ワクチンパスの提示義務、スイスの大学で導入広がる
スイス国内の大学で、対面授業での「COVID証明書」提示を義務付ける動きが広がっている。
スイスの連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とローザンヌ大学(UNIL)、チューリヒ大学、ヌーシャテル大学は、夏休み明けの授業再開にあたり、対面授業にはワクチン接種や陰性、り患済みを証明する「COVID証明書」の提示を義務付けると発表した。同様の措置は既にザンクト・ガレン大学、ジュネーブ大学、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)が導入済みだ。
スイスの大学ではこれまで18カ月間、キャンパスの閉鎖や遠隔授業を行っていたが、今秋から感染防止対策の下での対面授業が全面解禁された。だが、COVID証明書の取り扱いについては、はっきりとしていなかった。
連邦政府は8日、13日からレストランの屋内エリア、文化・レジャー施設などの屋内公共スペースの利用時にCOVID証明書の提示を義務付ける措置を発表。州や大学は、学士・修士課程の授業で、同証明書の提示義務を導入することができるとした。
「キャンパスライフへの復帰」
フランス語圏のメディア、ハイジニュース外部リンクは、EPFLが秋学期の始まる21日以降のすべての授業と演習でワクチン証明書の提示を義務付けると報道。EPFLは9日、これを事実と認めた。
EPFLの広報担当コリンヌ・フォイツ氏は電子メールで「COVID証明書の提示が義務付けられることで、学生は健康がより保証された状態で対面授業に出席できるようになる。また、大学も施設をフル活用できる。学生が本当の意味でキャンパスライフに復帰できる」と述べた。
ただ、オンライン形式とキャンパス形式を組み合わせた複合型アプローチをいずれのケースでも適用するため「COVID証明書を持たない学生が授業から排除されることはない」という。着席時や移動時のマスク着用はこれまで通り強く推奨する。
UNILも同日午後の早い段階でswissinfo.chに対し、「21日から学士・修士課程の授業」にCOVID証明書の提示義務を導入することを認めた。
大学関係者宛ての電子メールによると、証明書の提示義務は13日からウェルカム・ウィークなどの行事や飲食・スポーツ施設、図書館への入場時にも適用される。詳細は後日知らせるとあった。
ヌーシャテル大も同日、COVID証明書の提示が義務付けられることを学生に通知した。同大の広報担当者は、本人が講義に出席できない場合は、講義のストリーミングを利用できる、と述べた。
チューリヒ大も10日、20日以降の対面授業でCOVID証明書を義務付けると発表した。
一方、イタリア語圏のティチーノ州にあるスイスイタリア語大学(ルガーノ大学、USI)は学士課程と修士・博士課程に証明書の提示義務は導入しないが、屋内行事などの他の活動には適用すると述べた外部リンク。この決定は州当局に従って行われたものだという。
他大学の対応
その他の大学も今後、同様の措置を発表する可能性がある。ベルン大学のクリストフ・パッパ事務長は9日、ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)外部リンクに対し、学内で検討中だと語った。また、証明書の検査や複合型授業について学内で議論し、州と協議する必要があると述べた。決定までは時間が掛かりそうだ。
同大は1日以降、学士・修士課程の授業を除くすべての活動にCOVID証明書の提示を義務付けている。
フリブール大学はスイスの通信社Keystone-SDAに対し、今週明けに決定すると述べた。
国内大学の統括組織スイスユニバーシティーズ外部リンクは10日、理事会は原則としてCOVID証明書の提示義務導入を推奨すると語った。
同団体は「状況に応じて、授業や研究にとって可能な限り最高の体制を学生や教職員に提供することが大学の目標であることに変わりはない」とし「このような理由から、同理事会は大学の枠組みで実施されるすべての活動に対し、原則としてCOVID証明書の提示義務を導入するよう国内大学に勧告している。その際、現地の状況を考慮して、移行期を設けることは可能だ」と述べた。
さらに、提示義務の監督は「無作為抽出による検査などを使って、適切かつ均等に」実施されなければならないとした。
学生の反応
学生団体のスイス学生連合外部リンクは、スイス高等教育機関会議とスイス・ユニバーシティーズに対し、大学における「COVID証明書の慎重な適用」と代替手段としてのオンライン授業の常時提供を要求した。
そうでなければ、り患済みでもワクチン接種済みでもなく、定期的な検査費用(例外を除き10月から自己負担)を支払えない学生は「教育へのアクセスやワクチン接種に関する自己決定」が否定されることになる、と同団体は8日夜に発表した声明で述べた。
(英語からの翻訳・江藤真理)
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