男女平等、職場でのハラスメント撲滅などを訴え、14日にスイス全土で行われた歴史的な女性ストライキ。スイス連邦議会でも、左派・右派の垣根を越え、男女格差の是正を求める動きが起こった。
このコンテンツが公開されたのは、
14日の女性ストライキでは、50万人超の女性らがデモに繰り出し、男女間の給与格差の是正、職場でのハラスメント撲滅などを訴えた。ただこれは法律、習慣、考え方を変える長い戦いの始まりに過ぎない。連邦議会の女性議員たちは、この潮流に呼応した。その一例を紹介する。
性暴力:アムネスティ・インターナショナルが最近、スイスの女性5人に1人が性的暴行を受けたことがあるという調査報告書を出した。これを受け先週、保守系右派の国民党を除く全政党の女性議員が6件の議会質問を提出。政府が性的暴力を防止する手立てを講じ、被害者を救済するよう訴えた。▽加害者による行為の強制▽被害者の抵抗―の2点がなければ強姦罪は成立しないという法律の構成要件の見直しも求めた。
>>アムネスティのショッキングな調査結果とは?
女性議員の割合:左派の緑の党は全政党が選挙立候補者リストの男女比を均等にするよう求めた議会提案外部リンクを出した。スイスの選挙では、投票用紙に各党の候補者が一覧で記載され、有権者はその中から選ぶ。緑の党は2017年にも、候補者リストの少なくとも3人に1人を女性とする提案を出したが、連邦議会はこれを否決。過半数が、党の裁量にゆだねるべきだと判断した。
雇用:中道右派・急進民主党のイザベル・モレ外部リンク氏は、家庭の事情で仕事をあきらめた女性が社会復帰することの難しさに目を向けた。モレ氏は政府に対し、この分野のニーズや現行の対応策などについて報告書を作るよう申し入れた外部リンク。
財政:緑の党のアリネ・トレデ外部リンク氏は、法律を改正し、女性が経済的な不利益を被らないようにすることが必要だと訴えた。スイスでは、一部の女性がパートタイム勤務だったことなどが原因で、定年後の年金支給額が男性よりも低いなど格差が生じている。このためトレデ氏は議会に提出した動議外部リンクの中で、健康保険の任意補償分、税、年金面での男女格差を政府が是正するよう求めた。
女性史博物館:スイス福音国民党のマリアンヌ・ストレイフ・フェラー氏が訴えたのは、女性史博物館の設立だ。同氏は議会に提出した動議外部リンクの中で、政府が先頭に立ち、スイスの女性史を広く知ってもらう手立てを講じることが必要だと主張した。
女性ストライキ当日、合計7件の議会提案外部リンクが出された。今後も増える見込みだ。
国民議会(下院)のマリアナ・カロッビオ・グスチェッティ議長は今年、多くの女性政治家と協力し、政治機関における女性の割合を増やす様々な取り組みを始めた。連邦議会のウェブサイトには、女性の政治参加を促すページ外部リンクができた。
連邦議会はいまだに男性優位(国民議会の女性議員は全体の33%、上院の全州議会は同15%)だが、スイスのジェンダーに関する問題は、今後さまざまな観点から議論が行われていくとみられる。
その追い風になるのかどうかはわからないが、今年10月の連邦議会総選挙には、前回2015年よりも多くの女性が立候補する予定だ。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイスの女性ストライキに50万人が参加
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで女性ストライキが初めて実施されたのは1991年6月14日。ヴォー州ジュラで働く時計職人の女性たちから相談を受けた労働組合員クリスティアンヌ・ブロナー氏が中心となり、全国的な女性運動を巻き起こした。この時も50万人…
もっと読む スイスの女性ストライキに50万人が参加
(独語からの翻訳・宇田薫)
続きを読む
おすすめの記事
無償で働くのは愛があるから
このコンテンツが公開されたのは、
農業に従事する女性の約7割は無給だ。そのため、彼女たちは「無職」と見なされている。給料を受け取ったことがなく、社会保障制度による補償を十分に受けられなかったモニークさん*は、離婚と同時にすべてを失った。このような問題を避けるため、ロランス・ジョバンさんとフィリップ・ジョバンさん夫妻は、農場関連の支出入を公平に分配することに決めた。
もっと読む 無償で働くのは愛があるから
おすすめの記事
