昨年7月からハワイに留まっていたスイスの電動飛行機ソーラー・インパルス2は、次の目的地を米・カリフォルニアに決定。出発準備は万全で、本日21日午後(スイス時間)、世界一周の旅を続けるため再出発する見込みだ。
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昨年7月に名古屋からハワイまで5昼夜ノンストップ飛行という新記録を達成した操縦士アンドレ・ボルシュベルクさんに代わり、今回飛行を担当するのは、ソーラー・インパルス外部リンク・プロジェクトの発案者であるベルトラン・ピカールさん。
太陽光エネルギーだけを使って世界を一周するというこのプロジェクト。その9航程目となる今回のハワイ・カラエロア空港から米・カリフォルニア州サンフランシスコ近郊のモフェット・フィールド飛行場までの飛行における、最も大きなチャレンジは何だろうか?スイスインフォは出発を目前にしたソーラー・インパルス・チームに取材した。
swissinfo.ch: 今回の飛行がこれまでと異なる点は何ですか?
アレクサンドラ・ジンドロ(広報担当):今回の太平洋横断の飛行時間は、合計4昼夜を予定している。その間の身体的、技術的な難しさは、前回の名古屋~ハワイ間の飛行とほとんど変わらない。
swissinfo.ch: では、短距離の飛行は、より簡単だということですか?
ジンドロ: そういうわけではない。距離が短くても、操縦士やチームの身体的、技術的な困難は、根本的に変わらない。ソーラー・インパルスが人口の密集した地域の上空を飛行している間は、操縦士は眠ることが許されていない。だが、海上や人の住んでいない地域を飛行している間は、最高20分までの短い仮眠を、1日に1~12回の間でとることができる。
swissinfo.ch: 今回の飛行にしかないチャレンジは何でしょうか?
アンドレ・ボルシュベルク:課題はたくさんある。第一に、ハワイと司令室のあるモナコには12時間の時差がある。今回は、昼夜が逆転して、常に早朝か深夜に働かなければならないスタッフがいる。
第二のチャレンジは、今回の飛行では、出発後すぐに海上を長時間にわたって飛ぶという点だ。つまり、どこにいても常に細心の注意を払わなければならないということだ。スタートから完ぺきでなくてはならない。一晩飛行すれば、夜明け頃にはバッテリーがほとんど残らない状態になる。そのため(出発には)、確実に天候が良いときを選ばなければならない。
ベルトラン・ピカール: 私にとってはこれがソーラー・インパルスでの最長飛行になる。約4日間、コックピットにいるのは私1人。アンドレはプロの操縦士で、前回の太平洋横断では完ぺきなフライトをした。そのプレッシャーは大きい。私もアンドレと同レベルでなければならないのだから。プレッシャーはあるし、不確かなことも疑問もたくさんある。だがそれが冒険というものだ。私は出発をとても楽しみにしている。
(英語からの翻訳&編集・由比かおり)
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世界一周飛行に挑戦中の電動飛行機ソーラー・インパルス2。中国からハワイまでの区間を飛行中、太平洋上の気象条件が悪化したため、急きょ名古屋の県営名古屋空港(小牧空港)に着陸し、現在は日本で天候が回復するまで待機している。今後待ち受けるのは、最大の難所と言われる太平洋および大西洋の横断だ。そこで起こりうる最悪の事態を想定したパイロット訓練とは、一体どのようなものなのか。(SRF/swissinfo.ch)
ソーラー・インパルス・プロジェクトは、太陽エネルギーを主に再生可能エネルギーの普及促進をサポートするために立ち上げられた。中国の重慶市と南京市に途中着陸したのは、世界でも最も人口の多い中国で、太陽エネルギーのプロジェクトに対する意識を高める狙いがあったからだ。
この世界一周飛行は2015年3月9日、アブダビでスタートした。太陽エネルギーだけを動力とするこの飛行機は四つの大陸と二つの海を横断し、およそ500時間を掛け、3万5千キロの距離を飛行する。
その中でも極めて危険だといわれているのが、太平洋と大西洋の横断飛行だ。
そのためパイロットであるアンドレ・ボシュベルクさんとベルトラン・ピカールさんの二人は、太平洋上でコントロールを失うという最悪の事態を想定した訓練を出発前に行った。
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ソーラー・インパルス2 飛行中の食事や睡眠はどうする?
