スイスでも花粉症が増えている
© Keystone / Gaetan Bally
スイスではこの100年間で、アレルギー患者が劇的に増加している。原因は様々だ。空気がきれいでアレルギーとは無縁だったはずのスイスアルプスでさえも、今や花粉症の脅威が迫っている。
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スイスのアレルギー患者は、1900年で総人口の1%にも満たなかった。それが100年後の現在は約25~35%に増えている。21日の「国のアレルギーデー」に伴い、アレルギー患者の支援団体「aha!スイスアレルギーセンター外部リンク」は意識啓発活動の一環でパンフレットを配った。
スイスでなぜこんなにアレルギー患者が増えたのか。同センターのベッティナ・ラヴァゾロさんは、西洋のライフスタイルに原因があると指摘する。
「多様で外国産も含む(食べ物の)メニューによって、様々なアレルギーの引き金となる機会が多くなった。また衛生基準が高くなり、ヒトの免疫システムと本物の病原体が接触することが減った。このため、免疫システムが無害な物質に対して体を守ろうと過敏に反応するようになってしまった」
環境汚染も一因だ。ラヴァゾロさんは「大気汚染物質も影響している。これらは花粉とくっつき、人間の気道に炎症を引き起こしかねない」
気候への影響
気候変動も花粉症患者が増えた理由の一つ。気温が上がるほど花粉の量が増え、飛散する期間が長くなるためだ。
ラヴァゾロさんは「気候変動が原因で、ハシバミ、カバノキ、セイヨウトネリコのシーズン開始が30年前より2~3週間早まっている」と話す。
19世紀、欧州中の上流階級が花粉症やぜんそくから逃れるため、空気のきれいなスイスの山々で過ごした。海抜1500メートルを超えると花粉が減少し、カビの胞子、ダニ、細かいほこりが少なくなるためだ。
ただこれにも黄信号がともる。例えばカバノキは、気温が上がるほど活動範囲の高度を上げる習性があるため、山中の花粉量が多くなることが考えられる。
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(英語からの翻訳・宇田薫)
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