自転車専用道は賛成多数で可決の見通し、農業改革案は暗雲
スイスで23日に行われる国民投票の第2回世論調査で、自転車専用道の設置を連邦憲法に盛り込む案は大多数の賛成で可決される見通しとなった。一方、持続可能で社会規範に準じた農業政策への転換を目指す2件のイニシアチブ(国民発議)は反対の声が強まった。
自転車専用道の設置案は「歩行者専用道および遊歩道に関する憲法条項外部リンク」に自転車専用道を加えるよう求める内容。2015年に一部の政党と業界団体が立ち上げた通称「自転車イニシアチブ外部リンク」の内容を政府が一部踏襲し、対案として提起。議会とイニシアチブの発起人もこの対案を支持したため、国民投票には政府の対案のみがかけられることになった。
スイスの世論調査機関gfs.bernがスイス公共放送協会の委託を受け8月29日~9月5日に実施した第2回世論調査では、回答に応じた有権者の69%が賛成、反対は25%、未定は6%だった。
8月上旬の第1回世論調査よりも支持が5ポイント増え、可決される公算が高まった。
結果は想定内といえる。スイスではサイクリングの人気が高まり、電動自転車の普及も進む。自転車を1台以上所有する世帯は全体の約3分の2に上り、昨年の自転車の売上は4.2%増加した。
国民投票の世論調査
2018年9月23日の国民投票に関する第2回世論調査は、スイスの世論調査機関gfs.bernがスイス公共放送協会の委託を受けて実施した。スイスインフォはスイス公共放送協会の国際部。
8月29日~9月5日、1400人の有権者を対象に行った。誤差はプラスマイナス2.7%。データ保護の理由により、この調査に在外スイス人は含まれていない。
スイスでは、都市部や農村部での自転車専用道導入など、自転車をめぐる環境整備がすでに進んでいる。
ただ推進派は更なる対策が必要だと訴える。世論調査でも、言語圏、支持政党に関わらず、過半数が同意見だった。例外は保守右派の国民党支持者だった。
農業改革案には黄信号
2件の農業改革案は出だしこそ好調だったが、2回目の世論調査では黄信号が灯った。これらの案は、既存の農業政策を転換し、国内農業生産と食料品製造を持続可能かつ社会的規範に準じた方法で行うよう求めるという内容だ。
第1回世論調査では4分の3以上が両案を支持したが、わずか数週間でその割合が大きく低下した。
緑の党が立ち上げた「公正な食品を求めるイニシアチブ外部リンク」は賛成が53%だったのに対し、反対は45%。第1回の世論調査に比べ賛成が25ポイント下落した。未定は2%。
現時点では賛成が上回るが、この「反対トレンド」により、23日の国民投票で否決される可能性も出てきた。
同イニシアチブは、地域に根ざし、また季節に応じて生産された食料品の取引を促進するほか、公平な労働条件、食料廃棄物の削減、動物の福祉の改善、自然保護の強化も目指す。
イニシアチブが立ち上がった当初は多くの支持を集めたが、食料品価格の増加や貿易相手国とのあつれきを懸念する反対派の主張が目立つようになると、世論の風向きが変わった。
市場開放のリスク
もう一つの農業改革案「食料主権を求めるイニシアチブ―農業は全ての人に関わる問題外部リンク」も似たような結果だった。イニシアチブは農業組合ユニテールなどが提起。賛成は49%で、前回に比べ26ポイント下落した。反対は46%、未定は5%だった。
このイニシアチブは連邦憲法を改正し、農業政策を環境に優しく持続可能な方法に転換するというもの。また国際市場の圧力に対する国内農業セクターの保護強化を求めている。
このため、イニシアチブの推進派は特に小規模農家の保護措置として、国が農業市場の規制や価格に積極的に介入するよう求めている。
連邦政府のほか、中道・右派政党、主要経済団体は同イニシアチブに反対を表明。反対派の主張はもう一つの農業改革案と同様で、可決されれば自国の食料生産の競争力やイノベーション力に悪影響を及ぼすほか、食料品価格の上昇を招き、国際協定からも締め出されかねないと訴えている。
(独語からの翻訳・宇田薫)
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