スイスの視点を10言語で

スイスでプライベートジェットの利用増加 環境保護団体が警鐘

Jets in Geneva
スイスで最もプライベートジェットの発着が多い都市はジュネーブ(ジュネーブ~パリ間)だった Keystone / Laurent Gillieron

スイスでプライベートジェットの利用が大幅に増えている。国際環境保護NGOグリーンピースの報告書によると、スイスの国民一人当たりのプライベートジェットの運行本数はマルタに次いで多い。同団体は、こうした過剰な利用は環境に大きな負荷を与えていると訴える。

グリーンピースが委託して行った調査外部リンクによると、昨年のスイスでのプライベートジェットの運行本数は3万5269本(1日あたり約100回)で、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペインに次いで6番目に多かった。フランス語圏の日刊紙ル・マタンおよびドイツ語圏の日刊紙ターゲスアンツァイガーの日曜版が報じた外部リンク

また、国民一人当たりで見ると、スイスはマルタに次いで2番目に多く、フランスや英国の約3倍、ドイツの約6倍だった。

航空需要の急回復 CO₂対策は出遅れ

米国のシンクタンク「Institute for Policy Studies」の調査外部リンクによると、プライベートジェットやビジネスジェットの運行本数は、過去20年間で世界的に2倍以上に増えた。新型コロナウイルスの感染拡大も需要の増加につながった。

プライベートジェットは他の輸送機関に比べ、乗客1人を1キロメートル運ぶときに排出する二酸化炭素(CO²)の量が遥かに多い。NGO団体「Transport & Environment」の試算によると、プライベートジェットは乗客1人当たり、民間航空の5〜14倍、鉄道の50倍のCO²を排出する。プライベートジェットの中には、1時間あたり2トンのCO²を排出するものもある。欧州連合(EU)統計局によると、EU加盟国の2019年のカーボンフットプリントは、一人当たり6.8トンだった。

スイスのプライベートジェットは2022年の運行で、16万6千トンのCO²を排出した。

プライベートジェットを禁止するときは今

グリーンピース・スイスは報告書で、プライベートジェットの禁止を呼びかけている。一方、スイスの民間・ビジネス航空の業界団体は、こうしたプライベートフライトが数万人の雇用と数十億の粗付加価値を生み出していると強調している。

おすすめの記事
Die beiden Türme der Testanlage von Synhelion, die sich in einem der Spiegel auf dem Feld spiegeln

おすすめの記事

クリーンテックで飛び立て!スイス企業が生み出す太陽熱燃料とは

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの企業シンヘリオンは、世界初、産業規模で太陽熱燃料を供給できるプラントを建設している。主な原料は二酸化炭素(CO2)、メタン、そして水。プラントの動力は太陽光だ。

もっと読む クリーンテックで飛び立て!スイス企業が生み出す太陽熱燃料とは

英語からの翻訳:大野瑠衣子

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む
ベルジエ報告

おすすめの記事

「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱

このコンテンツが公開されたのは、 スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。

もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
整備中の飛行機

おすすめの記事

スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠

このコンテンツが公開されたのは、 スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。

もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
署名の入った箱

おすすめの記事

国民投票に向けた署名がまたも偽造

このコンテンツが公開されたのは、 医療品の安定供給を求める国民投票に向けて集められた署名のうち、3600筆以上が無効な署名だったことが明らかになった。

もっと読む 国民投票に向けた署名がまたも偽造
エリック・ヘンニさん

おすすめの記事

スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

このコンテンツが公開されたのは、 1964年東京オリンピックで銀メダルを勝ち取ったスイス人柔道家のエリック・ヘンニ(Eric Hänni)さんが25日、86歳で死亡した。スイス柔道・柔術協会が発表した。

もっと読む スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部