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COP10名古屋会議 最後に突破口

名古屋会議中に行われたヒューマンチェーンに参加する日本の活動家 Reuters

名古屋で開かれていた国際連合の「生物多様性条約第10回締約国会議」は10月29日、およそ2週間にわたる執拗な交渉の後、名古屋議定書を採択した。

野心的な目標を設定し、絶滅の危機にある動植物や森林の保護に努める。

遺伝資源の利益配分

 約190カ国の「生物多様性条約第10回締約国会議 ( COP10 ) 」参加国は、2020年までに種の絶滅を食い止めるための20の目標に合意した。これにより、水域と陸地の両方で保護地域が拡張される。

各国の代表は、この先10年間で陸地の約17%と海域の10%を保護下に置くことで意見が一致した。海洋での乱獲、サンゴ礁の保護、農地の富栄養化、森林汚染に関しても対策が取られる。

遺伝資源の利用配分についても取り決められた。途上国は、企業が自国の資源から抽出した作用物質を医薬品や化粧品などの形で商品化するときは、一種の「遺伝子税」を課税することを要求した。

これらの途上国は会議の開催前に、いわゆる「ABS議定書 ( Acces and Benefits Sharing/遺伝資源へのアクセスと利益配分 ) 」が協定の中に取り込まれなければ、これには署名しないと発表していた。

ロイエンベルガー環境相「ものすごい成功」

 スイスから会議に出席したモリッツ・ロイエンベルガー環境相は、名古屋議定書の採択を「ものすごい成功」だと言う。
「合意を得て問題を解決することが国連でも可能だということを示しているからだ」

また、
「メキシコのカンクン ( Cancún ) で開かれる次の会議に対して勇気を与えてくれるものでもある。会議終了後の雰囲気は、それ相応に明るく陽気なものだった」
と感想を述べた。

ロイエンベルガー環境相は10月31日に引退する。
「名古屋会議の見通しが非常に悪かったことを思えば、これからは国連が環境政策でも成功を収められると期待できる。最後の一仕事が成功に終わってうれしい。交渉にはスイスも寄与した。欧州連合 ( EU ) と島国国家の間で最後まで残った意見の相違をうまくまとめたのはスイスの代表団だった」
 と楽観的だ。

環境保護団体は慎重な姿勢

 環境保護団体もこの合意を称えたが、一方でこれらの対策は必ず実現されなければならないと警告する。「世界自然保護基金 ( WWF ) 」事務局長のジム・リープ氏は
「名古屋議定書は歴史に残る成果だ」
と語った。

スイスの環境保護団体「プロ・ナトゥーラ ( Pro Natura ) 」、「バードライフ・スイス ( BirdLife Schweiz /SVS) 」、「ベルン宣言 ( Erklärung von Bern ) 」も、今回の成果を慎重ながらも肯定的に受け止めた。しかし、目標は脆弱化され、「生物への海賊行為に関する協定」の中にはまだ抜け穴があると指摘する。

これら三つの団体は、共同で発表したプレスリリースで
「ABS議定書の最大の弱点は、利用国におけるチェックポイントがあいまいにしか定義されていないことだ。管理不足により、将来も生物多様性条約で定められている規定が数多く犯される恐れがある」
 と警告している。

 さらに
「途上国と工業国の間の激しい攻防が合意の脆弱化を招き、例えば陸地では最低17%、海洋では10%が保護されるに過ぎなくなった。しかし、必要なのはそれぞれ25%と20%だ」
と批判する。

一里塚

 プロ・ナトゥーラのフリートリヒ・ヴルフ氏は、この合意を「一里塚
」と表現する。また、遺伝資源の利用で得られる利益の公正な配分や2020年の目標設定で解決策を見つけるに当たって、スイスが活発な役割を果たしたことにも言及した。

名古屋会議の第3のテーマだった資金に関しては「合意が得られなかった」とヴルフ氏は語る。スイスは、まず種の絶滅を防ぐための資金の必要性を明らかにしなければならないという立場を取っていた。しかし、
「これはあまり良くなかった。南の国々は『いくら必要で、何に使うのかを教えてくれ』と言われるのを好みません。一方では、工業国の言い分も理解できます。交渉の条件としては良くありませんでした。それに、生物多様性の維持の必要性は、気候変動対策の必要性よりも算出しにくいのです」

会議終了後の結論として、ヴルフ氏は
「進展はしたが、道のりはまだ長い」
と言う。
「銀行を救済するためなら簡単に巨額の資金が投じられ、生物多様性の場合はそれよりもっと少ない金額しか必要としないのに資金繰りはもっとたいへんだということがよくわかります」

科学誌「サイエンス ( Science ) 」に発表された調査では、動植物の種の5分の1が絶滅の危機にあることが明らかになっている。

平均すると、毎年およそ50種の哺乳動物、鳥、両生類が、農場やプランテーションの拡張、伐木、乱獲などによって絶滅に近づいている。ほかの要素として、他種との生存競争、特に外来種による淘汰も挙げられる。

保護が促進されなければ、この傾向はいっそう進むと世界の研究者は10月26日に報告した。

保護の対象となっている2万6000種近くの脊椎動物が、スイスに拠点を置く国際自然保護連合 ( International Union for the Conservation of Nature ) のレッドリストに載せられている。

生態食物網をまたいで生物多様性効果を調べる、8年間にわたる調査結果で、植物多様性は生態系食物連鎖の上のレベルにいる生物にとって非常に重要であることが明らかになった。

「生物多様性条約第10回締約国会議 ( COP10 ) 」名古屋会議は10月18日から29日まで開催された。約190カ国の代表が出席。アメリカは生物多様性条約 ( CBD ) に署名していないが、オブサーバーとして出席した。

同条約は1993年に発効し、生物多様性の保全、その構成要素の持続可能な利用、遺伝資源の利用から生じる利益の公正な配分の三つを主な目標とする。

2002年、締約国は2010年までに種の絶滅の速度を大幅に減速させることで合意した。だがスイスを含め、ほとんどの国がこの目標を達成していない。国際連合 ( UN ) は2010年を「国際生物多様性年」に定めた。

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