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太陽光だけで飛ぶスイス製電動飛行機「ソーラー・インパルス2」。現在はインド・アーメダバードで待機中だ。本来なら今日、次の目的地インド・バラナシへ飛び立つ予定だったが、濃い霧のため出発を延期した。先週9日アブダビ空港から始まった世界一周の旅はこのように天候次第。だが、踏破する総飛行距離は3万5千キロ。これを500時間かけて飛び8月、アブダビに再び戻ってくる予定だ。(SRF/swissinfo.ch)
この前人未到の挑戦は、12年かけた研究・開発で周到に準備された。その結果、2.3トンの機体に太陽電池パネル1万7千枚を載せた高性能の飛行機が誕生した。出発前のインタビューで、パイロットの1人、アンドレ・ボルシュベルクさんは「機能的に、機体はほぼ完ぺきな状態だ。これからはパイロットの体力的・精神的なチャレンジになる」と語っている。
中でも最大のチャレンジは、太平洋および大西洋の横断になる。120時間、つまり昼夜問わず5日間をノンストップで飛行しなければならない。その間、食事はどうするのか?そしてトイレは?操縦室は1人のパイロットしか入れない超小型。自動操縦に任せて仮眠を取りながら飛行するとはいえ、問題が起きれば直ちに手動に切り替える。それはいつ起こるかわからない。
ではどのように休息・仮眠を取るのか?スイステレビの記者が、操縦席に座るもう1人のパイロット、ベルトラン・ピカールさんにインタビューした。
なお、ソーラー・インパルス2はアブダビを3月9日に離陸した後、オマーンの首都マスカットでパイロットをボルシュベルクさんからピカールさんに替え10日の23時25分、インド・アーメダバードに着陸した。この1465キロメートルの飛行は、電動飛行機が飛んだ距離としては世界初で、国際航空連盟(FAI)に登録される予定だ。
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太陽エネルギーだけで飛ぶ電動飛行機「ソーラー・インパルス2(Si2)」が2015年3月初め、ついに世界一周飛行に挑戦する。準備段階で既に数々の世界記録を打ち立ててきたチームの最後のステップだ。
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ベルトラン・ピカールさんは今、大忙しだ。太陽光エネルギーで飛ぶ飛行機「ソーラー・インパルス」プロジェクトで注目を浴びているからだ。機会さえあれば、スポンサーたちはこぞって、この世界記録保持者である飛行家のもとへと押しかける。なぜスポンサーやパートナー企業は、これほどプロジェクトを重要視するのか。
ピカールさんとアンドレ・ボルシュベルクさんの太陽エネルギー飛行機「ソーラー・インパルス2(以下、Si2)」が、6月上旬にお披露目された。2015年にはその飛行機で世界一周をする予定だが、今二人が直面している課題は、技術的な問題だけではない。Si2の主要パートナーの一部が、現在のパートナーシップにあまり満足の表情を見せていないようなのだ。
「メディアに比べて、我々はそれほど特別扱いされていない。我々に対するケアがもう少しあってもよいのではないか」と関係者の一人が言うと、「確か年次総会か何かで、年に3回はピカールさんとお会い出来る機会があったはずなのだが」と、その同僚が続ける。
そして彼らは、パートナー企業である自分たちの会社が、前回のイベントで充分な露出があったかどうかについて問い始めた。ビジネス界やメディア関係者の、何百人という人々が注目するイベントのことだ。
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ソーラー・インパルス2で世界一周 パイロットは催眠・ヨガで活力維持
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太陽エネルギーだけで飛ぶ電動飛行機「ソーラー・インパルス2(Si2)」が、ついに世界一周飛行に挑戦する。だが、この冒険で利用されるのは、太陽のエネルギーだけではない。2人のスイス人パイロットは、自己催眠や瞑想、そしてヨガの「エネルギー」も活用する。
翼幅はボーイング747より 広いが、重量は自家用車程度のSi2。革新的なクリーンテクノロジーや工学的設計に費やされた膨大な時間と労力については、これまで多くが報じられてきた。
しかし最先端技術が用いられてはいても、今回の世界一周の旅は飛行機が発明された頃に似た部分がある。パイロットはたった1人で、困難な状況に対応しなければならないところだ。人間の精神力と耐久力が試される。
3万5千キロメートルに及ぶこの挑戦の旅では、スイス人冒険家ベルトラン・ピカールさん(56歳)と元戦闘機操縦士アンドレ・ボルシュベルクさん(62歳)が交代で操縦する予定だ。合計25日かかり、途中で12回着陸することになっている。
しかし、地球一周の間には極限状況が予想される。気温は、高度8千メートルでのマイナス40℃から、一部地域の高度3千メートルでの40℃まで大きな幅がある。暖房がなく与圧されていない3.8立方メートルのコックピットでほとんど眠ずに最長5昼夜連続の単独飛行を行うのは、身体的にも精神的にも極めて過酷な試みだ。
「技術面では飛躍的な進歩を遂げたので、残っているのは人間の生理的な限界に対する挑戦だけだ」とピカールさんは言い切る。
