バーゼルラント準州、生徒が教師と握手することを義務化
スイス北部バーゼルラント準州の学校で、ムスリムの兄弟2人が女性教師との握手を拒否した事件が4月に起きた。それを受け同州当局は25日、宗教を理由として生徒が教師との握手を拒否できないと判断した。拒否した場合は5千フラン(約55万円)以上の罰金が保護者に科される可能性があるとしている。
スイスの多くの学校では授業の始まりと終わりに、生徒と教師の握手が慣習となっている。しかし同州のテルヴィルの学校で4月の始めに、ムスリムである兄弟2人が女性教師との握手を拒否した。
国外でも大きく取り上げられたこの問題について、法的な審議を行っていた当局は水曜日、「宗教の自由」の原則にも関わらず、学校は生徒に教師との握手を求めることができると判断した。
さらに当局は、2人の兄弟には握手を免除するという暫定的な決定も破棄すべきだと付け加えた。
イスラム教徒の生徒に握手を強制することは「宗教の自由」に対する侵害であると認識する一方で、握手の件についてはイスラム教義では明記されておらず、状況によって様々な解釈の可能性がある。
一方で、今回は生徒の個人的立場よりも公共の利益を優先した結果として、この判断は妥当だとの見解に当局は立つ。ここでいう公共の利益とは、男女平等、外国人のスイス社会への統合、統制のとれた学校制度だ。
さらに握手は生徒の将来にとって重要なコミュニケーションの方法になると当局は言う。
同事件が報道された当初、スイスのイスラム組織連合(Federation of Islamic Organisations)は、男女間の握手については「神学上、許容される」と話した。さらに、イスラムの伝統において礼儀は重要とされているため、教師と生徒間の握手は「問題でない」という。
ではなぜ兄弟は女性教師との握手を拒んだのか?ある新聞のインタビューによると、握手に関する宗規をあるインターネットの説教で知ったと兄弟の弟は話している。
同州当局の判断では、握手を拒む生徒には忠告の後、罰金、さらには「妥当な」懲戒処分が科させることもあるという。
しばしば過激な見解に立つスイスのイスラム中央委員会(Central Islamic Council of Switzerland)は、こうした対策はムスリムのスイス社会への統合を促進するどころか、むしろ彼らの疎外感を強めるだけだと当局の判断を批判する。同委員会は、握手を拒否する生徒に対する制裁をあらゆる法的手段を駆使して阻止し、罰金は無視すると話している。
教育者の立場から
今回の問題に関して学区は当初、女性教師と握手しなくてもよいという例外を同兄弟に与える姿勢を示していた。しかしその後、当事者との話し合いを経て男女平等の観点から、その場合は女性だけでなく男性教師とも握手をしないという妥協案に落ち着いたと話している。
他方でスイス教師連盟代表のベアート・ツェンプ氏は、「すべての生徒に対して同じ規則が適用されるべきだ」との立場から、こうした学校の決定に異議を唱える。さらに同氏は、この妥協案を通じて間違った考え方が生徒たちに伝えられてしまったと指摘。彼らには将来、男女限らずたくさんの仲間や同僚と握手しなければならない場面が多く待ち受けているから。
同事件により、兄弟の家族が申請していた国籍取得の審査が一時中断されていたことが後になって公表された。同州の公安局によると、移民当局は家族から個別に話を聞きたいと考えている。また、必要な情報が集まるまでは国籍取得の審査が中断されることは、さほど珍しいことではないと話している。
(英語からの翻訳&編集・説田英香)
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