スイスの視点を10言語で

外国人への雇用差別 スイスの研究で明らかに

机で話しをする男性と女性
研究では、時間帯も重要なことが分かった。外国人求職者は、昼休みや夕方に履歴書を送った場合、採用担当者から連絡を受けることが比較的少なかった © Keystone / Christian Beutler

同一の要件を満たすスイス人と外国人求職者では、外国人の方が採用担当者から連絡を受ける可能性が平均して6.5%低いことが、スイスの研究で分かった。

採用時の差別に関する調査研究の多くはこれまで、採用担当者に架空の履歴書を送るなどの方法が用いられてきた。ただこれらの方法には一般的に費用が掛かる上、特定の求職者の分析しかできないデメリットがあった。

調査研究は連邦工科大学チューリヒ校景気調査機関(KOF)の研究者が中心となって実施。求人サイト上における採用担当者の検索行動の追跡と、採用担当者が閲覧可能な全求職者の特性を機械学習で管理する手法を組み合わせ、差別の実態を調べた。論文外部リンクは20日付の科学誌ネイチャーに掲載された。

経済省経済管轄庁(SECO)の協力を得て10カ月間、国内最大規模の求人プラットフォーム「Job-Room」上の匿名データにアクセスした。SECOが管轄するJob-Roomには、求職者15万人以上の性別、国籍、年齢などの情報が掲載されている。

論文共著者のダニエル・コップ氏(KOF)は「私たちの手法は、異なる職業や時点での差別を研究し、プラットフォーム上での検索プロセス全体を分析することが可能」と言う。「採用担当者にどの候補者が表示されているのか、採用担当者が1つのプロフィールをいつ、どのくらいの時間見ているのか、また連絡先ボタンをクリックしたかなどを知ることができる。そのような採用時の意思決定を何百万回も観察している」

無意識のバイアス

その結果、採用担当者による求職者への接触率は、移民や少数民族だと4~19%低い(平均6.5%)ことが明らかになった。ただ、求職者の出身国によっても違いがあり、特にバルカン半島、アフリカ、中東、アジアからの移民に対する差別が顕著だった。

研究ではまた、時間帯も重要であることが分かった。採用担当者が履歴書に目を通す時間が短くなる正午から夕方にかけては、外国出身という要素はよりネガティブな影響を及ぼすという。

共著者のドミニク・ハンガートナー氏は「この結果は、少数派に関する先入観など、無意識のバイアスも差別に関連していることを示している」と話す。このような無意識のバイアスは、疲れているときや仕事を辞めたいときに、より大きな影響を与えている可能性があるという。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

茶色い除湿器

おすすめの記事

ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。

もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
Xマークの画面

おすすめの記事

スイスでX離れ進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。

もっと読む スイスでX離れ進む
ベルジエ報告

おすすめの記事

「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱

このコンテンツが公開されたのは、 スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。

もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
整備中の飛行機

おすすめの記事

スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠

このコンテンツが公開されたのは、 スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。

もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
署名の入った箱

おすすめの記事

国民投票に向けた署名がまたも偽造

このコンテンツが公開されたのは、 医療品の安定供給を求める国民投票に向けて集められた署名のうち、3600筆以上が無効な署名だったことが明らかになった。

もっと読む 国民投票に向けた署名がまたも偽造
エリック・ヘンニさん

おすすめの記事

スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

このコンテンツが公開されたのは、 1964年東京オリンピックで銀メダルを勝ち取ったスイス人柔道家のエリック・ヘンニ(Eric Hänni)さんが25日、86歳で死亡した。スイス柔道・柔術協会が発表した。

もっと読む スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部