民主主義ニュースレター11月号
読者の皆様
正しく行われた選挙と投票プロセスの結果に対し、選挙が行われる前から疑義を投げかけ、管理当局に根拠のない苦情と非難を浴びせる行為――。「選挙結果の否定」は、比較的最近見られるようになった現象です。
ドナルド・トランプ前米大統領は、選挙否定派の最たる人物として民主主義の歴史に不名誉な名を刻みました。これは既に2016年の大統領選挙から始まっていました。対抗馬のヒラリー・クリントン氏の得票数がトランプ氏を286万5075票上回ったのにも関わらず、トランプ氏はこれを無効化しようとしました。トランプ氏が当選できたのは、米国の特殊な選挙制度があったからです。
それから4年後の2021年、トランプ氏が過半数に700万票以上足りず、いわゆる選挙人による投票でも勝利に遠く及ばないと知ったとき、結果を覆すために必要な票を「見つける」よう選挙管理者に指示しました。挙句の果てには「選挙は盗まれた」と言い出す始末です。同氏は今も、その主張を続けています。
この大嘘は、同年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件という悲惨な結果に終わりました。それにもかわらず、選挙・投票の否定派は米国以外でも広がっています。昨年、スイスでは新型コロナウイルスを巡る連邦政府の法律に関してレファレンダム(国民投票)が行われましたが、感染防止策の反対派やコロナ否定派は投票前から投票プロセスを根本から否定する活動を繰り広げていました。
幸い、こうした選挙制度への攻撃は徐々に息切れし始めています。先ごろ大統領選に敗北したボルソナロ氏が選挙前から選挙不正を疑う発言をしていたブラジルや、最近の中間選挙における米国も同様です。米国ではトランプ氏が擁立した選挙否定派の立候補者の大半が敗北しました。
この中間選挙前に私が取材したカリフォルニア大学ロサンゼルス校のリック・ヘイセン教授(法学)は、「選挙否定派のほとんどが政権を取れず、選挙結果に対する訴訟の数は2020年に比べて大幅に減少した」と喜びました。たとえ最たる選挙否定者・トランプ氏が再び米国大統領選に出馬しても、これは良い傾向だと。
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swissinfo.ch直接民主制取材チーム・コーディネーター
ブルーノ・カウフマン
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