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干ばつがスイスの森林に及ぼす影響

木々
今年の夏の干ばつはスイスの木々にとって厳しく、ヨーロッパモミ(左)だけでなくブナノキ(健康な木、左前)も苦しんだ。また、現在も続いているセイヨウトネリコの病原菌由来の枝枯病(中央)にも干ばつの影響がある swissinfo.ch

今年は例年になく暑く、雨が少なかった。そんな一年も終わりに近づく今秋、木々の葉はかつてないほど鮮やかに色づいているように見える。しかし、スイスの木々は冬を乗り切る準備ができているのだろうか。さらに、干ばつが増えると予想される未来への備えはどうだろう。

チューリヒ近郊のビルメンスドルフにある連邦森林降雪国土研究所(WSL)外部リンク。 周囲の木々は、赤やオレンジ、黄金色に色づいている。森林動態生態学者のトマス・ウォールゲムートさんは「見事のひと言」と言う。

森林の健康状態と保護の専門家である同僚のヴァレンタン・ケローさんも、2018年の紅葉の鮮やかさには驚いている。「こんなに明るい赤になるのは見たことがない」と、研究所への進入路に生えているシデの木から赤みがかったオレンジ色の葉を摘み取って言う。 

シデ
美しく色づいたシデ swissinfo.ch

今年の夏が極めて乾燥していたにもかかわらず見事に紅葉したのか、それとも乾燥していたからこその紅葉なのか。

「原則的にはいつも同じだと思う。紅葉には天気の影響の方が大きい」。ウォールゲムートさんは、この秋に霧や霜が発生していないことを指摘する。

防御機構

ただ、一部の木の死につながりかねない問題をうかがわせる悪影響も出始めているのは確かだ。18年の夏はスイス史上で記録的に暑く雨が少なかった。

「こんな夏は03年以来ではないだろうか。いたずらに危機感を煽るつもりはないが、18年ほど劇的な年はなかった」と、研究所に30年務めるウォールゲムートさんは言う。「今年初めて、外国に旅行する同僚たちにその地域の二酸化炭素のレベルを記録してきてほしいと頼んだ」

研究所に隣接する森を歩きながら、ウォールゲムートさんは樹冠部に小枝がないブナノキを指差し、この夏の干ばつの影響だと指摘する。

紅葉と男性
連邦森林降雪国土研究所の近くの木々を調べる森林動態生態学者トマス・ウォールゲムートさん swissinfo.ch

「あそこの小枝は、水不足でおそらく乾ききってしまったために折れた」。チューリヒでもバーゼルでも、カバノキは7月中旬に葉や枝を落とした。行政がハイキング客に、落ちてくる枝への注意を促す通知を出したほどだ。

葉を落とすのは落葉樹の優れた生き残り戦略なのかもしれない。この夏、スイス東部のヴァーレン湖畔では、オークとライムの葉が緑からそのまま灰色に変わり、続いて落葉した。

「これは防御機構のようだ」と、スイスの森林の健康状態監視チームのケローさんは言う。しかし、葉を落とすのは落葉樹にしかできない。針葉樹にとって、干ばつはさらに厳しいものとなる。

ウォールゲムートさんは森で、3本のヨーロッパモミを指差す。そのうちの2本は、干からびた赤い葉でわかるように樹冠部が死んでいる。

「キクイムシのせいなのか、干ばつの直接の影響なのかはわからない」とウォールゲムートさんは認める。ただわかっているのは、夏前には3本とも緑色で元気そうに見えたということだ。

未来の木

こうした木々の回復は、今後数カ月にどれほど水が得られるかどうかにかかっている。

「今年の春の干ばつによって、低地のさまざまな樹種の成長が抑制されたり、部分的または完全に枯れたりした。成長期の初期段階に雨が不足すると、後期段階に干ばつが起きた場合よりも深刻な影響がある」とウォールゲムートさん。スイスの研究者は今後乾燥化と温暖化が進むと予測しており、スイスの森林の管理人たちは、どのような木がそういった気候に適しているのかを調べている。

北米原産のダグラスファーは、スイスに自生するドイツトウヒよりも干ばつに強い。

ダグラスファーを手にもつ男性
干ばつに強いダグラスファーはレモンのような香りがする swissinfo.ch

「ダグラスファーは、ヨーロッパモミとか、ブナノキのような広葉樹と一緒に植えて、生物多様性を高めるのに適した『未来の木』とみなされている。生物多様性が高ければ、今後の気候変動にも耐えられる可能性が高まると一般に考えられている」。そう言いながら、ウォールゲムートさんは自分とほとんど背丈の変わらない1本のダグラスファーを指し示す。シカなどの草食動物から守るために、金網で包まれている。

しかし生物多様性の観点からは、枯れた木も役に立つ。

「森の混乱は、再生の余地ができることを意味する。優勢な木々がなくなることで栄養が提供される。これは生物多様性にとって好ましいことだ」とウォールゲムートさんは指摘する。

暑く乾燥したスイス

スイス史上最悪の干ばつがあったのは1540年。2月から年末まで雨が降らなかった。「人々は12月までライン川で水浴びをしていた。また対岸まで泳いで渡ることもできた」(ウォールゲムートさん)

1911年、1921年、1947年も極めて乾燥した年で、1940年代には多くのブナノキが立ち枯れた。スイス史上最高気温は、2003年8月11日にグラウビュンデン州グローノで記録された摂氏41.5度。

(英語からの翻訳・西田英恵)

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