ネズミの評判はとんと悪いが、実はとても賢く、訓練が可能で、過敏な嗅覚を持っている。地中の地雷をかぎ分けたり、致命的な病気の結核を検知したりできる。つまり、ネズミは人の命を救うことができるのだ。
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非政府組織「APOPO外部リンク」(本部・ジュネーブ)は、年間予算の3分の1にあたる450万フラン(約4億9500万円)を、国内の個人・団体から寄付として受け取っている。同NGOは1995年、ベルギーの科学者バート・ウェートジェンス氏が設立。ネズミを訓練し地雷探知、結核のスクリーニングに役立てようというアイデアを発案した。
2018年11月の調査によると、対人地雷が埋設された国は56カ国、4地域に及ぶ。APOPOは現在、カンボジアとアンゴラで地雷除去プロジェクトを実施し、コロンビアとジンバブエとも新しい契約締結に向け交渉中だ。 同団体などの活動により、モザンビークは2015年、地雷の完全撤去に成功した。
嗅覚を鍛える
タンザニアにある同NGOの専門トレーニングセンターでは、地雷に使われた20種類の物質を探知できるようアフリカオニネズミを訓練している。訓練は約9カ月、1匹あたり5千フラン以上の費用がかかる。ただ、えさ代、繁殖、輸送代が安く済むのがメリットだ。
地雷を検出する方法は他にもある。例えば金属探知機などを装着した人間、訓練を受けた探知犬、車両などだ。ビーグル犬は広い場所ならネズミより速いかもしれないが、APOPO財団のイヴ・エルヴュー・コウス会長は、草むらならネズミの方が効率的で、訓練も犬よりわずかに簡単だと説明する。
臭いをかぎ、ひっかく
アフリカオニネズミは小さなハーネスを着け、ロープに沿って行ったり来たりし、地雷をかぎ分けると止まって地面を引っかく。ネズミの体重はとても軽いため、地雷が爆発するリスクがない。スイス公共放送局(SRF)は、カンボジアで地雷探知に当たるネズミたちを撮影した。ここは地雷問題が世界で最も深刻な地域の1つ。過去30年間の戦争の遺産でもある。
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多目的なネズミ
「ヒーローネズミ外部リンク」というニックネームが付いたこのネズミは、ヒトの唾液を嗅いで結核を検出できるよう訓練されている。科学者なら診断に1日かかるところを、ネズミはわずか7分。結核の疑いがある検体は、世界保健機関(WHO)承認の検査で確認する。
人道的目的のネズミ利用はメリットがあるのに、この動物に対する偏見を取り除くのは難しいという。APOPOによると、ネズミは病気を伝染させる恐れがあるとして、カンボジア当局から地雷探知用ネズミの許可が出るのに6カ月もかかった。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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