スイスの科学者も、地球温暖化警告に立ち上がる
インドネシアのバリ島で12月3日に始まった、国連の「第13回気候変動枠組み条約締約国会議 ( COP 13 )」 で、スイスの10人を含む世界の200人の科学者が早急な温室効果ガス削減を訴える宣言を提出した
科学者たちは、この宣言の中で、2050年までに2009年比で50%の温室効果ガス削減を提示している。
この宣言に署名した10人のスイス人科学者のうち8人は、今年ノーベル平和賞を受賞した「気候変動に関する政府間パネル ( IPCC ) 」の第4次報告書の執筆に携わっている
最高で2度の気温上昇に抑える
10 人の科学者の1人、チューリヒ連邦工科大学 ( ETHZ/EPFZ ) の環境・気象研究所のレト・クネッティ教授によると、危険な気候変動を防止するための目標は「工業化以前より最高で2度の気温上昇に抑えることだ」という。
「この目標を達成したいなら、今後の10年間で二酸化炭素ガス ( CO 2 ) 排出量の増加を止めなくてはならない」
とクネッティ教授は警告する。
もし、今のままの調子でCO 2の排出が続けば、地球には暗い将来が待ち受けている。グリーンランドの氷山が解け、海面が最高6メートル上昇する。バングラデシュのような国々、ニューヨークや上海のような海岸の都市は海中に沈んでしまうといったシナリオである。
科学者たちも立ち上がる
今日まで科学者たちは、環境対策は政府の環境課に任せてきた。25カ国から集まった科学者たちが今回の宣言に署名したのは、「もうほってはおけない」というギリギリの選択を表していると、カナダのビクトリア大学のアンドリュ・ウイーバー教授は見る。
「問題は現在考えられている以上に深刻。根本的な対策が講じられるべきだ」
と語るのはコロンビア大学の観測所のリチャード・シーガー教授。
アメリカの国立環境研究所のマリカ・ホランド教授は
「対策は今ただちに講じられないと大変なことになる。待てば待つほど事態は深刻になる」
と苛立ちを抑えきれない表情だった。
swissinfo、外電
宣言に署名したスイスの10人の科学者
1.アンドレアス・フィシュリン、チューリヒ連邦工科大学 ( ETHZ/EPFZ ) 地球エコシステム科ディレクター
2.ジャックリン・フリュッキガー、科学研究者
3.ヨース・フォルトゥナート、大学教授
4.ニコラス・グルーバー、大学教授
5.ゲラルト・ハウク、大学教授
6.レト・クヌッティ、チューリヒ連邦工科大学 ( ETHZ/EPFZ ) 環境・気象研究所教授
7.ウルリケ・ローマン、大学教授
8.ジャン・カスパー・プラットナー、大学教授
9.クリストフ・シェル、チューリヒ連邦工科大学 ( ETHZ/EPFZ ) 環境科学学科教授
10.トーマス・シュトッカー、大学教授
スイスは2003年京都議定書に批准し、温室効果ガスの排出量を2010年までに1990年比で10%削減する目標を掲げている。
しかし、この目標達成は難しいと専門家の間では見られている。1990年、温室効果ガスの排出量は5330万トンで、2000年には5270万トンだった。
2000年5月、京都議定書の目標達成のため「二酸化炭素排出規制法」を発効。企業約1000社がCO2排出量の自主規制に乗り出した。
しかし、2005年には、自主規制だけでは不十分であることが分かった。だだし、規制強化の方法は難航している。
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