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ダウン症治療の鍵となるホルモンを発見、仏・スイスの研究チーム

ダウン症患者
ダウン症患者の学習困難を改善する将来の治療法への希望が見いだされた © Keystone / Laurent Gillieron

ダウン症患者が一般に普及する不妊治療薬を定期的に服用すると、認知能力が改善する可能性が新たな研究で示唆された。研究はフランスとスイスが主導した。

研究外部リンクではダウン症候群のある成人男性7人に2時間ごとにゴナドトロピン放出ホルモン (GnRH)を投与し、半年間にわたり経緯を観察した。

治療の結果、被験者7人のうち6人は、ホルモンを投与しなかったグループと比べ、注意力や指示の理解力といった認知能力に中程度の改善が見られた。

仏リール大学神経科学・認知研究所とスイスのローザンヌ大学病院(CHUV)の研究チームによると、ホルモンを投与した被験者(20歳~37歳)の脳スキャンは、認知に関わる領域の神経接続に変化が生じたことを示唆していた。

共同研究者であるローザンヌ大学のネリー・ピッテルー教授は、英ガーディアン紙で「ダウン症の人は30代から認知機能の低下が始まるが、その進行を遅らせられれば、素晴らしいことだ。ただし治療の副作用がない・許容範囲内であることが重要だ」と述べた。

ダウン症は21トリソミーとも呼ばれ、遺伝子が原因で生じる知的障害としてよく知られる。ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率は約800人に1人といわれる。21番染色体の過剰によって引き起こされ、認知能力の低下など様々な症状を引き起こす。加齢に伴い、患者の77%にはアルツハイマー型認知症と同様の症状が現れる。嗅覚が徐々に失われていくことも多い。

研究チームは、16番染色体を1本余分に持つマウスに、ダウン症に似た加齢に伴う認知力や嗅覚の低下が起きることに着目。一連の実験を経て、ゴナドトロピン放出ホルモンの定期的な投与が、これらマウスの嗅覚と認知能力の両方を改善することを突き止めた。

英語からの翻訳:シュミット一恵

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