スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)が、サイバーセキュリティの専門家を育成する修士号課程外部リンクを新設した。2019年秋に開講する。
このコンテンツが公開されたのは、
両校のジョイントコースとして設けた。対象は主にコンピューターサイエンス、コミュニケーションシステムの学士号を取得した学生。ギー・パルムラン教育相はこの2校が「すでにコンピューター・IT部門で世界トップクラスの教育を行っている」とコメントした。
期間は4学期。講義はすべて英語で行われる。学生はチューリヒ校で3学期、ローザンヌ校で1学期(またはその逆)を選択できる。サイバーセキュリティには法的、倫理的、経済的、政治的、技術的な側面があるため、会社での実習や社会科学の学習もある。すでに申し込みを受け付けており、約60人が関心を寄せているという。
国の「サイバー攻撃防止に向けた国家戦略外部リンク」プロジェクトによると、労働市場には年間約200~300人のサイバーセキュリティ専門家の需要がある。
ハッカー攻撃
EPFLのマルティン・フェテルリ学長は「たった一人の人間が、自宅のアパートから(パソコンを介して)1企業、あるいは一つの国家を壊滅させることができる。我々はそんな時代に生きている」とコメントした。
スイスでは2016年初め、パルムラン氏が国防省に就任したわずか20日後に、国営武器製造会社ルアグ外部リンクがサイバー攻撃を受けている。
パルムラン氏は「ITセキュリティの分野では、泥棒が警察の一歩上を行く」が、学術界はすでにサイバーセキュリティに注目し、力を入れていたと強調した。
ETHZのジョエル・メゾー学長はその一例として、ジュネーブ大学から派生し、現在は韓国の通信企業に属する情報セキュリティ会社「ID Quantique外部リンク」を挙げる。メゾー氏は、チューリヒにもGPSや次世代インターネット5Gシステムのセキュリティなど、あまり知られていない特殊な分野に長けた専門家がいると強調する。
EPFLのフェテルリ学長は「10年以上もの間、我が校はサイバーセキュリティの研究に投資してきた。暗号、個人データ保護に詳しい教授陣もいる」とコメント。両校の学長は、今秋開講する修士号課程によって、スイスがサイバーセキュリティ分野をけん引する存在になればと期待している。
続きを読む
おすすめの記事
スイス連邦工科大学ローザンヌ校が50年 世界に誇る発明品は?
このコンテンツが公開されたのは、
連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)は今年で創立50周年を迎えた。民間の科学研究所から国の大学に姿を変え、今では世界の大学トップ25の常連に成長。そのEPFLが生み出した世界に誇る科学的・商業的発見を紹介する。
もっと読む スイス連邦工科大学ローザンヌ校が50年 世界に誇る発明品は?
おすすめの記事
スイス、一人当たり特許出願件数が国別でトップ
このコンテンツが公開されたのは、
欧州特許庁(EPO)に昨年提出された特許出願で、スイスは一人当たりの出願件数が最多だった。スイス国内の企業別では製薬大手ロシュが4年連続でトップに付けたが、出願件数の増加率では重工業ABBが躍進した。
もっと読む スイス、一人当たり特許出願件数が国別でトップ
おすすめの記事
大学の質、スイスが国別で世界3位に
このコンテンツが公開されたのは、
今年度のQS世界大学ランキングで、スイスの大学システムが国別で世界3位に入った。連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)が全体の順位を押し上げた。
もっと読む 大学の質、スイスが国別で世界3位に
おすすめの記事
「オーダーメイド」の献立研究プロジェクトに市民が協力 スイスで
このコンテンツが公開されたのは、
健康的な食生活は、食物の種類だけでなくライフスタイルと腸内環境も関係している。連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームは18日、個人の健康に適したオーダーメイドの献立を提案するため、データベース構築を目的とした大規模なプロジェクトを開始すると発表した。
もっと読む 「オーダーメイド」の献立研究プロジェクトに市民が協力 スイスで
おすすめの記事
命を救うドローン 原発にも活用
このコンテンツが公開されたのは、
スタートアップ企業フライアビリティ社のドローンは、これまでは事実上アクセス不可能だった場所や、点検作業に大きなリスクや高いコストが伴う場所に入っていくことができる。今では原子力発電所や工業施設、警察や消防署で活用されるようになった。スイスの「ドローンバレー」における成功事例の代表格だ。
もっと読む 命を救うドローン 原発にも活用
おすすめの記事
スイス極地研究所がグリーンランドへ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス極地研究所(SPI)は北極の探索活動「グリーンランド周航探索(GLACE)」で行う15のプロジェクトを採択した。うち6つはスイスが指揮を執る。7月30日、研究者44人がドイツの港町キールからグリーンランドに向けて出発する。
もっと読む スイス極地研究所がグリーンランドへ
おすすめの記事
科学を生き生きと伝える映画制作 「ハッカソン」イベントで
このコンテンツが公開されたのは、
発案からわずか3日で映画を完成させるというユニークな「ハッカソン」スタイルのイベント「エクスポージャー・サイエンスフィルム・ハッカソン」。参加者らは、娯楽と教育効果を併せ持った短編映画で科学的な情報発信の新しい境地を開こうと意気込む。
もっと読む 科学を生き生きと伝える映画制作 「ハッカソン」イベントで
おすすめの記事
血管を通り抜けるロボット開発に成功 薬物投与方法に革命か
このコンテンツが公開されたのは、
周囲の状況に応じて形を変える弾性のある極小ロボットの開発にスイスの科学者らが成功した。将来的には、このロボットを口から飲み込めば薬物を直接患部に送り込むことが可能になるかもしれない。
もっと読む 血管を通り抜けるロボット開発に成功 薬物投与方法に革命か
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。