「女性・平和・安全保障指数」は2017年に初めて公表され、世界167カ国の女性の地位をさまざまな尺度で指標化している
© Keystone / Martial Trezzini
スイスは雇用や安全、政治面で女性が生きやすい国だ。米欧の研究機関が167カ国を対象に算出した指数で、スイスはノルウェーに次ぎ第2位の高評価を得た。
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2019/10/30 12:35
ジョージタウン女性・平和・安全保障研究所とオスロ平和研究所が22日公表した「女性・平和・安全保障指数外部リンク 」によると、スイスは公共の場で女性が安全だと感じており、近親者から暴力を振るわれる女性の報告事例も少なく、安全面で優れていると評価した。
スイスは女性が銀行口座にアクセスしやすいことでも高得点を得た。一方で女性の就業率は58.9%と、指数が初めて発表された2017年から2ポイント下がった。
指数は家庭やコミュニティ、社会における女性の幸せと地位向上をより広範に測るため、国際データをもとに算出した。女性のインクルージョン(包摂)、公正、安全の3項目に焦点を当てている。
ノルウェーとスイス以外でも、多くの欧州諸国は高い評価を得た。イエメンやアフガニスタン、シリアは低い評価だった。
両研究所は、約50カ国で安全度が悪化しており、女性の生活水準の低下をもたらしていると指摘する。一方で女性が金融サービスを受けられたり、性差別的な法律が減ったり、女性議員が増えたりして女性のプラスとなっている事実もある。
指数策定の責任者ジェニ・クルーグマン氏はロイターの取材に「国政選挙は大きな変化をもたらすが、良い方向にも悪い方向にも変わりうる」 と語った。「国政レベルで女性議員の割合が飛躍的に伸びた国もたくさんあるが、逆方向に変わった国もいくつかある」
スイスは今回の指標で女性議員の割合は平均的なスコアだったが、次回の指標では改善が見込まれる。20日の総選挙で下院は200議席中過去最高の84議席を女性議員が獲得 し、女性比率は42%になった。6月の女性ストライキ 以降、スイスでは女性の地位向上を目指す機運が高まっている。
一方、企業経営における女性の活躍や賃金格差などではまだ評価が低い。世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数2018年版で、スイスは20位に甘んじている。
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