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定年退職後は大学へ!

後期成人講座は学びと社交の場として考えられている Keystone

ほかのヨーロッパ諸国と同様に、スイスでも人口の高齢化によって後期成人教育の需要が増大している。

スイスでは、60歳以上の高齢者のために大学教育コースが開講されている。今学年度の学生数は、開校以来最多となった。

門戸は広く

 こうした教育を行う大学を「第3期大学 ( The University of The Third Age/ U3A) 」と呼ぶ。理由は「高齢者は人生の第3期を送る人々」と定義するからだ。

 これら第3期大学の多くは著名大学に付属し、スイスには9校存在する。各大学は、1年間に約30回の講義を行うプログラムを提供している。

 ベルン大学に付属する第3期大学のドイツ文学部は、過去10年間に受講希望者数が約2倍に増え、2010年~2011年度は950人が受講を申し込んだ。またバイオリンの製作、ホルモンと加齢などさまざまなテーマの講義には約250名が出席している。

 「スイス第3期大学連盟」のジャン・ピエール・ジャヴェ氏は、受講希望者が増加した理由として、60歳以上の人口が増加しただけではなく、受講料の安さ ( 年間60~85フラン/ 約5100~7300円 ) や講義科目の種類が増えたことも理由に挙げている。
 「一般的に第3期大学では、学生が確実に興味を持つようなテーマのプログラムを提供していることが理由だと思います。一方ほかの大学で教えているのは、歴史、文学、医学、音楽など、広範な科目です。第3期大学のプログラムはどの分野も非常に面白く、通常大学教授がセミナーを行っています」

 第3期大学のプログラムはそうした方針をもとに作られているため、受講者がすでに大学教育を受けた経験があるか否かは問われない。学生は知識を得るため、または既に持っている知識や技術を高めるために受講を申し込むとジャヴェ氏は説明した。

オープン・スピリット

 以前ベルンの労働組合の職員を務めていた62歳のネリー・タラブーズ氏は、ベルン大学付属の第3期大学のフランス文学部で3年目の受講を開始した。
 「自分の興味のある特定のテーマについて学ぶために、そしてフランス語との接点を維持するために受講しています。ベルンでは、フランス語があまり使われなくなってきました。私の母国語であるフランス語を話す人々と知り合う機会も少し減りつつあります」
 とタラブーズ氏は説明する。

 「興味のあるテーマがあったら、講義を聴いた後にもっと本を読んだり、旅行をしたりすることによって、さらに自分で調べることができます。退職者にとって、何かに興味を持つことはとても大切なことだと思います。そうすることによってオープンな心を保ち続けることができるのです」
 とタラブーズ氏は付け加えた。

受講によって孤独な人がほかの人々と出会い、交流する機会を持つことができるという意味で、後期成人講座は社会的に重要な役割を担っている。

一番人気の講座

 こうした講座の開設は世界的に見ても比較的新しい現象だ。第3期大学は、1973年にフランスの・トゥールーズでピエール・ヴェラによって創設され、その2年後に同様のプログラムがジュネーブでも開設された。

 現在スイスでは、フランス語圏、イタリア語圏、ドイツ語圏で合計9校が第3期成人講座を開設しているが、スイス第3期大学連盟は学生数がさらに増えることを期待している。

ジャヴェ氏は、目玉となる講座を設けることが学生数を増やすための方法になる
と認める。今学期は、スイス初の宇宙飛行士で本人自身も現在66歳になるクロード・ニコリエー氏がジュネーブとベルンでセミナーを行う。そしてさらに、2009年に「今年のスイス人」に選ばれたチューリヒの外科医レネ・プレートゥル氏も大物講師として講義を行う。

 「プログラムの魅力を強化し、新しい学生を引きつけるために、わたしたちは1人か2人の著名人を起用するよう努めています。これは必要なことです。しかし講講義の重要な部分は大学の教授が教えています」
 とジャヴェ氏は説明した。

 またさらにジャヴェ氏は
 「このシステムによってわれわれは『第3期』の世代の人々にもっと目的を、そして職業人としての活動を終えた後に何かを行う機会を贈りたいのです。年配者に活気を与え、それによって彼らは自分の人生を豊かにすることができるようになります、これが第3期大学の創設者ピエール・ヴェラが大学を創設したときの信条なのです。これは今日も変わっていません」

スイス国内には「第3期大学 ( The University of The Third Age/ U3A) 」が9校あり、約1万3000人が受講している。
2009~2010年の学年度では、文学、音楽、医学、歴史、建築、哲学、宗教、数学などの科目で合計532回の講義と200回のセミナーおよびワークショップが行われた。
また、視察、遠出、旅行など150回が開催され、約6500人が参加した。

「第3期大学 ( The University of The Third Age/ U3A) 」は、定年退職者、または人生の「第3期」にある人々の教育と活性化を目的とした国際的な組織。
第3期大学は、1972年にフランスのトゥールーズ ( Toulouse )で開催されたサマースクールから発展した。第3期大学の第1号は、トゥールーズの大学の社会科学部教授だったピエール・ヴェラによって1973年に設立された。
第3期大学の着想はフランスの他の都市、そしてフランス国外へと広がった。
1980年に「第3期大学国際連盟 ( International Association of Universities of the Third Age /AIUTA ) 」が創設された。
第3期大学は、1988年以来外国人受講者の受け入れも開始している。現在では約35のコースを提供している。
受講者のネットワーク作りを支援するために、2009年からオンライン講座が立ち上げられた。
代表的なコースは、芸術、古典、コンピューター、演劇、歴史、言語、科学など。

( 英語からの翻訳 笠原浩美 )

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