自分の言いたいこと、自由に言えていますか?
親愛なる読者の皆様
「表現の自由」という権利、あるいはあなた自身の表現の自由について、不安を感じることはありませんか?
ソーシャルメディアとヘイトスピーチ問題、世界で広がりを見せるオートクラシー化(独裁化)、今日に至っては新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)など、関連しているものは違っても、人々は「表現の自由」を求め、できる限りの範囲で声を上げ続けています。そして、スイスでもそれは同じです。この「表現の自由」を巡る世界的な議論は、未来への道筋の1つです。決して、民主主義や人権、解放、教育に劣るものではありません。
だからこそ、私たちは皆さんと一緒にこのテーマに注目したい、そう思いました。
私たちは皆さんと「表現の自由」というテーマを深く突き詰め、スイスの国境を越えた交流の輪を広げていきたいと思っています。このニュースレターでは過去3カ月に配信した「表現の自由」シリーズ記事の概要を紹介します。記者や他の読者と意見を交換できるこちらの議論ページにもぜひご参加ください。
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私はこのニュースレターをスイスの快適な環境で書いています。「表現の自由」を法が保障するスイスでは、原則として、何人からも干渉を受けることなく、自己の意見を述べることができるとされています。でも、そうとはいえ、表現の自由の境目はますます曖昧になっています。他の既存の民主主義国でも、表現の自由は厳しい圧力にさらされています。
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世界的に圧力を受ける表現の自由
今、私たちは重大な岐路に立たされています。現在、87カ国で世界人口の68%が独裁政権下で生活しています。それを良く分析したのが、ジュネーブ国際・開発研究大学院アルバート・ハーシュマン民主主義センターのリサーチフェロー、ヤニナ・イェルプ氏の記事です。同記事によると、インドやブラジルなど複数のG20参加国では、民主主義が後退したか独裁主義に傾いており、その先頭に立つのは欧州のポーランドとなっています。
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普遍的だが絶対的ではない 表現の自由
イェルプ氏は、このようなポピュリズムの台頭は「疲弊」の兆候だと言います。これは、多くの国における構造的不平等と、不平等のスケープゴートとしての人種差別の広がりが起因しています。
また、民主主義の専門家であるブルーノ・カウフマン氏は世界中で脅かされつつある「表現の自由」の存在にフォーカスを当てました。
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世界中で試練に立たされる表現の自由
コロナと独裁者の議論
スイス政府はコロナ対策として、基本的人権に大きく踏み込んだ措置を講じました。そのため、スイスは急に独裁国家になってしまったのか?というような実にグロテスクな議論が今春の議会で交わされました。
また流行のさなかには、危機下で政府に国民生活を制限する権利を与えても良いとした、いわゆる「コロナ法」が成立しましたが、それを巡り、今月13日に国民投票が行われました。これはコロナ政策に関する、世界でも唯一の、直接民主主義的なプロセスです。投票では有権者の60%が新法に賛成しました。
「スイスでは、言論の自由を巡る法律の是非は国民に判断が求められてきたが、それは非常に危うい綱渡りとも言える」とカウフマン氏は自身の記事で述べています。
「表現の自由」をテーマにしたその他の記事:
「表現の自由」の大きな障害となっているのは、コロナのパンデミックだけではありません。ネット上のフェイクニュース、ヘイトスピーチ、差別などがあります。弊社のヨナス・グラットハルト記者が台湾のオードリー・タン(唐鳳)IT担当相に話を聞きました。
受け入れられない言論をコントロールする責任は、民間企業にあるのでしょうか?ヘイトスピーチと表現の自由の境界線はどこにあるのでしょう?「表現の自由」は誰が規制すべきなのでしょう?
不平等と人種差別が、世界中でポピュリズムを擁護するリーダーの台頭を促し、社会的分裂は民主主義を脅かす。ジュネーブ国際開発高等研究所(IHEID)の情報共有プラットフォームに掲載された記事で、同研究所の教授はそう語っています。
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あなたの声を聞かせてください
いま社会の中では「どこまで言って良いか」という境界線について、じっくりと議論が交わされています。良い面は、これまで声を上げられなかった人たちの声が届くようになったことです。ただ、彼らが「表現の自由」が高まったと感じれば、その一方で「表現の自由」が大幅に制限されたと感じる人がいます。
何を言っていいのか、何を言ってはいけないのか、実際には不確実性が増しています。そしてこの不確実性ほど簡単に政治的に利用できるものはありません。「ポリティカル・コレクトネス」のような「表現の自由」は、長い間、政治闘争用語として使われてきました。 これは、議論を単純化するものではなく、社会を分断し、無用の長物や過激化の可能性を生み出すものです。
ぜひ、あなたの声を聞かせてください、そして一緒に議論に参加しましょう。なぜなら、一般的な意見に異議を唱えられることこそが、民主主義だからです。
ベルンより心を込めて
ラリッサ・M・ビーラー
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JTI基準に準拠
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