この人類史上初の冒険に挑む2人のパイロットは、リラックスし、健康を保ち、エネルギーレベルを維持し、睡眠を管理するために、少し変わった方法を取ることにした。
ピカールさんとボルシュベルクさんはいずれも、20分間の睡眠ないしは休息を何度か取り、1日合計2〜6時間の「睡眠」を確保するという「多相性睡眠」を行う予定だ。睡眠・休息期間中は自動操縦に切り替える。
しかし、この変わった睡眠管理のアプローチは2人のパイロットでそれぞれ違う。精神科医・心理療法士の資格をもつピカールさんは、自己催眠法の利用を好む。
「疲れているが眠ってはいけないときに注意力を維持するには、催眠が必要だ。また、疲れていないが眠らなければならないときにも必要になる」とピカールさん。
飛行中は、親指に注意を集中したり、数を数えたりといった方法を用いる予定だ。また、「大洋の上空を飛ぶ退屈な時間」で長いと感じる感覚を縮めたり、20分間の仮眠の短いと感じる感覚を引き延ばしたりする「時間ひずみ」を感じる技術を、ドイツ人心理学者・催眠術療法士ベルンハルト・トレンクルさんなどから学んでいる。
トレンクルさんとピカールさんによると、こういった高度な技術によってパイロットは最大20分間トランスに似た状態に入ることができる。身体は脳から切り離されたようにリラックスし、一方の脳は注意力を維持する。それにより、元気を回復できるという。
「催眠を使えばより素早くリラックスし眠りに入ることができ、20分後に目覚めたときには気分がすっきりし、頭も冴えている」とピカールさんは言う。2013年に72時間のシミュレーション飛行を行ったとき、催眠によるトランス状態にあったが、技術チームが合図のアラームを鳴らした1.5秒後に、彼は操縦パネルの前に座った。それは極めて早い反応だったという。
2人のパイロットを検査したヴォー州立病院(CHUV)の睡眠管理専門家ラファエル・ハインツァーさんは、2人とも適切な準備ができていると話す。
「睡眠時間が普段より短くても、このような短時間の仮眠を24時間にわたって繰り返すことで、パイロットたちは72時間後も反射反応を維持していた。神経学的検査の結果も良好で、安心できるものだった。ピカールさんの普段の睡眠時間は1日8〜9時間と長い方で、一方のボルシュベルクさんの平均睡眠時間は5〜6時間だが、2人とも全く問題なくテストに合格した」
ただしハインツァーさんは、テストは5日間に及ぶものではなかったこと、未知のリスクが存在することを認めた。
ヨガの実践
ピカールさんの催眠法に対し、ボルシュベルクさんが集中力の維持と睡眠パターンの管理に用いるのは、ヨガと瞑想だ。「手段は違っても似た結果が得られる。リラックスし、精神的に疲れる思考から逃れるために瞑想と呼吸法を用いる。そうすることで心臓の鼓動が落ち着き、数分で眠りにつける」
10年以上前からヨガをしているボルシュベルクさんは、ラジャスタン出身の経験豊富なインド人ヨガ行者サンジーヴ・バーノさんに頼んで、今回のための特別プログラムを組んでもらった。プログラムには、体温を上下させるプラーナーヤーマ呼吸法や、血流と筋肉の緊張を整える伝統的なヨガのポーズが含まれる。多くは目隠しをして行われる。
脊椎マッサージ機能が備わった操縦席は、後ろに倒せば平らなベッド兼ヨガマットになる。コックピットは狭いが、ボルシュベルクさんはこのシートの上で肩立ちのポーズなどを行える。
長距離飛行の懸念
バーノさんは、2人のパイロットは十分な準備をしているが、特に長距離の飛行については懸念が残ると話す。
「コックピット内には圧力や温度の調節装置がない。電熱式の手袋と靴と衣服だけだ。しかし、マイナス40℃の環境で座った状態では、厚着をしていても厳しい。体を動かせれば何とかなるが、マイナス40℃の中で座りっぱなしなのは難しい」
「同じ場所でほとんど動かず、20分しか眠らない状態が2、3日続くと、認識調整機能が完全に狂ってしまう。幻覚症状が出たり、体内の窒素量が激増したりする可能性がある。また血液の循環も悪くなる」
バーノさんは地上から飛行機の進行状態を見守り、上空のパイロットがヨガのポーズや呼吸法で助けが必要なときに備えて、コミュニケーションツール「グーグル・ハングアウト」で連絡を保ちながら待機するという。
「例えば3日目頃から、睡眠不足と疲労、窒素過多、体のむくみなどから深刻な影響が現れる可能性がある。これらはいずれも解決すべき課題となり得る」
数字で見るソーラー・インパルス
飛行距離 3万5千キロメートル
合計飛行時間 500時間
最高巡航高度 8500メートル
速度 毎時36〜140キロメートル(高度による)
プロジェクト期間 5カ月(2015年3〜8月)
コックピット容積 3.8立方メートル
1人乗り 最長で5〜6昼夜連続で飛行
天候条件 マイナス40〜プラス40℃
酸素ボンベ 6台搭載
パラシュート 1台
救命ボート 1台
1日に食料2.4キログラム、水2.5リットル、スポーツドリンク1リットル
翼幅 72メートル(ボーイング747より広い)
平均的自家用車と同程度の重量(2300キログラム)
リチウム電池 633キログラム
電池 4×260ワット時毎キログラム
太陽電池パネル 1万7千枚(厚さは各135ミクロン)
構想開始 2003年
チーム構成員 70人
パートナー企業 80社
予算 1億5千万ドル(約178億円)
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