スイスの連邦議会で、海外で暮らすスイス人の老齢年金に対し源泉徴収で課税する案が提出された。住む場所によって年金受給者が不利な取り扱いを受けずに済むようにするためだ。
このコンテンツが公開されたのは、
キリスト教民主党のペーター・ヘッグリン上院議員外部リンクが7日の審議で、年金受給者が国内に住むか国外に住むかで処遇に差別があるとただした。「例えばドミニク共和国で暮らす年金受給者は税金の支払い義務がないが、扶養する子供がいれば子供手当てを受給できるという制度上の特権がある」と指摘。年金から税金を源泉徴収する案を検討するよう政府に迫った。
タダ乗り?
スイスは現在、障害・徴兵保険と同様に、国外で給付する年金には課税していない。原則として、国外在住者は現地の税制に基づいて納税する。しかし、居住する国がスイスと協定を結んでいない場合や、年金受給者を呼び込むためにあえて非課税とする場合など、スイス在住者との間に不均衡が生じている。
ポルトガルもそうした国の一つだ。2013年1月1日以降、ポルトガルで不動産を賃貸・購入する欧州の年金在住者は、同国に年183日以上滞在することを条件として、10年間は所得税が免除されることとなった。
国外に住むスイス人年金受給者の問題が連邦議会で取り上げられるのは初めてのことではない。急進民主党のペトラ・ゲッシ党首外部リンクは昨年、在外スイス人に対する給付額を現地の物価水準に適合させるよう提案し、物議を醸した。
スイス連邦会計検査院外部リンクは17年10月、国外での年金給付に対する源泉徴収を法制化するよう提言した。これにより税収が年2500万~3000万フラン(約28億~33億6千万円)増えると見積もる。
14年には、80万人分の老齢年金が国外在住者に給付された。全受給者のほぼ3分の1に相当する。額にして56億フランと、全給付額の14%を占める。
swissinfo.ch/kr/ac
おすすめの記事
スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
このコンテンツが公開されたのは、
世界有数の試験・検査・認証機関であるスイスのSGSは、本社をジュネーブ州からツーク州に移転する。大手多国籍企業の移転は、ジュネーブ州の税収にも影響を及ぼしそうだ。
もっと読む スイス検査・認証SGSが本社移転 ジュネーブからツークへ
おすすめの記事
ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部ローザンヌで2日、第53回ローザンヌ国際バレエコンクールが始まった。23カ国から集まった85人の若手ダンサーが8日の最終選考進出を目指し、さまざまな課題曲に挑戦する。
もっと読む ローザンヌ国際バレエコンクール2025始まる 日本から13人出場
おすすめの記事
スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は29日、国外から子どもを迎える国際養子縁組を将来的に禁止する意向を表明した。虐待防止措置の一環としている。
もっと読む スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
おすすめの記事
スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。
もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
おすすめの記事
スイスに感染症情報解析センター発足
このコンテンツが公開されたのは、
感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。
もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
おすすめの記事
ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。
もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
おすすめの記事
スイスでX離れ進む
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。
もっと読む スイスでX離れ進む
おすすめの記事
スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究者たちが、キノコで発電する電池を開発した。農業や環境研究に使われるセンサーに電力を供給できるという。
もっと読む スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
おすすめの記事
ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
このコンテンツが公開されたのは、
米ヘルスケア大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、スイスでの人員削減を計画している。
もっと読む ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
おすすめの記事
「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
このコンテンツが公開されたのは、
スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。
もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
続きを読む
おすすめの記事
女性の定年年齢65歳に スイス内閣が再び年金改革案
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦内閣は2日、新たな遺族・老齢年金基金(AHV)制度改革案のガイドラインをまとめた。財源確保に伴う付加価値税(VAT)の引き上げと、女性の定年年齢を64歳から65歳に延長するのが主な内容。昨年秋の国民投票で否決された改革案と似た内容だが、内閣はこのままでは年金財源が枯渇するとして、再び改革案を議論の場に上げる考えだ。
もっと読む 女性の定年年齢65歳に スイス内閣が再び年金改革案
おすすめの記事
秘密口座を整理するなら今がチャンス!?
このコンテンツが公開されたのは、
海外に秘密口座を持つスイス人は自主申告したほうがよい。事情によっては処罰を免れるためだ。連邦納税事務局の説明によると、1年後では手遅れになる。
もっと読む 秘密口座を整理するなら今がチャンス!?
おすすめの記事
スイスの年金制度、国際比較で8位に転落
このコンテンツが公開されたのは、
各国の年金制度の持続性や効率性を比較する最新の国際調査で、スイスは8位となった。特に制度の持続性が懸念され、2年前の4位から大きく順位を下げた。日本は30カ国中29位。
もっと読む スイスの年金制度、国際比較で8位に転落
おすすめの記事
高齢化がのしかかるスイスの年金制度
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは24日、女性の定年年齢を64歳から65歳に引き上げることなどを盛り込んだ抜本的な年金制度改革案「老齢年金2020」が、国民投票にかけられる。スイスは日本と同じく社会の高齢化が進み、このままでは年金財源が破綻するおそれがあるため、政府は改革案を実現したい考えだ。
もっと読む 高齢化がのしかかるスイスの年金制度
おすすめの記事
個人の口座情報 税務当局はどのように把握する?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銀行に課されていた守秘義務に終止符を打つ法律が1月1日、発効した。各国間で銀行データがどのように交換されるのかをビデオで解説する。(SRF/swissinfo.ch)
1月1日から、銀行口座の自動的な情報交換を定める新たな国際法が発効した。これまで守秘義務のもとにあったスイス国内に口座を持つ非居住者の口座情報は、納税義務のある国の税務当局に提供されると同時に、海外に口座を持つスイス人の口座情報もスイスに提供されるようになった。この自動情報交換制度には、米国は参加表明していないものの、約100カ国が大筋で合意している。
そもそも、スイスの誇る銀行の守秘義務にひびが入ったのは、米国からの圧力を受けてのことだった。2009年以降、スイスの銀行は米国人顧客の脱税をほう助したとして巨額の罰金の支払いを命じられてきた。
もっと読む 個人の口座情報 税務当局はどのように把握する?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。