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公共メディアと若者-ソーシャル世代から支持されるには?

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ソファに寝転んでリモコン片手にテレビを見るのは今やもう昔の話? Keystone / Ayse Yavas

昨年の国民投票で、スイスの有権者が公共放送受信料廃止のイニシアチブ(国民発議)にノーを突き付けてから1年。自身に好意的な結果が出てもなお、スイスの公共放送局は若い視聴者の確保に苦慮している。

居心地が良くて暖かく、そして何も考えない。今日もまたソファに寝そべり、テレビや(PCやタブレットの)スクリーンで最新のNetflixのシリーズものをチェックする。(リモコンを押すために)指を動かす必要すらない。そしてスマートフォンをチェックする。 午後7時半だ。ここではないどこか、そう宇宙の別の端っこで、ニュースが始まる―ドイツ語圏のスイス公共放送SRFの報道番組「Tagesschau外部リンク」だ。

ここであなたはチャンネルを変えてしまうだろうか?

スイスの有権者が昨年、公的資金で運営される国のメディアシステムを廃止しないと決めてから1年が経った。かといって問題が解決したわけではない。技術、メディア、習慣、コンテンツはジャーナリストたちが追いつけないほどの速度でシフトし続け、その答えはまだはっきりしていない。

一方、地域紙ベルナーツァイトゥング外部リンクが(ドイツ語で)21日に報じたところによると、一部は今まで通りのようだ。スイスのオンラインストリーミングサービス「Zattoo外部リンク」で最も視聴された番組は、米人気コメディシリーズ「ビッグバン★セオリー」を抜いていまだに「Tagesshcauニュース速報」がトップ。Zattooは国内全体のストリーミング活動の53%を占める。

ただし、この統計には年齢層ごとの視聴動向がない。若い世代はどんな番組を視聴しているのだろうか?世代間格差を誇張するのは間違っているが、別の調査では、若者の習慣がシフトし、それが自身の存在意義を模索するスイス国内外の公共放送局を悩ませている。

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レーダーに引っかからない

一つには、ロイターのデジタルニュースレポート外部リンク(英語)によると、スイスの18〜34歳の大半が、ニュースの情報源としてテレビではなくオンラインサイトやソーシャルメディアに頼る傾向にあるという点だ。特にNetflixのようなエンターテインメントサービスに月額利用料金を喜んで払うユーザーが増えているという。

スイス公共放送協会(スイスインフォは同協会の国際部)だって、オンラインやソーシャルの分野と無縁ではない。それなのになぜ若いユーザーを引き付けるのに苦慮しているのか。若者は公共放送には概して賛成している(ノー・ビラグの国民投票で、受信料廃止に最も反対した年齢層は30歳未満で80%に上った)。ロイターのレポートからは、公共放送局のコンテンツが国内で最も「信頼されている」ことも判明した。

これについて調べているバーゼル大学のメディア研究者ウラ・アウテンリース外部リンク氏(下の色付き囲み記事を参照)は、主にインセンティブと露出の問題とみる。

公共サービスのコンテンツは単に若者のレーダーに引っかからない、とアウテンリース氏は指摘する。ドイツ語圏のSRFやフランス語圏のRTSがメディア界の中心軸だった時代は終わった。競争の激しい現在、公共放送は自身の目標を達成できていない。

最初からグーグルやユーチューブ(面白いことに、両者はコンテンツを収集するアグリゲーターというより直のメディアソースとして認識されている)を使うこと、またはソーシャル上でコンテンツを「おすすめ」されることに慣れ、若いユーザーは単に公共メディアのことが頭にない、とアウテンリース氏は指摘する。そういう人たちはSRFの公式サイト外部リンクのような場所をわざわざ見たりしない。Netflixのように、ユーザー個人の趣向に合わせてテーラーメードされたサイトではないからだ。

つまり、質の高いコンテンツを通して受動的に読者・視聴者を引き付けるという過去の「引っ張る(pull)」戦略は、もはや不可能だ。今や積極的な「押す(push)」 ― それがもたらすすべての「フィルターバブル(編集部注:ネット上で利用者が好ましいと思う情報ばかり選択的に提示されること)」やその問題も含むが―戦略一手になっている。「ほらほら、私たちはここにいるから見つけてごらん」なんていう態度は21世紀ではもう通用しない―アウテンリース氏はそう指摘する。

