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「国は生きる意志のない人間に生きることを強制することはできない」

自殺
自殺はプライベートな行為であり、あらゆる道徳的判断を控えるべきであると、倫理学者アルベルト・ボンドルフィ氏は考える akg-images

フランス人のジャクリーヌ・ジョンケルさんは死ぬ日を決めた。2020年1月に77歳で、健康なまま、スイスの団体「ライフサークル」のほう助を受けて死ぬ予定だ。ジョンケルさんの一件で、自殺ほう助の議論が再燃した。倫理学者のアルベルト・ボンドルフィ氏は、自殺ほう助団体の資金調達の監視を強化すべきだと考えている。

編集部注:この記事は2018年10月にフランス語版で配信されたものです。

「老化とは、必ず死ぬ不治の病」。ジョンケルさんは老化をこう形容し、その苦しみに屈することを拒否する。75歳のジョンケルさんは現在もパラグライダーに乗り、30歳年下のパートナーがいて、賑やかなパリの生活を楽しみ、難病にも退行性の病にも無縁だ。

しかしそんなジョンケルさんにも最期はいつか訪れる。そこで、ゆっくりと自分の星が翳っていくのを見るよりも、計画的に幕引きを図ることを選んだ。2020年1月にベルン州グシュタード近郊で、バーゼルを拠点とする団体「ライフサークル」のほう助を受けて死ぬことにしたのだ。ドキュメンタリー作家である息子の一人がその一部始終を撮影する予定だ。

自殺ほう助はジョンケルさんの住むフランスでは違法のため、死ぬためにスイスにやってくる。挑発的で時に下品な発言もするジョンケルさんは、自分を活動家とみなし、行動を大々的にメディアで発信している。

「太鼓腹で私より胸が大きいような男とセックスするなんてまっぴら」と、フランスのウェブサイト「Konbini」のインタビューで彼女は語る。「老化の意図的な中断」、病気であろうとなかろうと自分の決めた時に死ぬ権利のために自分は戦っているのだという。

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ジョンケルさんの件は衝撃的だ。自分の最期を選ぶ自由はどこまで認められるべきか?倫理学者アルベルト・ボンドルフィ氏は、この問題に関して世界で最もリベラルな法律を有するスイスは、自殺ほう助の規制のあり方を改善すべきだと考えている。

スイスインフォ :ジョンケルさんが自殺ほう助を利用する意志をメディアで公表して以来、大きな反響があり、多くの批判も寄せられています。なぜジョンケルさんの行動と世論は衝突するのでしょうか?

アルベルト・ボンドルフィ : スイスでは一般的に、自殺を手助けすることは、希望者が病気で死期が近い場合にのみ正当化されるものだという考えがある。スイスの主要な自殺ほう助組織「エグジット(EXIT)」がそれを条件としているためで、これは正当だと私は思う。

そのため世論はこの条件が法律で義務付けられているかのように思いがちだが、実はそうではない。現実には、法律(刑法第115条)に定められた条件は2つだけで、本人が同意を与える判断力を有することと、自殺ほう助団体がほう助によって経済的利益を得てはならないということだ。

アルベルト・ボンドルフィ
アルベルト・ボンドルフィ氏 © 2009 Roberto Ackermann – Photo Tornow 1003 Lausanne

スイスインフォ : 自殺ほう助団体はなぜ、法律で定められたものより厳しい条件を課しているのでしょうか?

ボンドルフィ : それは自殺ほう助の規制条項の歴史に関係している。刑法第115条は1930年代に制定された。

その目的は、恋愛関係の破綻や破産などを原因とする「名誉のための自殺」など、現在とは異なる形態の自殺を規制することだった。

20年間、この法律の文言を修正する必要性について議論された。連邦政府は厳しさの度合いが異なる案を複数提示したが、結局変更せず、刑法のこの2行をそのままにしておくという結論に達した。しかし、今日の世論は国がより明確な規則を定めることを求めているようだ。

「この破壊的行為に及ぶ人間に対しては一種の共感を抱くべきであり、判断を下すべきではない」

スイスインフォ :ジョンケルさんのように比較的健康な人の自殺をほう助することは完全に合法ですが、倫理的な面ではどのように考えるべきでしょうか?

