難民の受け入れをめぐって欧州が揺れている。イタリアがダブリン規約の廃止を求める一方で、スイスや欧州各国はこの条約の重要性を主張し続けている。スイスがダブリン規約を支持する背景には、理由がありそうだ。スイスは、ダブリン規約を適用して2009年から最も多くの難民申請希望者を他国、特にイタリアへ送還してきた国だ。
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スイスは、難民申請希望者の主な最終目的地ではないが、2009~14年の間に最も多くの難民申請希望者を他国に送り返した国だ。こうした難民申請希望者の送還は1990年に調印されたダブリン条約に規定されており、スイスは08年12月に加盟。同条約は難民申請希望者が最初に入った国に、難民の登録、認定審査を義務付けたものだ。多くの難民が最初にたどり着く国は、ギリシャやイタリアだ。
だが、ダブリン規約のもとでは全ての加盟国が公平であるとは言えないようだ。グラフでは各国間の難民送還数に著しい不均衡があることが分かる。
6年間にスイスは、難民申請者全体の15%にあたる1万9517人を他国に送還。ちなみに難民の主な最終目的地であるドイツでは3%(1万8331人)、スウェーデンでは4%(9946人)と僅かだ。だが、反対に他国がスイスに向けて送還した難民申請希望者数は2523人に留まっている。
次のグラフは、各国が他国から受けた難民申請希望者の送還受け入れ要請数と、ダブリン規約の適用により実際に受け入れた送還の数を示している。
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「不法入国のあっせん業者は『イタリアで指紋を登録しなければ欧州を更に北上できる』と言っていた。兄が家族と一緒にスイスに住んでいるので、私もスイスを目指していた」と20歳過ぎのエリトリア難民、セメーレ(※)さんは言う。
「だからシチリア島にたどり着いたらすぐに逃げ出した。スイスのキアッソまで電車で行き、そこで難民の申請をした。全て計画通りに行ったと思っていたのに、数カ月後には役所からイタリアに送り返されるとの連絡が入った」
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