連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のキャンパス内にある学習施設「ロレックス・ラーニング・センター」
© Keystone / Gaetan Bally
スイスの名門校、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)とローザンヌ校(EPFL)が、留学生の受け入れに制限を設けるかどうかを検討している。ドイツ語圏大手紙NZZ日曜版が26日、報じた。
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ETHZとEPFLの統括機関である連邦工科大学(ETH)理事会の広報担当、ジャン・アンドリ・カズット氏はNZZ外部リンクに対し「ETH理事会は、留学生の入学条件について話し合う必要があるだろう」と述べた。
留学生に定員を設ける「ヌメルス・クラウズス」や、成績による選抜を導入する可能性もあるという。また、留学生の授業料値上げも視野に入れている。
現在はETHZやチューリヒ大学など一部の大学の医・歯学部や獣医学部、カイロプラクティック学部しか定員制をとっていない。
・高校卒業証明書(過去3年間の第一外国語、第二外国語、数学、自然科学、人文・社会科学、選択科目の成績を記載)
・EPFL:入学試験
・ETHZ:希望する学問分野の大学入学資格証明書(日本の大学が発行するもの)、入学試験
出典:スイス・ユニバーシティーズ 外部リンク
スイスの学生数はここ数年で増加の一途を辿っている。2022年のETHZとEPFLの学生数は合わせて3万7千人で、その半数を外国人が占めた。博士課程の学生に占める外国人の割合は8割と特に高い。NZZによると、昨年の修士課程でも、初めて留学生の数が過半数に達したという。
一方でETHとEPFLはコスト削減の圧力にもさらされている。カリン・ケラー・ズッター財務相は今年に入り、農業、文化、教育など様々な分野で予算の2%を削減すると発表した。NZZは、連邦工科大学への影響が特に大きいと指摘した。
カズット氏は「学生数が増え、予算が減る中で、教育の質を維持したいのであれば、対策を講じる必要がある」と述べた。
留学生がスイスの大学で学ぶのは難しい?
スイス学生連盟(VZZ / UNES)の共同事務局長、ルツィアン・フランツィーニ氏は、いかなる制限にも抵抗すると述べ、「ETHは誰もがアクセスできる存在であり続けなければならない」と断言した。
ETH理事会は来月8~9日に開く会合で、入学条件に関する議論に着手する。だがさまざまな団体を巻き込み、時間をかけて最終判断を下す方針だ。
英語からの翻訳:大野瑠衣子
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