ガドリニウム、ホルミウム、イッテルビウム。これら三つの元素の共通点は何か?元素の周期表が誕生して150年が経った今、スイス人化学者が発見した元素の働きや特徴を見てみよう。
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1869年3月6日、ロシア人化学者ドミトリ・メンデレーエフは当時見つかっていた63個の化学元素を分類する画期的な一覧表をロシア化学協会に発表した。今日では118個に増えた周期表外部リンクは、原子番号や電子の配置、化学的性質によって配列されている。
だがそれから50年ほどの間、いくつかの元素は表から除外されていた。分離技術がなく、純度が足りずに識別できなかったためだ。多くはレアアース(希土類元素)のうちの、原子番号 57から 71までの 15元素の総称ランタノイドで、三つの「スイス発」元素もその一部だった。
ジュネーブアカデミー(1843年にジュネーブ大学に改変)で化学を教えていたジャン・シャルル・ガリサール・ド・マリニャックは1878年にイッテルビウム(Yb)、80年にガドリニウム(Gd)を発見した。また多くの元素について原子量を正確に計算。これらの功績で1886年、マリニャックは重要な発見をした化学者に贈られるデービーメダル外部リンクを受賞。メンデレーエフが同じ賞を受賞した4年後のことだった。
1878年、マリニャックの教え子ジャック・ルイ・ソレとマルク・ドラフォンテーヌがホルミウム(Ho)を発見。2人とは別に、スウェーデンの化学者ペール・テオドール・クレーベが同じ時期にホルミウムを発見し、分離・識別に成功した。
それではガドリニウム、ホルミウム、イッテルビウムを詳しく眺めてみよう。
三つの元素はいずれも、中国、ロシア、マレーシアで最も多く産出される。保有者トップは中国、CIS(ロシアを含む)、米国だ。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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