スイス議会、女性比率は世界15位に急上昇 23カ国追い抜き
このコンテンツが公開されたのは、
20日に実施されたスイス連邦議会総選挙はさながら「女性選挙」だった。日本の衆議院に当たる国民議会(下院)で、女性議員比率が32%から42%に上がり、ノルウェーやイタリア、フランスを追い抜いて世界ランキング15位に急上昇した。
もっと読む スイス議会、女性比率は世界15位に急上昇 23カ国追い抜き
おすすめの記事
女性議員の活躍を阻むハードルは何か データで探る総選挙
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは、女性の有権者が男性より1割多い。ところが州政府から連邦内閣に至るまで、活躍する女性議員の数は男性より少ない。その理由をデータで探った。
もっと読む 女性議員の活躍を阻むハードルは何か データで探る総選挙
おすすめの記事
スイスの美術館で女性の作品が少ないワケ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの美術館では女性よりも男性の作品が多く展示される。スイスインフォとフランス語圏のスイス公共放送(RTS)の共同調査によると、2008~18年では女性の作品はわずか26%だった。
もっと読む スイスの美術館で女性の作品が少ないワケ
おすすめの記事
スイスの女性ストライキに50万人が参加
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで女性ストライキが初めて実施されたのは1991年6月14日。ヴォー州ジュラで働く時計職人の女性たちから相談を受けた労働組合員クリスティアンヌ・ブロナー氏が中心となり、全国的な女性運動を巻き起こした。この時も50万人…
もっと読む スイスの女性ストライキに50万人が参加
おすすめの記事
女性ストライキの長い歴史 闘いはまだ終わっていない
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで初めて女性ストライキが起こったのは、1991年6月14日。何十万人もの女性がこの運動に参加した。あれから30年近く経った今年6月14日、再び大規模な女性ストライキがスイスで予定されている。
もっと読む 女性ストライキの長い歴史 闘いはまだ終わっていない
おすすめの記事
スイスの男女間格差
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは男女平等が憲法で保障されている。これは1981年6月14日の国民投票で有権者が勝ち取った権利だ。ところが可決から38年経った現在でも、この権利は実現されていない。スイスの日常生活における男女格差を示す5つの重要な指標を以下にまとめた。
もっと読む スイスの男女間格差
おすすめの記事
ILO創立100周年記念総会 仕事をとりまく未来に必要なものとは
このコンテンツが公開されたのは、
未来の仕事像とは―?スイス・ジュネーブに本部を置く国際労働機関(ILO)は、創立100周年を記念する今年の年次総会で、職場での暴力やハラスメントから労働者を守るための条約の採択を目指す。
もっと読む ILO創立100周年記念総会 仕事をとりまく未来に必要なものとは
おすすめの記事
ILO総会開幕 職場のセクハラ、男女の賃金格差是正が焦点
このコンテンツが公開されたのは、
国際労働機関(ILO、本部ジュネーブ)の年次総会が10日、スイス・ジュネーブで始まった。スイスのアラン・ベルセ連邦内務相は開会演説で、加盟国が男女の賃金格差是正に向け更なる努力を講じるよう呼び掛けた。総会では職場でのセクハラや暴力を禁止する初めての国際条約が制定される見通しだ。
もっと読む ILO総会開幕 職場のセクハラ、男女の賃金格差是正が焦点
おすすめの記事
UBS、産休で長期のボーナス減額 女性行員ら反発
このコンテンツが公開されたのは、
産休を取得した女性のボーナスを何年にもわたり減額する。そんな慣例が存在するスイスの金融最大手UBSで、女性キャリア行員たちからの批判の声が高まっている。ジェンダー平等に対する同行の姿勢も問われる問題だ。
もっと読む UBS、産休で長期のボーナス減額 女性行員ら反発
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。