The Swiss voice in the world since 1935

スイス農業団体、シンクタンクの改革案に猛反発

えさを食べる牛たち
アヴニール・スイスによると、スイスの農業や食料品業界には年38億フランもの補助金が注ぎ込まれている。それは「氷山の一角」に過ぎないという © KEYSTONE / CHRISTIAN MERZ

シンクタンクのアヴニール・スイスは、スイスの農業政策には年200億フラン(約2兆3千億円)と莫大な予算が注ぎ込まれ、改革が必要と訴える。その訴えは農業団体に大きな反発を食らった。

 「この報告書は問題が多い。不条理な見解ととんでもない提案ばかりだ」。スイス農家組合がこう噛み付いたのは、アヴニール・スイスが7日発表した報告書「将来のための農業政策」だ。

 アヴニール・スイスによると、スイスは最も農業部門にお金をかけている国の一つだ。農業・食品産業に流れる連邦補助金は年36億フランだが、ただの「氷山の一角」に過ぎない、と報告書は指摘する。農業分野に与えられた直接・間接の費用や特権を合算すると、年200億フランにも上るという。

≫スイスにはどんな農業保護策がある?

  納税者と消費者が最も多い47%を負担している。食品価格は平均して欧州連合(EU)よりも78%割高だ。10項目の改革案アヴニール・スイスは、スイスの農業をより競争力のあるものにし、年1440億フランを節約するために2030年までに導入すべき10項目の改革策を提起した。農産物への輸入関税の引き下げや、補助金の廃止などを盛り込んだ。

 これに対し農家組合は、アヴニール・スイスは「食べ物が天から舞い降りてくる」ものだと考えていると反論した。200億フランという額を「根拠もなく軽業的に計算しただけ」と断じ、「完全に非現実的な前提」にあふれていると批判した。

 スイスはアルプス山脈のため地形的な制限が多く、小規模農家が典型的だ。農地面積は18ヘクタール、飼育する牛は20頭前後が平均。農家組合は、アヴニール・スイスの目指す大規模農業への集約では大きなコスト削減は実現できず、むしろ「輸入農産物が安すぎる」と指摘した。

 スイスは今月23日、持続可能な食糧生産と地元の農産物を促す二つの国民発議(イニシアチブ)をめぐり投票する。先月発表された世論調査によると、今のところ両案とも幅広い支持を得ている。

おすすめの記事
農家

おすすめの記事

地産・持続可能な地域農業の促進に国の援助を 「食料主権を求めるイニシアチブ」とは?

このコンテンツが公開されたのは、 持続可能な方法で生産された地産食材を地域住民に優先的に提供する-。スイスで農業政策の抜本的な改革を求めるイニシアチブ(国民発議)が来月、国民投票で是非を問われる。イニシアチブの発起人らは「農業は第一に、環境を考慮した持続可能な食料を地域の住民に供給するべきだ」と支持を訴えるが、反対派は国が過度に農業分野に介入することになり、農作物の価格が高騰すると懸念する。

もっと読む 地産・持続可能な地域農業の促進に国の援助を 「食料主権を求めるイニシアチブ」とは?


最も読まれた記事
在外スイス人

世界の読者と意見交換

ニュース

買い物かごの写真

おすすめの記事

スイス住民の12人に1人が貧困ラインを下回る 

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦統計局が31日発表した最新調査で、2023年のスイスの貧困率は前年比ほぼ横ばいの8.1%(約70万8000人)だったことが分かった。

もっと読む スイス住民の12人に1人が貧困ラインを下回る 
部分日食

おすすめの記事

スイスで29日に部分日食

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは29日に部分日食が観測される見込み。午前11時20分頃に月が太陽の前に重なり始める。

もっと読む スイスで29日に部分日食
チベットの旗とスイスの旗を掲げる亡命チベット人家族と子ども

おすすめの記事

ベルン大、チベット語コースの募集停止

このコンテンツが公開されたのは、 ベルン大学は、2025年度秋学期からチベット語コースの学生募集を停止する。同大はチベット語が学べる唯一のスイスの大学だった。

もっと読む ベルン大、チベット語コースの募集停止
UBSの看板

おすすめの記事

UBS、スイスからの本社移転を検討か 一部報道

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府が検討している国内銀行の規制強化案が実現すれば、UBSはスイスからの本社移転を検討すると、米ブルームバーグ通信が20日報じた。

もっと読む UBS、スイスからの本社移転を検討か 一部報道
スイス中央銀行

おすすめの記事

スイス中銀、フランの買い手から売り手に転じる 2024年報告書

このコンテンツが公開されたのは、 スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が18日発表した年次報告書によると、2024年はフランの「買い手」から「売り手」に転じた。インフレ圧力が緩み、フラン安を食い止める必要性が薄れた。

もっと読む スイス中銀、フランの買い手から売り手に転じる 2024年報告書
両手を前に出して会見で説明するスーツ姿の閣僚

おすすめの記事

世界の特許出願、中国が首位 日本3位、スイス8位

このコンテンツが公開されたのは、 世界知的所有権機関は17日、昨年の国際特許出願件数の統計を公表した。国別では中国が出願件数の4分の1以上を占め首位を維持し、米国と日本が続いた。スイスは8位だった。

もっと読む 世界の特許出願、中国が首位 日本3位、スイス8位
マルティン・フィスター氏

おすすめの記事

スイスの新国防相にフィスター氏

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府の新大臣に選出されたマルティン・フィスター氏は、4月1日から連邦国防・国民保護・スポーツ省のトップに就任する。

もっと読む スイスの新国防相にフィスター氏

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部