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新型コロナ治療法 開発急ぐスイスの研究者

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすSARS-COV-2に感染した細胞のカラー写真。走査型電子顕微鏡で撮影 Keystone / Niaid/national Institutes Of Hea

新型コロナウイルスの「ホットスポット(一大感染地)」の一つとして感染拡大が続くスイス。一方では、スイスの科学者や製薬会社が治療法やワクチンの開発をめぐる世界的な取り組みで大きく貢献している。

連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のフランチェスコ・ステラッチ教授は、「科学界はSARS(重症急性呼吸器症候群)がアウトブレイクしたときよりも遥かに効果的にCOVID-19に対応してきた」と言う。

過去10年来、広域スペクトルの抗ウイルス薬(広く可能性のある菌種に対して抗菌活性を有する薬)の開発に携わるステラッチ教授は、今回は非常に迅速にデータが共有され、誰もが協力し合ったとEPFLが公開したインタビュー外部リンクで述べている。

「研究範囲を拡大し、全てをオープンに共有することの重要性を科学界は真に理解していた」

そしてその連携は実を結びつつある。中国の保健当局が昨年12月31日、武漢で発生した原因不明の肺炎患者41人のクラスターについて世界保健機関(WHO)に最初に報告してから、わずか3カ月。このような短期間にもかかわらず、研究者サイドからは既に数多くの進歩が報告されている。

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このコンテンツが公開されたのは、 スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。

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これまでの進歩、そして新たな提案への呼びかけ

ベルン大学病院の免疫学科は、1月にワクチンの開発に着手した。ウイルスの最初の配列の分離はすぐに成功し、既にワクチンの動物実験が実施された。

一方、バーゼル・シュタット準州にある民間研究所の免疫学者ペーター・ブルクハルト氏も、既に動物実験済みのCOVID-19ワクチンの試験品を開発し、現在、自分自身に接種して経過を観察している。

スイス国立科学財団(SNSF)は2月25日、「現在の危機に取り組み、将来起こりうる流行に備えるために」新型コロナウイルスの研究に関する提案を緊急に呼びかけた。これを受け、今後パイプラインではさらに多くの研究が行われる模様。同プロジェクトには500万フラン(約5億5485万円)が割り当てられた。

SNSF初の異例の呼びかけに対し、220件の申し込みがあった。プロジェクトの大部分は、ウイルスと感染症、人間の免疫反応、および病気の蔓延に関する研究を含む生物医学的な内容だった。

その中から選ばれたプロジェクトは、「今後の有効成分の工業開発の基礎を構築するだろう」。各プロジェクトには5万~30万フランの助成金が出る。


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予防接種でウイルスに対抗

新型コロナウイルスに対抗する最善策はワクチンによる予防だが、新しいワクチンの開発には最短でも18カ月かかる。そのためステラッチ教授は、広域スペクトルの抗ウイルス薬がそれまで時間稼ぎをしてくれる可能性があると言う。

新型コロナ感染症を治す「魔法の薬」は、開発を急ぐ研究者たちにとって未だ叶わぬ夢だが、たとえ効果の弱い薬でも社会には有益になるとステラッチ教授は説明する。

「これまでのデータから、新型コロナウイルスに感染した人は平均して2.6人に移すことが分かっている。効力が50%の薬でもこの値を1.3に抑えるため、ウイルスの拡散が確実に遅くなるはずだ」

既存の薬物の転用

また、ある病気の治療に開発された薬が、別の症状に効くことはよくある。チューリヒに本社を置くリリーフ・セラピューティクスは、勃起不全の治療薬として承認されている「アビプタジル」が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療にも役立つことを発見した。

新型コロナウイルス感染症の主な死因はARDSで、肺に水がたまり、重度の呼吸不全が引き起こされる。アビプタジルは既に特許取得済みだ。

リリーフ社は3月26日外部リンク、米国の医薬品開発会社NeuroRxと共同し、米国食品医薬品局(FDA)に新薬の申請を行ったと発表。アビプタジルを、新型コロナウイルスに感染した患者の急性/中程度の呼吸窮迫の治療薬として評価する第2相試験(フェーズ2)の段階の申請だ。

またスイスの製薬大手ロシュは3月19日 、同じく既存の薬剤を転用し、COVID-19の新しい潜在的な治療薬として臨床試験を開始すると発表した。ロシュはFDAと米国政府と協力し、2種類の炎症性疾患の治療に使用される薬「アクテムラ」の安全性を評価する第3相試験を開始する。この薬は米国以外では「RoActemra」の称号で知られる。開始は4月を予定し、米国を含む世界中の患者約330人で臨床試験が行われる。アクテムラは、体の過剰な免疫反応を抑える働きがある。

抗体の検出

その一方で、スイスの複数の大学病院では(チューリヒ、ローザンヌ、ジュネーブ、ザンクト・ガレン)、血液中に作られたCOVID-19の抗体を検出するため、血清学的検査の準備を進めている。

検査の目的は、すでに病気に対して免疫のある人が、国民の中にどれだけの割合で存在するか確かめることだ。その比率が高いほど、感染症の第2波に立ち向かうバリアが強くなる。

「今日私たちが知っている感染者数は、症状が出て検査を行った人をベースにしているため、実際の正確な分母は不明だ。コロナ危機の全体像をより的確に把握するためには、この数値がわかると有用だ」とローザンヌ大学病院の微生物学部のギルバート・グリューブ氏はフランス語圏のスイス公共放送(RTS)に語った。

このように、あらゆる方面から数多くの手段が同時に追求されてはいるが、現在の差し迫った問題を薬物やワクチンで迅速に解決することはできない。ステラッチ教授は、このストレスの多い時期に、国民の期待を管理することも重要だと強調した。

「今、自分たちが取り組んでいること、直面している課題、そしてそれにかかる時間について、我々研究者はもっと明確に伝えるべきだ。さもなければ誤った期待を持たせてしまう」

(英語からの翻訳・シュミット一恵)

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