ボンドルフィ : 自由を称賛する倫理学者と、より禁止論的な倫理学者の間で議論になっている。個人的には、すべての自殺行為は善悪を超えた決心であって、私たちが評価することはできないと考える。判断は自ら命を絶つ当人が行うべきだ。誰かがそれを実行した場合には、沈黙が道徳的に許容できる反応だと思う。あらゆる人間の死と同じくその人の死を私たちは悼むが、道徳的な判断は下さない。この破壊的行為に及ぶ人間に対しては一種の共感を抱くべきであり、判断を下すべきではない。

第三者の自殺をほう助する者を罰しないことによって、国は自殺行為に対する決定的判断を下すことを放棄する。国は保護の義務を負うが、生きる意志のない人間に生きることを強制する義務までは含まれない。

スイスインフォ : 老化を認めない社会を作り出してしまう危険はありませんか?

その危険はある。ジョンケルさんの件が呼び起こした数々のコメントにそれが見て取れる。しかし、この傾向に刑事的措置で立ち向かうことはできない。

自殺ほう助に関する公の議論が必要だ。この領域で活動している団体の規制を強化しなければならない。何よりも法律的な理由からだ。

国が、特にこれらの団体の財務的背景に関して、監視体制を整備しなければならない。これらの団体のお金の使途は?本当に利他的な行為なのか、それとも直接または間接的な利益を得ているのか?非常にスイス的な「アソシアシオン(団体、協会)」の形態をとる「エグジット」は、逸脱の危険性を著しく抑えている。一方、近年登場した数々の新団体は比較的小規模で、コミュニケーション戦略も「エグジット」ほど透明ではない。

「社会は、私たちが自分を恥ずかしく思うに至らないように手段を講じようとする」

アルベルト・ボンドルフィ

スイスインフォ : 「年老いて、臭く、つまらなく、口元はカエルのようで、欲望よりも憐れみを誘うような存在にはなりたくない」。フランス語圏の日刊紙 ル・タンのコラムに掲載されたジョンケルさんのこの宣言は、挑発好きな姿勢を表しています。それとともに、私たちの社会が老化に対して持っているイメージの表れでもあるのでしょうか?

ボンドルフィ : 私はむしろ、誇張という印象を受ける。私たちは皆、自分の経験に影響される。私自身も72歳であり、ひしひしと老化を感じる。以前ほどうまくいろいろなことができなくなったが、自分の身体も、10年前と同じことができなくなった事実も恥じてはいない。私たち一人一人はできるだけ良く生きようとし、社会は私たちが自分を恥ずかしく思うに至らないように手段を講じようとする。しかし、もしこの女性がこのように感じているのならば、それを止める方法はない。

スイスインフォ : このような行動が報道されることにより、追随者が出る恐れは?

ボンドルフィ : 特に精神的に弱い人々にとっては、影響はありうる。思春期の若者は特に影響を受けやすいことがわかっている。国はこれを認識し、この集団を守らなければならない。

しかし、ジョンケルさんの件を真似ることは難しい。彼女自身、自殺に1万フランかかると発言している。裕福で、特殊なライフスタイルの人物という印象だ。

そうであれば、一般的なスイス人が自分と同一視することは難しい。今のところこのケースは貴族的な現象にとどまり、人口の大半に影響は与えていない。

非常に辛い状況で、一人ではとても乗り越えられないと感じていますか?助けを求めましょう。

自殺願望に襲われた場合、スイスでは無料電話相談を受け付けているホットラインがあります。

「Tel 143 – 支援の手」 電話番号143、www.143.ch外部リンク

青少年保護団体「Pro Juventute外部リンク(青少年のために)」 電話番号147、www.147.ch  

(仏語からの翻訳・西田英恵)

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