中国で発生した新型コロナウイルスは31カ国に感染が広がっている。世界保健機関(WHO)の担当部局の責任者は、中国政府や影響を受けた他地域の当局の抜本的対策によって食い止めは可能だと語った。
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2019-nCoVと特定された同ウイルスの感染者は2万8千人以上に上り、その約99%は湖北省武漢市だ。他の31カ国・地域でさらに260件の症例が報告されている。死亡者は中国国内で少なくとも563人、香港で1人、フィリピンで1人となっている。
WHOの世界的な感染症対策部門の責任者シルヴィ・ブリアン氏は最近、テドロス事務局長と北京を訪問。習近平国家主席や保健当局と会談した。
ブリアン氏は、現状をパンデミック(大流行)ではなく「複数の病巣」を伴う流行だと説明する。しかし、ウイルスの感染拡大を止めることはできると確信する。
「もちろん、これだけ人の移動が多く、ウイルスが急速に拡散している中では難しいだろう。簡単ではないが、できると信じている」
中国政府は劇的な「緩和策」を導入。人口6千万人の湖北省と武漢を事実上封鎖した。感染例が報告されている他地域は、「第2の湖北」を防ぐための対策に力を入れている。
「戦場」
一方、ブリアン氏によると、中国以外の国々では「感染の早期検知」、「早期隔離と治療」、「接触者の追跡」などの対策を行っている。
「先週、中国は『戦いに勝てる』と断言した。だが状況は急速に変化している」とブリアン氏は話す。 「現在、多くの『戦場』があり、それぞれの状況は場所によって非常に異なる。世界的な様相は多様だ。幸いにも、影響が出た国のほとんどは優れた医療システムがあるため、各自で対処できると考えている。それでも複雑だ」
テドロス氏はジュネーブで行われたWHO執行理事会で、猛威を振るう新型コロナウイルスが世界的な危機に発展するのを食い止める「好機」が生まれていると語った。
ブリアン氏は「感染が拡大している中国以外の場所であっても、ウイルスや接触者を追跡できる状態にあり、すべての感染者がほかの人に移さなければ、拡大は防げる」と話す。「中国国外には出たが、完全にコントロール不能になったわけではない」
不明確な部分はいまだ多く
WHOは、インフルエンザに似たこのウイルスについて世界的な緊急事態を宣言したが、専門家によると、死亡率や感染経路など、多くのことがまだはっきりしていない。
ブリアン氏は「我々は今それを調べているところだ」と語る。 「遺伝学的には、おそらく重症急性呼吸器症候群(SARS)とインフルエンザの間だろう。重症度に関しては、中国国外の死亡者は2人と非常に少なく、あまりはっきりしない。症例が集中する中国国内では少し高くなるが、死亡率は低下している。当初の予想より深刻ではない」
新型コロナウイルスは今のところ「かなり安定したウイルス」だという。
また、死亡・重症者の大半はがん、糖尿病、免疫系疾患などがある人か、高齢者だったと述べた。
ブリアン氏は、中国国外での死亡者数が少ないのは、旅行者の多くが若年層であることが影響しているとみる。
誰もが最善を尽くしている
一方、中国政府の初期対応や危機管理体制に関しては、疑問の声が挙がっている。
ブリアン氏は「誰もが最善を尽くしている」と主張。 「彼ら(中国当局)はWHOに対して、隠し事のない態度で接してきたと私は思う。ウイルスが発生してすぐ、ゲノム情報を共有してきた」
ブリアン氏は、中国政府が2002年のSARS流行から教訓を得たと考えている。
「中国は、自身が設立した疾病監視システムのおかげで、湖北省での症例を検出できた。非常に早い時点で我々は連絡を受けた。通常とは異なる5つのケースが見つかってすぐ、中国はWHOに報告を上げている。彼らはこのウイルスを発生時にとらえることができた」
「特に困難だったのが、インフルエンザのシーズン真っ最中だったこと。病院には多くの肺炎患者がみられたが、ほとんどはコロナウイルスではなく他のウイルスが原因だった」
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