チューリヒ大学病院は2日、損傷した肝臓を機械の中で3日間保存し、修復してがん患者に移植することに成功したと発表した。成功は世界初という。
このコンテンツが公開されたのは、
同病院は記者発表外部リンクで、「この治療法は、肝臓を装置で処理することで、機能する臓器の提供数が足りないという問題を緩和し、命を救うことが可能であることを示している」と述べた。
患者の健康状態は移植から1年経った今でも良好だという。患者は「命を救う臓器に感謝している。腫瘍が急速に大きくなっていたため、然るべき時期に臓器提供の順番が回って来る可能性はほとんどなかった」とのコメントを寄せた。
目標は10日間
同病院の「Liver4Life」プロジェクトは2015年に始動し、他に連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)、Wyssチューリヒ研究グループ、チューリヒ大学が参加している。
今回活用された技術は、主な身体機能を模した装置だ。心臓をポンプに、肺を酸素供給装置に、腎臓を透析装置に置き換えた。ホルモンと栄養素の注入は腸と膵臓の役割を果たし、リズミカルな動きは横隔膜を真似た。
2020年の実験では、摘出した肝臓を1週間生かし続けることに成功した。今後、臓器移植の成功率を上げるために、保存期間を最大10日に伸ばすことを目指す。現在は摘出後極めて迅速に移植しないと成功しない。
肝移植用の臓器は通常、ドナー(提供者)から摘出した後に氷の上に置かれ、12時間しか生存できない。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
おすすめの記事
スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ州の放射性廃棄物処分場建設計画が、正式な認可が下りる前から反対運動に直面している。
もっと読む スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
おすすめの記事
ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
このコンテンツが公開されたのは、
ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。
もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
おすすめの記事
スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。
もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
おすすめの記事
2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。
もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
おすすめの記事
CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
このコンテンツが公開されたのは、
今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。
もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
おすすめの記事
女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。
もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
おすすめの記事
11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。
もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
おすすめの記事
スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。
もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
おすすめの記事
スイスを縦断するツルが過去最多
このコンテンツが公開されたのは、
スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。
もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
おすすめの記事
「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。
もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
続きを読む
おすすめの記事
15日の国民投票 ネットフリックス法など全て可決
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで15日、国民投票が行われた。ネットフリックスなどの動画配信サービスに新たな規制をかける法改正案など3件全てが可決された。
もっと読む 15日の国民投票 ネットフリックス法など全て可決
おすすめの記事
全ての人を潜在的ドナーとする法案、スイスで国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは5月15日、明確に反対の意思表示をした人を除き、全ての人を潜在的ドナー(臓器提供者)とみなす法案が国民投票にかけられる。何が争点になっているのか。
もっと読む 全ての人を潜在的ドナーとする法案、スイスで国民投票へ
おすすめの記事
スイスの臓器提供問題の核心に迫る
このコンテンツが公開されたのは、
臓器提供をする意志を明確に表示している場合のみ臓器摘出が行われる「オプトイン」方式が採用されているスイスでは、医師が患者の合意を得るのが難しい。一方、他のヨーロッパ諸国では、本人がはっきり拒否していた場合を除き、原則的にすべての人を潜在的ドナーとみなす方針が主流だ。しかし、倫理学者はこの方針に反対している。医療現場の意思決定という厳しい現実は倫理的見解と折り合いをつけられるのだろうか?
スイスは世界屈指の富裕国で、医療資源も他の多くの国に比べてかなり潤沢だ。とは言え、スイスにおける臓器の需要はこれまでになく高い。臓器提供に賛成する非営利団体スイストランスプラント(Swisstransplant)によると、スイスの移植待機リストに載っている人の平均2人に1人が、臓器を待ったまま毎週亡くなっているという。
もっと読む スイスの臓器提供問題の核心に迫る
おすすめの記事
スイス保健局 臓器移植対策推進
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで臓器提供に関するキャンペーンが開始された。臓器提供の重要性について意識を高め、登録者数を増やすことを目的とする。キャンペーンは3年間実施され、政府の予算は350万フラン(約3億9千万円)。連邦内務省保健局が25日明らかにした。
もっと読む スイス保健局 臓器移植対策推進
おすすめの記事
スイス臓器移植団体、ドナーのオンライン登録を開始
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで臓器提供・移植を進める財団「スイストランスプラント」は、ドナー(臓器提供者)登録のオンラインシステムを立ち上げた。
もっと読む スイス臓器移植団体、ドナーのオンライン登録を開始
おすすめの記事
未来の移植手術は人工臓器で
このコンテンツが公開されたのは、
「なぜ人工臓器開発が重要なのか」という問いにベルン大学病院の腎臓学教授兼主任医師であり、今回の研究プロジェクトの発起人であるフェリックス・フライ氏が答える。 なぜ人工臓器なのか 「人は重い病にかかると運命に逆らい、…
もっと読む 未来の移植手術は人工臓器で
おすすめの記事
臓器提供への不信感を拭う
このコンテンツが公開されたのは、
連邦内務省保健局(BAG/OFSP)は、国家臓器提供委員会(CNDO)の監督の元に調査を行い、臓器提供率が低い理由を分析した。また、フェイスブックを通じてドナーカード(臓器提供意思表示カード)を入手する人が増えているこ…
もっと読む 臓器提供への不信感を拭う
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。