新型コロナウイルス(COVID-19)の感染に歯止めをかけるため、感染者と接触した人物も全員経路調査を受けている。スイス当局は専門家がこうした「探偵」業務に当たるよう要請している。
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無観客のアイスホッケー試合、ファスナハト(カーニバル)の中止、国外修学旅行の延期――スイス初の新型コロナウイルス患者が確認されたティチーノ州は、こうした措置が矢継ぎ早に発表された。国民に人気のエンガディン・スキーマラソンも中止となった。
感染拡大の食い止め政策に尽力する一方で、医療専門家チームが重大な仕事に奔走している。医療用語で「コンタクト・トレーサー(接触追跡者)」と呼ばれている専門家集団で、感染経路を再現する使命を負う。感染が明らかになった人が、他の人に感染させていないかどうかを突き止めるのが目的だ。スイス連邦保健局伝染病班のダニエル・コッホ班長がドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)に語った。
隔離の問題
疫学に基づいた調査は、患者への聞き取りから始まる。症状が出る前の2日間に密に接触したすべての人物をリストアップする。
チューリヒ大学で感染症を専門とするトーマス・ハスラー医師によると、特に注意が必要なのは同居人や、2メートル以内の距離で計15分以上接触があった人物だ。高いリスクに直面した人として扱われる。
こうした調査により、感染者の習慣や行動範囲により数十人の被追跡者が選定される。例えばフランスで新型コロナウイルスの陽性反応が出た患者からは、60人の被追跡者がリストアップされた。
被追跡者を特定したらすぐに電話でコンタクトを取り、感染の可能性があることを伝える。感染リスクが極めて高い人は自宅に待機し、症状が出たらすぐに当局に報告するよう求める。隔離は14日間続く。州直属医のブリアン・マルティン氏はドイツ語圏の日刊紙NZZで、被追跡者が実際に危険なほど患者と接近していた場合は、要注意人物として隔離されると説明した。
集団で隔離すべき人々が見つかった場合は別の措置が必要だ。例えば感染者と同じ飛行機やバスに乗っていた人たちだ。こうした場合は、当局が隔離施設を提供する。
リスクの低い人は外出しても良いが、体温をチェックして変化があればすぐに報告しなければならない。
「こうした対応で難しいのは、感染者と密に接触した人を全員特定できるわけではないことだ。特に感染者が公共交通機関を利用したり、大きなイベントに出ていたりする場合だ」とハルサー氏は語った。「さらに接触者の特定は、感染者と接触者の言い分に頼らざるを得ない。その先は現在分かっている疫学データを基にした接触者の定義を基にするしかないが、(新型コロナウイルスの)感染力がまだはっきりしないため、追跡の対象となる接触期間は長めに取ってある」
「探偵」修行
接触者の追跡は決して新しい作業ではなく、州直属医の通常業務の一つでもある。例えば麻しん(はしか)検査で陽性反応が出た場合も同じような手順を踏む。
伝染病の調査は世界保健機関(WHO)の定める標準手続き外部リンクに則っている。海外では2002~03年のSARS(重症急性呼吸器症候群)や14年のエボラ出血熱の流行でも奨励された。
NZZによると、2月中旬に17人のコンタクト・トレーサーが出動した。足元の感染拡大を防ぐため、保健当局はさらに多くの専門家を養成している。チューリヒ州立大学病院の感染病学者や、旅行医学センターやスイス肺連合(Lungenliga/Ligue pulmonaire)外部リンクの専門家などだ。
もし新型コロナウイルスの感染力が強く季節性インフルエンザ並みに流行すれば、接触者の追跡はもはや大きいな意味をなさなくなる。潜在的な感染者を追跡することはほぼ不可能になる。
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(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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