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バイリンガル学校が外国人就労者の子どもを救う?

地元の子どもは誰だろう?地元の学校に通うスイス駐在外国人の子どもが今後増加するかもしれない Keystone

チューリヒ州で来学期より導入される新規定により、スイスに駐在する外国人の子どもたちがインターナショナルスクールに入学できない可能性が出てきた。

そこで、スイス独自のカリキュラムだけでなく国際的に通用するカリキュラムも提供する学校が、入学できない子どもたちの誘致を試みている。

 今後、子どもを地元の公立学校に通わせることを余儀なくされる外国人の親たちにとって、そうした2カ国語のカリキュラムを提供する学校は救いとなるかもしれない。

 チューリヒ州教育局は昨年9月、外国人融和政策の向上を掲げ、2012年8月に始まる来学期から、インターナショナルスクールの入学を制限する新規定を導入することを決定した。

 この規定は、チューリヒ州への滞在が一時的であること、もしくは子どもがこれからもドイツ語以外の教育を受け続けることを証明できない場合は、外国人の子どもも地元の公立学校に通わなければならないと定めている。

 すでにインターナショナルスクールに通っている子どもたちには、この規定は適用されない。しかし、チューリヒの外国人社会は困惑している。

 チューリヒにどのくらい滞在するかがはっきりしない外国人就労者にとって、自分の子どもが国際社会で通用する教育を受けることができない、ということは実に受け入れがたいものだ。

争奪戦

 ほとんどのインターナショナルスクールではドイツ語も教えているが、国際バカロレア(世界共通の大学入学資格)の取得を目指すカリキュラムがいまだ中心となっている。特にここ数年、スイスにやってくる外国人就労者が増加したことから、インターナショナルスクールはチューリヒだけでなくほかの地域でも大人気を博している。

 中には増え続ける需要に対応するために、キャンパスを拡大したり、敷地が広いところに移転したり、増築したりしている学校もある。「チューリヒ・ファイナンシャル・サービス(Zurich Financial Services)」を例とする数々の多国籍企業の間では、社員の子どもたちのためにインターナショナルスクールの入学許可争奪戦が繰り広げられている。

 「海外から優秀な人材を呼び寄せるためには、国際的な教育システムは必要不可欠だ」と言うのは、チューリヒ・ファイナンシャル・サービス人事部長ピーター・ライト氏だ。「子どもがインターナショナルスクールに入学できることが、スイスで仕事を引き受ける重要な条件の一つになっている」

 チューリヒ・ファイナンシャル・サービスはチューリヒ州にある二つのインターナショナルスクールと契約を結んでいるが、新たにスイスへやってくる社員の子どもがいずれかの学校に入学できるという保証はもうできなくなっている。しかし、勤務地を転々とする両親にとっては、ほかの国へ異動したときに備えて子どもが国際的カリキュラムを受けられるということは非常に重要だ。

融和への努力

 だが、インターナショナルスクールに通う地元の子どもたちが増加したことに危惧を覚えたチューリヒ州教育局長レギーネ・エプリ氏は昨年、公立学校からの生徒の流出を規制することを決定した。

 この新規定は、外国人がスイスに融和する努力を怠っているという地元の懸念を代弁したものでもある。

 これまでのところ、エプリ氏はこの決定の撤回を拒否している。しかし、この新規定が実際に予定通り施行されるかは疑わしい。チューリヒにある多国籍企業のロビー活動による圧力が強力だからだ。

 「外国人就労者はインターナショナルスクールにしか関心がない」。前出のライト氏はそう警告する。「地元の学校を援助する気などほとんど、いや全くないと言えるだろう」

 スイスの教育システムと国際的教育システムのギャップを埋めるモデルの一つに、バイリンガル校、すなわち生徒にどちらのシステムをも提供することができる学校がある。

 スイス・インターナショナルスクールの会(The Swiss International School Group)は、1999年からそのような学校サービスを提供しており、現在もその幅を拡大しつつある。

時代遅れのシステム

 こうしたバイリンガル学校の一つがチューリヒ市フライエ通り(Freiestrasse)にある。ここは中学生向けの学校だが、今後キャンパスをチューリヒ市郊外に移転して、幼稚園や小学校の施設を開校する予定だ。ヴォリスホーフェン(Wollishofen)にある既存のキャンパスは残されるという。

 この学校の生徒たちは国際バカロレア資格とスイスの「マトゥラ/マチュリテ(Matura/Maturité)」と呼ばれる大学入学資格の両方の取得を目指したカリキュラムを受けることができる。真新しい施設がツーク(Zug)にも建設中で、どちらの新キャンパスも今年秋の新学期に開校する予定だ。

 学校側は、このようなシステムは地域社会への融和を望む外国人生徒たちだけでなく、将来留学を希望する地元の子どもたちのどちらをも引き付けられるだろうと見込んでいる。

 チューリヒにある「タンデム・インターナショナル・マルチリンガル・スクール(Tandem IMS)」でも今年2月、既存の幼稚園に加えて小学校を開校した。スイスだけでなく国際的にも通用するカリキュラムに沿って、ドイツ語と英語で授業を行っている。

 「スイス在住の外国人駐在員の多くは、英語だけが使われる隔離された不安定な環境にいる」。そう語るのは、同校の設立者で校長のソニヤ・メヒラー・デント氏だ。「当校の生徒たちはスイスドイツ語に触れる機会もあり、地域社会や経済活動に参加することも可能だ」

 両親は共に英語を話し、教師としてチューリヒに移るまでフランス語圏のローザンヌで学校に通っていたメヒラー・デント氏は、さまざまな教育スタイルがあることを自ら経験してきた。

 「多文化が共存する共同体へと社会が変化しつつある今日、我々の掲げてきた教育思想は時代遅れになってしまった。全ての思想を一つの型にはめることなどできない。社会の要求は刻々と変化している。だから我々は選択肢と柔軟性を提供しているのだ」

スイスのインターナショナルスクール

スイス・インターナショナルスクールの会(SGIS)には40校が所属している。

ここ数年、外国人就労者とその家族が増加し、それに伴いインターナショナルスクールは定員数の増加を迫られている。

チューリヒ州にあるインターナショナルスクールに通う生徒数は計約3400人。これは州の全生徒数の約1.9%にあたり、2001年の0.9%から増加している。

最も規模の大きいチューリヒ・インターナショナルスクールは、5分校から成り、増加する入学希望者に対応するために校舎の増築も行った。現在生徒数は1400人を超え、5年前の2倍以上になった。

ジュネーブ・インターナショナルスクールでは2006年以降1300人増加し、現在の生徒数は4300人。

ヴィンタートゥール(Winterthur)、シャフハウゼン、アールガウ、ツーク、ザンクトガレン、フリブール/フライブルクのインターナショナルスクールでも、ここ数年増加する入学希望者に対応するため、次々と新校舎を建設したり移転や増築を行っている。

インターナショナルスクールでは通常、英語で国際バカロレア(世界共通の大学入学資格)の認定科目を教えている。

(英語からの翻訳、徳田貴子)

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