スイスの視点を10言語で

物体の大きさと場所が分かる義手を新開発 スイス・イタリア合同研究

Prosthetic hand opening a purse
新しく開発された義手は、財布の中にある物の位置を感じ取ることができる Luca Rossini

スイスとイタリアの大学は、切断手術を受けた人が四肢の位置感覚を取り戻すことを可能にする義手を共同開発した。 

連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)外部リンク、イタリア・ピサにある聖アンナ高等師範学校外部リンク、そしてローマのジェメリ総合病院の研究者らが10年かけて共同開発した。この義手を使えば、物体を見なくても形や質感、大きさと位置を感じ取ることができるという。 

2種類の情報 

従来の義手は筋電義手(きんでんぎしゅ)と呼ばれ、前腕に残っている筋肉機能を利用して運動制御を可能にしていた。しかし本来の手の感覚を復元することはできなかった。 

今回スイスとイタリアのチームが開発した新装置は、前腕の神経を刺激し、本来の手と似た方法で感覚をフィードバックできる点が画期的だ。 

共同研究に携わったEPFLのシルヴェストロ・ミチェラ教授は、「位置情報と触覚の両方を同時にリアルタイムでフィードバックできる」と説明する。 

「脳はこれらの情報を全く問題なく組み合わせられるため、患者は高い確率で両方の情報をリアルタイムで処理できる」とミチェラ教授は言う。 

研究結果は国際的科学雑誌「サイエンス(Science)」誌の工学系姉妹ジャーナル「サイエンスロボティクス外部リンク(Science Robotics)」に掲載された。これまでに手を失った2人の被験者が新開発の義手を使って神経パルスを伝達するトレーニングを受け、約75%の確率で4つの物体の大きさと形を確定できた。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

研究施設で働くマスク姿の人

おすすめの記事

スイスに感染症情報解析センター発足

このコンテンツが公開されたのは、 感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。

もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む
ベルジエ報告

おすすめの記事

「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱

このコンテンツが公開されたのは、 スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。

もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
整備中の飛行機

おすすめの記事

スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠

このコンテンツが公開されたのは、 スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。

もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
署名の入った箱

おすすめの記事

国民投票に向けた署名がまたも偽造

このコンテンツが公開されたのは、 医療品の安定供給を求める国民投票に向けて集められた署名のうち、3600筆以上が無効な署名だったことが明らかになった。

もっと読む 国民投票に向けた署名がまたも偽造

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部