スイスの視点を10言語で

マダニの媒介する新たな病気を発見 スイス研究

葉の上のマダニ 
マダニは、異なる病原体を原因とする複数の病気を併発させる可能性もある © Keystone / Gaetan Bally

マダニが媒介する病気はライム症や脳炎だけではなく、リケッチア症やアナプラズマ症といった病気にも罹る恐れがあることがチューリヒ大学の研究で分かった。 

チューリヒ大学疫学・生物統計・予防研究所外部リンクのパトリツィア・シュラーゲンハウフ教授は27日、スイスの通信社Keystone-SDAの取材で、これらの病気はマダニに刺された患者への診察では通常は検査されないと説明した。「このため診断がつかず、必要な治療を受けないことが多い」 

ダニ媒介性脳炎と並びマダニの媒介する感染症として最もよく知られるライム症(ボレリア症)に罹った患者の血液を分析したところ、検体の54%にリケッチアという病原体、10%にアナプラズマ・ファゴサイトフィルム菌が含まれていることが分かった。研究結果は科学誌「New Microbes and New Infections」に掲載された。 

リケッチアは発熱や頭痛を伴うリケッチア感染症を、アナプラズマ菌はインフルエンザに似た症状や発熱、頭痛、痛み、吐き気を伴うヒト顆粒球性アナプラズマ症を引き起こす可能性がある。免疫不全の患者では死に至るリスクが高まる。 

シュラーゲンハウフ氏は「これほど沢山の病原体がみつかるとは予想していなかった」と語った。研究チームはマダニに刺された場合にはこれらの病気を念頭に置くよう注意喚起する。筋肉痛や頭痛、持続的な疲労など症状のある患者は特に注意を払うべきだという。 

マダニは異なる病原体を原因とする複数の病気を同時に媒介することがある。脳炎はウイルス性疾患だがライム症やリケッチア症、アナプラズマ症は細菌性だ。 

英語からの翻訳:ムートゥ朋子

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

自転車で遊ぶ子ども

おすすめの記事

スイス政府、国際養子縁組を禁止へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は29日、国外から子どもを迎える国際養子縁組を将来的に禁止する意向を表明した。虐待防止措置の一環としている。

もっと読む スイス政府、国際養子縁組を禁止へ
生殖治療の画像

おすすめの記事

スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は29日、生殖補助医療法を改正し、カップルに対する卵子提供を合法化する方針を発表した。政府はまた既婚・未婚問わず全てのカップルへの精子・卵子提供を解禁する意向を示した。

もっと読む スイス、全てのカップルへの精子・卵子提供を合法化へ 政府方針
研究施設で働くマスク姿の人

おすすめの記事

スイスに感染症情報解析センター発足

このコンテンツが公開されたのは、 感染症に関する情報を収集・解析する「病原体バイオインフォマティクスセンター(CPB)」が23日、スイスの首都ベルンに新設された。集約したゲノムデータを管理・解析し、スイスの感染対策を改善する役割を担う。

もっと読む スイスに感染症情報解析センター発足
茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む
ベルジエ報告

おすすめの記事

「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱

このコンテンツが公開されたのは、 スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。

もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
整備中の飛行機

おすすめの記事

スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠

このコンテンツが公開されたのは、 スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。

もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部