使い捨てプラ製品、スイスは独自に対策
欧州連合(EU)で3日、ストローやカップなど使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する新規制が施行された。非加盟国のスイスでは、小売店やレストランが独自の取り組みを行う。
禁止の対象となるのは日常的に利用されるフォークやナイフ、箸などのカトラリー、皿、綿棒のプラスチック製の軸、発砲ポリスチレン製の食料・飲料用容器、そしてオキソ分解性プラスチック製の全製品。一部の製品は全面的に使用禁止となるが、その他の製品は適切な廃棄方法や、プラスチック製品が環境におよぼす影響を消費者に知らせるラベル表示が義務付けられる。
EUは声明で環境政策に関し、「使い捨てのプラスチック製品は、再利用可能な製品よりも海洋に流れ出る可能性が多い」ことから、「価格が手頃かつ容易に入手できる持続可能な代替品がある以上、使い捨てプラスチック製品はEU加盟国の市場に出すことはできない」とした。
声明によると、使用頻度の高い使い捨てプラスチック上位10品が、欧州の海岸で見つかるごみの7割を占める。スイスは内陸国だが、レマン湖のマイクロプラスチック汚染が地中海と同程度に達するなど、問題は深刻だ。非加盟国のスイスにEUの新規制は適用されないものの、対策強化を求める声が上がっている。
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連邦環境省(FOEN)の廃棄物課のアマンダ・フィンガー氏はswissinfo.chに対し、「スイスでは現在、使い捨てプラスチック製品を禁止したり、ラベル表示を義務付けたりする計画はない」と語った。
しかし、スイスでは来年からオキソ分解性プラスチックの使用を禁止する予定だという。このようなプラスチックは「生分解性」と表示されることが多いが、専門家によると、マイクロプラスチックになり土壌や水に入り込むことがある。
フィンガー氏によると「環境省は、プラスチックによる環境負荷削減にはどのような対策が可能か、報告書を作成中だ」。また、「水や土壌に含まれるプラスチック廃棄物を減らす」という動議を受けて、連邦議会は政府や関連業界に対し、「主な排出源を含め、プラスチックによる環境汚染に包括的かつ効果的に対処するための対策を検討し、実施する」ことを求めている。ただし、動議は禁止を求めるものではない。
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小売店とレストラン
スイスの小売業界は、自主的に対策を講じている。スーパー大手ミグロは2020年にカップ、皿、カトラリーなど使い捨てプラスチック製品の販売を中止し、代わりに紙、パームヤシの葉、バイオプラスチックなどを使用した製品の販売を開始した。
スーパー大手のコープも同年、サラダやミューズリーなどの製品に同封していたプラスチック製の使い捨てカトラリーを廃止。また、テイクアウト商品を購入した消費者に向けたプラスチック製の使い捨てカトラリーの無料提供も廃止した。
コープの広報を担当するメラニー・グリューター氏はswissinfo.chに対し、「当社がサステナビリティ戦略の一環として行っているこの取り組みで、年間約200トンのプラスチックを節約することができる」と述べた。
外食ホテル協会「ガストロスイス」は、廃棄物を「避け、減らし、再利用もしくはリサイクルする」という戦略を支持している。
ガストロスイスの広報担当ダニエラ・キミッヒ氏はswissinfo.chに、「スイス経済の対策は自発的な行動に基づいており、その価値が証明できている。プラスチック製品の使用が禁止されても、手頃な価格で十分な代替品が入手できるのであれば、ガストロスイスにとっては問題ない」と語った。
続くポイ捨て
スイスを拠点とするポイ捨て防止団体「トラッシュ・ヒーロー・ワールド」の代表を務めるラヘル・シャウブ氏は、スイスもEUと同様、使い捨てプラスチックの使用を禁止することが正しい方向への第一歩になると考える。同団体は国内各地で清掃活動を行っているが、見つかるゴミの大部分は使い捨てプラスチックだという。
「この問題を解決するには一人ひとりの努力が必要。プラスチックを製造したり、製品を包装したりする企業にも努力が求められる。パッケージを省いたり、デザインを変えたり、代替品に変えたりするようになるには、適切な法律を制定する必要があると思う。このタイプの約束はこれまでに実現されていないか、あまりにも遠い未来の話になっていたりする」
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