比べれば、社会福祉分野が人材確保において同イニシアチブの影響を受ける度合いは低いとされる。それでもなお、適切な人材の確保は依然として大きな課題となっている。
(英語からの翻訳・大野瑠衣子)
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