スイスの名峰マッターホルンを入山禁止にするべき― ベテランガイドは安全上の理由からこう話すが、他の専門家からは強い反対の声が上がっている。ドイツ語圏の日刊紙ターゲスアンツァイガー日曜版が報じた。
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きっかけはマッターホルンで2019年7月24日に起こった落石による死亡事故だ。同紙によると、死亡した登山ガイドと登山客の遺体を事故現場から回収した救助隊もまた、高い落石リスク危険にさらされていた。6月上旬にも同様の事故で英国人が命を落としている。
スイス南部ヴァレー(ヴァリス)州にある4000メートル峰のマッターホルンはすでに今年だけで6人の命を奪った。
「現在の山の状態が不安定過ぎることから、毎日何十人もの登山客が観光目的でのぼるには危険すぎる」。登山ガイドの一人はターゲスアンツァイガーに対しこうコメントしている。
落石事故の原因は定かではないが、地質学者で自然災害専門家のハンス・ルドルフ・コイゼン氏(スイスアルペンクラブ/SAC外部リンク所属)は温暖化が「高い確率で」要因の一つとなっているという。コゼイン氏は「どんどん高い場所で永久凍土が溶け始めている」と話す。
コイゼン氏によると、標高2500メートル以上の場所は夏の間、ますます危険な状態になりつつあるという。ただマッターホルンを入山禁止とする意見には反対で、登山はあくまで個人の責任だと強調した。
ヴァレー州の自然災害担当ラファエル・マヨラ氏もまた、マッターホルンの入山禁止は「ばかげている」という。結局のところ登山はごく私的な活動であるとし、「自治体が登山者にリスクに関する情報を提供すれば十分だ」とターゲスアンツァイガーに語っている。
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(英語からの翻訳・大野瑠衣子)
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先週末には日本人男性を含め、少なくとも5人がアルプス山脈で死亡する事故が起きた。そのうち2人はスイス人男性でそれぞれ別の山で転落死、他2人は4日から行方がわからなくなっていた英国人男性で、彼らはマッターホルンで凍死しているのが発見された。
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