スイス・ベルン州の刑務所に収監されている64歳の男性受刑者が、重病などを理由に安楽死を希望し、スイスの自殺ほう助支援団体「エグジット」にサービスを受けたいと申請したことがわかった。
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エグジットは男性受刑者に対し、申請を真摯に検討するが、(服役中であるという)特殊な事情であることは考慮しなければならないと返答した。エグジットはこれ以上の詳細についてコメントできないとしている。
一方、ジュネーブにある「エグジットA.D.M.D外部リンク」のピエール・ベック副代表は7月末、フランス語圏のスイス公共放送ラジオ(RTS)に対し、ジュネーブのシャンドロ刑務所に収監されていた受刑者が約1年前、重病を理由に同様の申請をしたことがあると語った。ベック氏は「私たちはこの問題に対処できなかった」と述べた。
受刑者はエグジットに充てた申請文の中で、自分が生きていても仕方がない理由として3点を挙げた。それは治る見込みのない肺の病気にかかっていること、深刻な精神病を患っていること、ベルン州が裁判所の決定を無視して、同伴付きの外出を長い間認めてくれないことーだという。受刑者は、これは「心理的拷問」であり、自分の「将来の展望」は一切失われてしまったとしている。
>>104歳のオーストラリアの科学者がスイスで安楽死
受刑者が自殺ほう助を申請したことは、受刑者らの保護支援団体「Reform91外部リンク」のペーター・ツィマーマン代表が本人の同意を得てスイス通信(ATS)に公表した。
刑務所を管轄するベルン州の収監・ケア部局は、受刑者から正式な安楽死の要望は受けていないと述べた。ラズロ・ポルガー部局長は、スイスの法律には受刑者が自殺ほう助を希望する場合を想定した法規制がないと述べた。また、現行の「ゼロ・リスク政策」により収監期間が延びていることに触れ、現行法は今後こうした事態を考慮する必要があるとした。
一方、ポルガー氏は、自殺ほう助を「服役逃れ」にはさせないと強調した。
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スイスは自殺ほう助の先進国だ。年老いた人が自殺する権利は事実上規制されておらず、外国人が安楽死を求めてスイスを訪れる「自殺ツーリズム」がブームになっている。このリベラルな現状を見ると、スイスでは自殺ほう助が肯定的に受け止められているような錯覚に陥るが、実際は違う。自殺ほう助は政治や宗教、社会通念や倫理などといった価値観との戦いの連続だ。たとえ差し迫った状況にあるからといって、人の命をどうするか、そもそも問うていいものなのか。自殺ツーリズムを法で規制するか否かの議論はいまだ消えることはない。
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