スイス中央部シュヴィーツ州では帰化申請の審査に「時代遅れ」や「無意味な」質問リストが使われていることが地元紙の調査で明らかになった。
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ムオッタタール村にいる牛の色は?ゴルダウ動物園に生息する動物の名前を2つ挙げよ――シュヴィーツ州のムオッタタールやアルトでスイスの帰化申請をする人は、答えを知っておくと得をするだろう。帰化申請時の面接で行われる国や居住地域に関する知識の確認で、こうした質問に遭遇するかもしれないからだ。
スイスの帰化手続き
スイスで帰化するには、市町村、州、連邦それぞれの承認が必要(簡易国籍取得手続きは例外)。原則としてスイスに10年間居住し、永住滞在証(C許可証)を有する人は居住地の市町村や州で通常の国籍取得申請ができる。要件や手続きは州や自治体によって大きく異なる場合がある。国や居住地域に関する知識を確認するため、申請者に筆記や口頭による国籍取得テストが実施されることもある。詳しくはこちらの「国籍取得」ページへ。
地元紙フライヤーシュヴァイツァー紙は情報公開の原則に基づき、シュヴィーツ州の全30市町村から、スイス国籍を申請する人に対して出される質問リストを入手。リストを分析したところ、動物に関する質問などが数多く出されていたことが分かった。
バーゼル大学欧州研究所で公民権研究を行う弁護士のバーバラ・フォン・リュッテ氏は独語圏スイス公共放送SRFに対し「中には出してはいけない質問もある」と指摘。牛の毛の色に関するものなど、明確な答えがない質問を出すのは問題だと語った。
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質問リストからは、シュヴィーツ州の自治体アルトの審査内容が改善されていないことも明らかになった。アルトは2019年、地元の動物園でクマとオオカミが同じ囲いの中で飼育されているかという質問に正解できなかったなどとして、スイスに30年暮らしていたイタリア人男性の帰化申請を却下。これについては同年、スイス連邦最高裁判所が「(質問は)帰化申請に適していなかった」とし、自治体をけん責処分としている。最高裁は、帰化申請で行わわれる知識の確認は「専門試験ではなく」、「その地域に住む平均的なスイス人に合理的に期待される以上のこと」を求めてはならないとした。
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しかしフォン・リュッテ氏は「調査によると、この自治体は今でも非常にあいまいな質問を出し続けている」と話す。同氏は、定められた条件を満たせば、誰でもスイス国籍の取得が可能であるべきだという。「帰化は政治的な決定でも特権でもない。行政行為だからだ」。帰化申請のプロセスにおいて、スイスに関する知識の確認をすること自体は禁じられていない。連邦法では、帰化申請者は知識の確認を1回は受けなければならないと規定もされている。「しかし、偽装された第二の知識テストであってはならない」
ほかにも、質問リストには「スイスへの移民を増やすべきか」や、イスラム教徒に「女子学生も水泳の必須科目があること」についてどう思うかを問うものもあった。
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いくつかの自治体は現在、質問リストの見直しを行っている。人口2500人の町ローテントゥルムの自治体職員、ダニエラ・シューラー氏は「見直しは最高裁の判決とも、新聞の調査報道とも何の関係もない」と関連を否定している。
約2300人が暮らす自治体ウンテリベルクも、いくつかの「時代遅れ」の質問の見直しを検討している。スイスでは二重国籍が認められているが、質問リストには「もし2つのパスポートのどちらかを選ばなければならないとしたら、どちらにするか?」などといったものもあるという。同自治体職員のオリバー・ボワルド氏はSRFに対し「私たちには関係性のない、こうした質問は一度もしたことがない」と話した。
とはいえ、質問リストを無くすという選択肢はないようだ。「帰化の会話で行き詰まったら、質問リストを使うこともできる」
英語からの翻訳:大野瑠衣子
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