情報と娯楽の対決も要因の一つだ。ソーシャル上を流れる投稿に没頭する新しい世代は、公共メディアの使命でもあるドライで情報にあふれたコンテンツに目を向けることはあまりないし、その義務もない。

公共サービスのコンテンツは退屈なのか?もちろん「退屈さ」は主観的なもの。しかし、それを考察するのもたいてい退屈な人たちだ。多くの―老いも若きも―人にとって、麻薬をテーマにした米人気ドラマシリーズ「ブレイキングバッド」の方が、インドネシアとスイスの貿易協定のニュースより面白いと思っているだろう。

Netflixやストリーミングサービスにお金を払うスイス国内のユーザーが増えているのは、そうした背景があるためだ。しかし一方で、スイスの人たちには他のヨーロッパ諸国と比較してもニュースや情報にお金を払うという意識が薄い(こうした情報はバス停などに毎朝置かれている無料紙20min.で読める)。

視聴者と再びつながる

どれもが目新しい傾向ではない。しかしそれが示すのは何なのか?次世代が公共メディアと情報に資金供給することに同意し、その後は無視なのだろうか?それとも公共メディアがつまらないコンテンツをセンセーショナル化して追いつこうとするのだろうか?

どちらの選択肢も素晴らしいとは思えない。

一つには、短期的には資源の無駄遣いであり、長期的に見れば陳腐化するということ。 二つ目は、情報の受け手が主導権を持つメディアにより、民主主義と合理的な議論が損なわれるのではという懸念が増長しうるという点だ(バーゼル大が最近実施した別の研究外部リンクでは、センセーショナルな問題をめぐりメディアが狂乱状態になった時期と、重要だがあまり刺激的でない政治的決定事項が議会を通過する時期が一致したという)。

アウテンリース氏はこれに対する明確な処方箋がないという。現時点で言えるのは紙媒体やオンラインメディアが実施した一部のイノベーション活動や成功事例だ。「コミュニティ」が質の高いジャーナリズムや興味のあるプロジェクトへの投資に動いたというもので、スイスで最近始動したデジタルマガジン「リパブリーク外部リンク」、ドイツの「クラウトレポーター外部リンク」がその好例だという。

スイス公共放送協会のジル・マルシャン外部リンク会長と同様、アウテンリース氏が言わんとするのは、地域で制作されたスイスのコンテンツに投資し、それをより革新的でテーラーメード型のストリーミングプラットフォームで流す―というモデル。Netflixと直接戦えないなら、自らがNetflixのようになってしまえばいい、という理論だ。

しかし、今後現れるインフラがどのようなものであれ、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)が2017年に出した報告書外部リンクの「ちゃんと情報収集した人が(確かな)情報に基づく決断ができる」の言葉に異議を唱える人はいないだろう。有権者が1年に4回も国民投票するスイスのような民主国家なら、なおさら重要だ。

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国際公共メディア会議

昨年の国民投票で、公共放送受信料廃止を求めたイニシアチブ「ノー・ビラグ」が否決された。それからちょうど1年が経った今年3月4日、スイス公共放送協会(SRG SSR)はベルンで初の国際公共メディア会議(IPMC、連邦環境・運輸・エネルギー・通信省通信局外部リンク連邦メディア委員会外部リンクスイスコミュニケーション・メディア研究協会外部リンク共催)を開いた。

スイス国内外のメディア専門家が集まり、公共メディアの存在意義について意見交換。質の高い情報を提供し民主主義を守りながら、今後の課題にどう対処するかを話し合った。

ウラ・アウテンリース氏は講演者の一人として登壇。大学間の研究「公共サービス:視聴者の支持と将来的なチャンス外部リンク」から、最新の調査結果を発表した。同研究は若者がスイス公共放送協会をどのように認識しているかという点について、データと傾向をまとめたもの。

スイスインフォは会議の模様をホームページでライブ配信した。

(英語からの翻訳・宇田薫)

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