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高校ランキングにピリピリ

生徒の成績ではなく、高校の成績が問われたETHのランキング Keystone

連邦工科大学チューリヒ校が、高校のランキングを発表した。ランキングは同校に就学する学生の成績を基に出身校をランク付けるもの。競争はしないというスイスの教育界のタブーを破った。

どの高校が優秀な理数系の生徒を大学に送り出し、どの高校ができの悪い生徒を卒業させているかということが分かるランキングは、アメリカやイギリスでは普通に行なわれてきている。しかしスイスではこうした比較はこれまで避けられてきた。そもそもスイスでは、高校の卒業試験に合格することで大学への進学資格を取得するという制度が敷かれ、大学入学試験はない。

高校はピリピリ

 ランキングを発表した連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ ) は、高校間での競争を煽るのが目的ではないと前置きする。ランキングは成功を収めている学生が持つ共通の一般的要素を提示することで、将来、学生たちを成功に導くための手掛かりになるようにという主旨で作られたという。

 しかし、ETHZの学長室秘書クリストフ・ニーダーマン氏は、落第生を送ってくる高校へのメッセージでもあることを認める。
 「高校は卒業生が ( 大学で ) 何をしているのかということを知る必要がある。そのための唯一の方法がランキングだ。一部のエリート校と自負する高校が、今回中級と評価されている。そういった高校は、エリート校でない高校でも頑張っている高校のように頑張らなければならない」
 
 ランキングリストは確かに、中級以下と評価された高校の神経を逆なでした。チューリヒの某校はこのランキングが、ETHZは特別で、ほかの大学はより多くの評価観点が必要であり、ETHZが科学専門という観点から高校を比較することに疑問を投げかけ、このランキングを批判した。

 スイス教育委員長州合同会議 ( EDK/CDIP ) は、このランキングの対象になったのは全国にある160校のうちの60校であり、一部のこととして見るべきだという。しかも、評価は高校を卒業してからの成績であり、高校の教育を対象としていないとも指摘する。
「データは、各高校が出す高校卒業資格の一般的な質の指標にはなりえない。また、スイスには学校を比較する文化はない」
 とEDK/CDIPの広報担当者ガブリエラ・フックス氏は言う。

高校よ、目覚めよ

 一方で、関係者の中には、大学が国際競争にさらされている限り、優秀な生徒を取り入れようとするのは当然で、高校ランキングが制度として取り入れられるのは時間の問題と見る向きもある。大学そのものが、世界の企業のニーズに応え、優秀な卒業生を輩出しなければならないというプレッシャーにあることも現実だ。

 スイスの技術分野では、約3000人の専門家が不足している。これは、理数系に進む学生が少ないことが理由だ。スイスの大学と国外留学生を仲介する「スイスラーニング ( Swisslearning ) 」のディレクター、クリストフ・クラヴァ氏は
「学校間の競争はタブーだ。しかし、グローバル化は進みスイスも競争に強くならなければならない」

「ランキングが客観的で、信頼できる科学的分析に基づくのであれば、関係者を目覚めさせ、考えさせるために良いことだ」
 と語る。

swissinfo、マシュ・アレン 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ ) は、2004~2007年までの5216人の学生の成績を分析しその結果を発表した。
学生の成績とその人の出身校や卒業資格別で比較したところ、一般的に卒業試験の点数が高かった学生はEHTZでも引き続いて成績が良いという。若い学生で、高校卒業後直接ETHZに入学した人ほど、その後の試験の成績も良く、理数系の学生は経済学部でも成績が良いという結果が出た。
今回の報告ではスイス全国にある高校のうち60校のランキングも発表された。

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