「クラブに行くんじゃない、学校に行くんだ」スイスの学校の服装規定とは?
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露出が激しすぎる服装で学校に行くのは「アウト」かー。みんなが軽装になる夏の到来で、スイスの学校にドレスコード(服装の規定)を設けるべきかという議論が浮上している。
6月初め、スイスの首都ベルン北部にある小さな町の高校が「学校にふさわしい服装」と題した通知を電子メールで生徒たちに送信した。だがメールを受け取ったのは女子生徒だけ。通知には、「こんな服装はだめ」と、胸の谷間を強調するトップスやホットパンツのイラスト、写真が載っていた。一部の女子生徒は地元メディアに対し、これは差別だと訴えた。イラストのオリジナル版には男子生徒の「ふさわしくない服装」もあったのに、意図的に省略されていたからだ。
問題の電子メール送信から1週間後、バーバラ・クンツ校長は地元紙ベルナーツァイトゥングに対し、「暑くなると必ず出てくる話題だ」と語った。クンツ校長は、服装が他の生徒にどんな影響を与えるのか、女子生徒たちに認識して欲しかったのだと話す。クンツ校長は今回のメールで「忘れないで。クラブやビーチじゃなく、学校に来ているのだということを」と呼びかけた。ただ新たな服装規定を設けるとまでは言わなかった。
個人の自由
スイス最大の教職員組織、ドイツ語圏スイス教職員組合(LCH)が公表した文書「服装規定に関する見解」によれば、LCHは「ローライズのデニム、(おへそが見える)クロップドトップス、厚化粧は法的に可能」という立場を取る。「衣服は個人の自己表現の一部であり、個人の自由の下で保障される。これは子供や若者にも当てはまる」とし、服装規定の明文化には否定的だ。
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しかし「絶対的な自由」は存在しない。フランス語圏スイス教職員組合(SER)のサミュエル・ローバッハ代表は「大事なのは、服装が刺激的でないこと。また他の学生や教師を不快にさせないこと」と話す。
どんな服装ならいい?
両組合ともに、学校に服装規定を設ければ、トラブル回避の手助けになると指摘する。しかしLCHは、こういう服装がだめだと言う細かい規定は望ましくないし、必要でもないと強調する。LCHは「どんな服装がふさわしくないかを内部で共有すれば十分」という立場だ。
ローバッハ氏は、仮に学校の規則を作るのであれば、専門家と教育委員会、教師の合意の上で策定されるべきだと主張。規定には一定の寛容さも必要だという。また円滑な運用を可能にするため、規則の内容は明文化されていなければならないという見方だ。
ローバッハ氏はまた、若者とのオープンな議論がこの過程において非常に重要な役割を果たすと話す。例えば職業訓練にふさわしい服装はどんなものかを話し合うのも、良い取っ掛かりになると語った。
ヒジャブはOK
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スイスでは長年、宗教的な服装の是非を巡り意見が分かれていた。その際たる例が、イスラムの女性が頭に巻くヒジャブだ。スイス連邦裁判所は2015年、生徒にヒジャブ着用を禁止することは合法だと主張したザンクト・ガレン州の学校に対し、ヒジャブは授業の邪魔にならないなどとして訴えを退けた。2017年にはヴァレー(ヴァリス)州議会が学校でのヒジャブ着用を禁じる案を否決している。
隣国フランスでは、自身の信仰を象徴するシンボルや衣服を身につけることは禁止されている。
学校の制服はどうか
服装規定ではなく制服を導入すれば良いという考えもある。だが両組合とも、それは解決策にはならないと話す。
LCHは服装規定についての文書で「(制服を導入することで)どれだけ肯定的な影響があるかは極めて漠然としており、個人の自由をはなはだしく侵害することにつながりかねない。制服を作るにしても、コストの規定が存在しない」と案じる。SERも、制服は実用的な処方箋(しょほうせん)ではないとしている。
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(英語からの翻訳・宇田薫)
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