クリスマス、子の心 親知らず?
イルミネーションで美しく飾られたジュネーブの街はクリスマスムードが盛り上がっている。金融危機の影響はどこへやら、街中はプレゼントを探す人々でいっぱいだ。
子どもたちもクリスマスプレゼントを夢見てわくわくしているが、果たして本当に欲しいおもちゃを手に入れることができるだろうか?
明るい見通し?
12月中旬、ジュネーブではクリスマス商戦がたけなわだ。しかし昨年に引き続き、経済危機の影響を危惧する小売業者は多い。ジュネーブ市内の繁華街の目抜き通りで、伝統的なスイスのおもちゃを販売する「ル・カルーセル ( Le Carrousel ) 」 の経営者ダニエル・スタイナー氏は、今季の売り上げは前年比で約10%減になると予測する。大手おもちゃ専門店「キング・ジュエ ( King Joets ) 」のマーケティング担当ロイック・ドゥラヴァーニュ氏は、顧客の予算は昨年と変わらないが、お買い得品を探す傾向が見られると説明する。
一方、1881年創業で、スイス全土に12の店舗を展開するおもちゃ販売のチェーン店「フランツ・カール・ヴェーバー ( Franz Carl Weber ) 」の見通しは明るい。
「現在までのところ、2009年のクリスマスの販売は大変堅調です。昨年わが社の売り上げは過去最高を達成しました。今年はそれ以上の可能性が見込まれています」
と広報担当者のスザンヌ・ニーバーゲルト氏は語った。
親の心、子知らず?
昨年12月26日付の「トリビューン・ド・ジュネーブ紙 ( Tribune de Genève ) 」は、昨年のクリスマスプレゼントで最も人気のあったアイテムは、ビデオゲーム、デジタルカメラ、テレビ、コンピューターなどの電子機器商品だったことを報じた。
今年もコンピューターゲームやテレビゲームに人気が集まりそうだ。ドゥラヴァーニュ氏は、11歳から15歳の年齢層の子どもに最も人気のある商品は、コンピューターゲームだと分析する。
「コンピューターゲームやビデオゲームは依然としてヒット商品です。ニンテンドーのDSiなどコンピューターゲームの人気は熱狂的です」
12歳の息子と18歳の娘を持つエリザベス・トラールさんは、
「コンピューターゲームは子どもたちの世界にすっかり浸透してしまいました。現実的にはコンピューターゲームを禁止することはもはや不可能でしょう。しかし、ゲーム中毒に陥らないよう管理しなければなりません」
またトラールさんは、
「私は楽しめるだけでなく、子供の成長に役立つおもちゃをいつも選んできました。おもちゃには子供の創造性、想像力、知性、社会性などの発達を促すという役割があるべきだと思います」
と言う。そして「社会性ゲーム ( les jeux de société ) 」というカテゴリーのゲームを子供たちに贈ってきた。これは単に複数の人間が一緒に遊べる種類のゲームを指すが、ゲームを通して他人やルールを尊重するという社会生活の基本を学んだり、子供のさまざまな能力を高めたりすることができる。
日本でも販売されている社会性ゲームには、トランプ、チェス、バックギャモンなどの古典的なゲーム、「モノポリー」に代表されるボードゲーム、そして細い積み木を柱状に積み上げ、ゲームの参加者が1本ずつ抜いていく「ジェンガ」がある。また日本では「数独」や「カックロ」は1人で行うものだが、スイスには複数の参加者が完成させる時間を競う社会性ゲームのバージョンがある。カードゲーム、犯人当てゲーム、単語当てゲームなど市場に販売されている社会性ゲームの商品は100点近くある。
低年齢層の子どもたちへコンピューターゲームが浸透することを危惧するル・カルーセルのスタイナー氏は、
「ただボタンを押すだけのコンピューターゲームは子どもたちにとって良くありません」
と、木製の家畜小屋と牛や馬、そして木製のレールと電車のセットなどのスイスの伝統的なおもちゃを推薦する。
大手デパートチェーン「グローブス ( Globus ) 」のジュネーブ店の総支配人ジャック・ルヴィオ氏は、
「確かにコンピューターゲームは将来ますます人気のある商品になるでしょう。しかし、伝統的なおもちゃには教育的な効果があります。形、色、数字など直接手で触って確かめることによって、子どもの発育を促すことができるのです」
と、おもちゃの「教育的使命」を説明した。
子の心、親知らず?
ニーバーゲルト氏は、おもちゃの売り上げは、年齢層や個人の嗜好によって異なるが、品質が良く長持ちする伝統的なおもちゃの人気は高いと指摘する。またルヴィオ氏も、クリスマスには伝統的なおもちゃが売れるという。
「子供たちはまだ伝統的なおもちゃが好きです。女の子は人形、男の子は電車と今も変わりません。これはクリスマスの不思議な力です」
これは本当だろうか? クリスマスプレゼントを選ぶのは大人だ。子どもたちは本当に「教育的使命」を持ったおもちゃを望んでいるのだろうか?
3歳半のアレクサンドル君は手に入れたいものがたくさんある。
「ロボットと電車セットが欲しい。それとリモコンで動く車のGT3 RSとミニカー。それから馬のぬいぐるみも。おもちゃがあるとたくさん遊べるよ。馬が好きなんだ。ロボットは『トランスフォーマー』って映画を見たから。そしてGT3 RSはパパが乗っている車だから欲しいんだ」
9歳の女の子エレオノールちゃんは、本格的な電子の世界が好きだ。
「コンピューターとかテクノロジー関係の物が欲しいな。機械を触るのが好きだから、テクノロジーに関係のある物が欲しいの。大人になったらコンピューターの専門家になりたい」
13歳の女の子コンスタンスちゃんからは堅実な答えが返ってきた。
「そんなにたくさん欲しいものはありません。お金と洋服と図工のものが欲しいです。ファッションが大好きだし、暇な時に手を動かして何かを作ることも好きです。そしてお金をもらったら貯金できます」
スイスの子どもたちは、現代的なおもちゃも伝統的なおもちゃも、両方とも大好きなようだ。そしてもちろん、スイスの銀行に貯金するためのお小遣いも。
笠原浩美 ( かさはらひろみ ) 、swissinfo.ch
ジュネーブの「キング・ジュエ社 ( King Joets ) 」のロイック・ドゥラヴァーニュ氏は、同社で販売しているおもちゃの人気の傾向を以下のように分析する。
5歳以下の男子:社会性ゲーム、ブロック、伝統的な木製おもちゃ。
6~10歳の男子:テレビ番組のキャラクター商品、ミニチュアのスケートボードやバイクのおもちゃ、実験型のおもちゃ。
6~10歳の女子:人形、動物のフィギュア、実験型のおもちゃ。
11~15歳の男子:携帯型ゲーム機、テレビゲーム機。
11~15歳の女子:携帯型ゲーム機、テレビゲーム機。
同社で最も人気のあるスイス製のおもちゃは、磁石とプラスチックでできたパーツを組み合わせて幾何学的な形の物体を作り上げることのできる「レ・ジオマグ ( Les GEOMAG ) 」( 3歳以上向け ) 。
家族向けのおもちゃでは、古典的なボードゲーム ( モノポリーなど ) 、環境をテーマにしたボードゲーム、「Wii」などのテレビゲームがある。
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