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赤十字国際委員会に初の女性総裁、課題は山積み

10月1日から赤十字国際委員会の総裁に就任するミリヤナ・スポリアリッチ・エッゲー氏
10月1日から赤十字国際委員会の総裁に就任するミリヤナ・スポリアリッチ・エッゲー氏 © Keystone / Peter Schneider

ミリヤナ・スポリアリッチ・エッゲー氏が赤十字国際委員会(ICRC、本部・ジュネーブ)の初の女性トップとなる。世界の紛争がますます複雑化し、喫緊の課題が山積する中、国際人道支援組織の難しいかじとりを迫られる。

慣例に倣ってスイスの元外交官がICRCの総裁に選出された。スポリアリッチ氏が、10月1日付でペーター・マウラー氏の後任となる。任期は4年だが更新可能。1863年の創立以来、総裁に就任する初の女性となる。

スポリアリッチ氏はクロアチア生まれだが、幼児期からスイスで暮らし、バーゼルとジュネーブの大学で哲学、国際法、経済学を学んだ。これまでは国連開発計画(UNDP)の事務局長補佐兼副管理者を務め、欧州・独立国家共同体(CIS)地域局長としてロシアや旧ソ連諸国の統括も担ってきた。

2021年11月の理事会で総裁に選ばれた際、スポリアリッチ氏は、「最も弱い立場にある人々のニーズに焦点を当て、世界の紛争の場でICRCチームの素晴らしい影響を正当に評価するよう努める」と述べた。

複雑な国際環境

新総裁を迎えるのは、非常に複雑な国際環境だ。2万人のICRCスタッフは、アフガニスタン、リビア、スーダンを含む100カ国以上で、戦争や暴力によって深刻な被害を受けた人々を支援している。その主な目的は、国際人道法に基づいて武力紛争の犠牲者を保護・支援することで、行方不明者とその家族の再会、庇護希望者、国内避難民、被拘禁者の援助などが含まれる。

過去10年間では、シリア紛争、ミャンマーのロヒンギャ族大量脱出、ロシアによるウクライナ侵攻など、新たな紛争や人道的大惨事にも直面している。

紛争当事者だけでなく、すべての関係者と対話することは、ICRCにとって困難な課題の一つ。ウクライナ戦争の開始から間もない3月、マウラー現総裁がロシアのセルゲイ・ラブロフ外相とモスクワで会談した時は大衆のひんしゅくを買い、ICRCの公平性が批判された。ICRCとロシアの対話は、ロシアのウクライナ侵攻を正当化するものだと解釈する非難の声すらあった。

ウクライナでの戦争や現地での限られた活動は、ICRCの難儀を物語る。23日に発表された国連のウクライナ調査委員会の報告書には、人口密集地での爆発物の使用、民間人と戦闘員を区別しない無差別攻撃、処刑、拷問、虐待、兵士による性暴力、民間人の強制移住など、国際人道法の多くの違反が列記された。調査委員会は、ロシアがウクライナで戦争犯罪を行ったと結論付け、ウクライナ軍によるロシア人捕虜の虐待を2件特定した。

ロバート・マルディーニICRC事務局長は9月初めにウクライナを訪問した際、「ニーズのほんの一部」しか支援できず、捕虜との面会も限られていることを認めた。「これまでのところ、我々が訪問できたのは、(ウクライナとロシアの)両国の捕虜数百人だけ。そして、まだ何千人もの捕虜と面会が必要なことは承知している」とマルディーニ氏は記者団に語った。ジュネーブ第三条約は、ICRCにすべての捕虜への面会を許可している。 

ICRCにとって別の大きな課題となっているのは、「戦争法」と言われる国際人道法の違反や誤った解釈の増加だ。16カ国の1万7000人を対象に、2016年と1999年を比較したICRCの意識調査では、戦争法の遵守に関する認識が変化していることが明らかになった。2016年の調査では、国連安保理常任理事国5カ国(中国、フランス、ロシア、英国、米国)とスイスでは、「紛争地で民間人の死は避けられない」との解釈が高まった。また、拷問は「誤り」と答えた人は全体の3分の2だったが、「敵の戦闘員を拷問にかけることができる」に「同意しない」と答えた人は1999年の調査より減少した。

複合的な問題

武力紛争の増加に加え、ICRCの活動は、最もぜい弱な国々に影響を与えている食糧不足や気候変動が引き起こす強制的な移住にもさらされる。

「私の願いは、暴力や気候変動が人々の生活を破壊しても、地域社会がより苦しむことがないよう、人道的対応の構造に弾力性を持たせることだ」と、マウラー氏は最後の記者会見で話した。

「私たちは緊急事態への反射的対応から脱却し、ぜい弱な地域、保健システム、水システム、重要なインフラに投資しなければならない。子どもたちが飢えで死ぬときは、システム全体の失敗の結末。それは悲しみの連鎖であり、私たちはその連鎖から抜け出さなければならない」

マウラー氏は、応急処置の「絆創膏」は、今後数年で体系的な危機を解決するのに不十分であるとも指摘した。

編集:Virginie Mangin

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